イーリス聖王国の魔道士がオラリオに来るのは違っているだろうか? 作:カルビン8
シエン達が洞窟に飛び込んだ後その先は下り坂となっておりゆっくり降ると出口と思われる場所から光が見えた。ずっと暗い場所を歩いて来たからか妙に眩しく見えた。
「ここは・・・」
洞窟から出ると見渡す限り森、森、森。どうやら18階層に到着したらしい。それに何やら知人の魔力も感じるがまずは全員無事だったことを喜ぼう。
「シエン、僕たち・・・」
「そうだな、全員無事に18階層に辿り着けたらしい、よく頑張ったなベル」
「よ、よかった〜」
ベルはそう言って座り込んでしまう。
「もう何度意識を失いそうになったことか・・・」
「よく頑張ったな、それにさっきは良くやってくれた。助かったぞ」
リリもヴェルフも同様に座る、戦闘をしなくても周り中が敵だらけでしかも攻撃を喰らったらほぼ即死、オレ達以上に精神が疲弊しているだろう。その中でゴライアスとの戦闘でも頑張ってくれた、この経験でランクアップしても良いんじゃないだろうか。
「初めて中層に潜って18階層に辿り着くなんてな。とんでもないな、お前ら2人共」
「何言ってんだか」
「そうだよ、ヴェルフ。僕たち、みんながいたからこそ辿り着けたんだよ」
ヴェルフだってヘルハウンドの火炎攻撃を未然に防いでくれたりと頑張っていたし自前の武器で数多くのモンスターに立ち向かってくれた。ベルの言う通り全員の力を合わせたからこその結果だ。さて、そろそろ近いな。
「さて、出迎えも来たことだし、ついて行くか」
「出迎え?」
「ああ、なあアイズ」
オレは森に向かって話しかけた。するとそこから見覚えのある金髪の少女が現れた。
「・・・驚いた」
そう言っても全く表情は変わっておらず相変わらずの無表情だった。
「アイズさん!?どうしてここに!?」
「17階層が揺れているのとゴライアスの叫び声を聞いて冒険者が襲われているかもしれないから・・・助けにきたんだけど」
「もう、ここまで来たんだね。驚いた」
「え、いや、みんなのおかげですよ!」
「なあ、シエン。お前らって【剣姫】と知り合いだったのか?」
「ああ、まあね。よく会うよなぁ、オレら。そうだ!ロキファミリアが帰る途中なら後ろからついて行けば帰れるんじゃないか!」
「そうだな!」
「リリもそれなら確実だと思います」
「アイズ、今は遠征の帰りなのか?だったら一緒についていって良いか?」
オレはアイズに質問するとアイズは答えてくれた。
今は無事に遠征が終了して帰り途中だったのだが下層のモンスターの毒に仲間がやられてしまい戦闘不能状態になっていて動かすのも危険な状態らしい。
なので今はこの階層に留まって地上で専用の解毒剤に買いに行ってその人物が戻ってくるのを待っているのだと言う。
「その人が戻ってくるのは何時ごろになりそうなんだ?」
「分からない・・・あと2、3日かかるかも」
流石に2、3日飯抜きはキツイ・・・アイズ達だって遠征帰りで食料がろくに残っていない筈、食料を譲ってくださいなんて言いづらい。食料問題のことを考えていたらオレの腹が鳴った。丸一日食べていなかったのだ、オレは悪くない。
「・・・・・」
「レベル2でも腹がなるんだな」
「とはいえ、困りましたね。2、3日間、水のみは厳しいです」
「それなら私達の野営地に来る?」
「いいんですか?アイズさん達も遠征帰りであまり食料に余裕は無いんじゃあ・・・」
「うん、大丈夫。野営地に案内するからついて来て」
もう言ってアイズは野営地のある場所に案内してくれるらしくオレ達は付いて行ったが・・・
「おお、これはこれは・・・!なかなか良いな。ベル、コレも頼むよ!」
「シエン、そろそろ先に行こうよ・・・」
なんとこの森、水晶が生えていた。掌に収まりそうな物、オレの体よりも大きい物だったりと様々だ。これらでいったいどんな杖ができるのか気になって仕方がない。歩いて見つけるたびに足を止めじっくりと見てベルに切り取ってもらいオレが持っていた。
「グオオオオッッ!!」
シエンが水晶集めに夢中になっていると突然熊のような獣がシエンに襲いかかって来た。このモンスターは今までの階層では見たことが無い。つまり18階層よりも下からやって来た強力なモンスターだ。
「オレの邪魔をするな」
モンスターが襲いかかって来た時の雄叫びでどこにいるのか判断して振り返り【呪い】を発動させる。黒い影の手は地面を這ってモンスターの足を絡めとり転倒させ手も地面に縫い付けるように拘束する。
モンスターはシエンを睨め付けようと顔を合わせるとシエンの手に持っている【トロン】の魔道書が黄色に輝いていて左腕に着けた【ヘスティア・バンブレーズ】の文字の彫ってある部分が紫紺に輝き、シエンの足元に魔法円、シエンの目の前には魔法陣が現れてそこから雷の槍が発射された。
拘束されていたモンスターは雷の槍が頭から股下まで貫通して真っ二つにされてしまい魔石を残さずに黒い灰だけを残して消滅した。
「・・・夢中になるのも程々にって事か。今はコレだけで十分だろうし行くか」
その後は大人しくアイズ達のいる野営地に無事辿り着くことができた。そこには他種族の亜人達が沢山いた。
「あー!!アルゴノゥトくんだ!それと英ゆッモガモガ!?」
「あーもう、このバカはやっぱり言いそうになったわね」
肌が褐色のよく顔の似たアマゾネスの2人がオレ達のことに気が付いて近寄って来た。1人が英雄と言いかけたところをもう1人のアマゾネスが目に見えないほどの速さで口を塞いだ事によって最後まで言うことはなかった。
「アイズさん、この人達は・・・ん?あー!この間のヒューマン!!」
「ひっ!?」
山吹色のした長い髪と細長い横長の耳を持ったエルフがベルを見て大声を出して睨めつけている。どうやら知り合いのようらしいがその割にはベルは怯えているが。
「なんだ騒がしい・・・おっ、ヴェル吉ではないか!なんだ?手前達がいなくて寂しくなってここまで来たか?愛々しい奴め」
「おい、バカやめろ椿!!」
褐色の肌に黒の長髪。身長は170センチくらいの豊満な胸を持つ女性だった。
そんな彼女にヴェルフは頭を撫でられている。それをオレたちに見られるのが嫌だったのかその手から逃れようと離れた。
「やれやれ、弄りがいのある奴よ。・・・ん?お主ら、その武器と防具は?」
そう言って椿と呼ばれた女性はベルのナイフとオレの左腕につけていた防具をマジマジと見ていた。
「神様、神ヘスティアから頂きました」
「コレを装備してるとなんだか魔法のキレが良くなる変わった防具です」
「そうかそうか、大事にするといい。確か、シエンと言ったな。お主の作った魔道具にはこの遠征で随分助けられた。感謝するぞ」
「お助け出来たのなら光栄です」
「あのような杖を作り出したのならロキファミリアの連中も放ってはおけまい。自分のところの所属に入れようと躍起になる筈だ、大変なことになったな」
「おい、まて離せ!!」
最後の言葉は少し小ささの声で言って椿さんは去って行った。ヴェルフを連れて・・・
「こっちだよ」
オレ達はアイズに連れられ野営地にあったテントの中で一際大きい物の中に入った。中にはロキファミリアの団長さん、リヴェリアさん、年取ったドワーフがいた。
「やあ、また会ったね。ベル・クラネルにシエン、そちらの小人族は・・・」
「リリルカ・アーデです」
「初めまして、リリルカ・アーデ。それでいったいなんのようでここに連れて来たんだい、アイズ?」
「シエンがお腹を空かせていたから食料を分けてあげようかなと思って」
「そうか、まあ食料ならなんとかなる。それに寝床も用意しよう。君達にはいろいろ助けられたからね」
ベルはシエンがさっき椿に礼を言われていたのでシエンに助けられたという事は分かったが自分が助けた覚えはないので首を傾げていた。
「それにしてもなぜこの階層まで来たんだい?」
フィンはベル達に事情を聞いた。中層に初めて挑戦して怪物進呈をくらって上層に戻れなくなり、敢えてこの階層まで潜って他のファミリアのパーティーに合流して地上に戻ることを。また予想以上に早くゴライアスが復活して無事に逃げ切ってここに辿り着いたことを。
「ガッハッハッハ!!中層に初めて挑戦してその日に18階層に来たのか!?やるではないかこの若造達は!!」
「ガレス、少しはその笑いを抑えてくれ。シエン、お前の作った魔道具にはこの遠征でかなり、いやこれがなかったら全員無事で戻っては来られなかっただろう。礼を言う」
事情を知ってドワーフのガレスが大笑いし、杖を作ってくれたシエンにリヴェリアが軽く頭を下げた。
「いえ、お役に立てたのなら良かったですよ」
「ふふ、リヴェリアも彼のことが随分と気に入ったようだね」
「からかうな、フィン」
「おっと、失礼。話は変わるけど短い間、君達を客人としてもてなそう。周囲と揉め事を起こさなければだけど」
ロキファミリアの首脳陣との話はその後少し話して終わった。無事に食料を分けてもらえて更にテントまで貸してもらえることになったシエン達がテントに向かっている所、先ほどのテントでは首脳陣達で話し合いをしていた。
「まさかいきなり18階層までくるとはね」
「ああ、信じられない事だ。あのミノタウロスを倒した出来事もまだ10日ほどしか経っていないというのに。無謀過ぎる」
「リヴェリア、生きておるならそれでいいではないか。あの若造達とはロキに教えてもらった相撲とやらであやつらの力量を知りたいんだがのう」
「それはダメかな、僕達が彼らに近づくと他の団員がみんな、彼らに殺到することになるだろうからね。それでは彼らの迷惑になってしまう」
「立場、か。厄介なものじゃのう・・・」
「先程シエンは毒にやられた病人の治療の手伝いをしてくれると言ってくれた。専用の解毒剤がないと出来ない毒相手にどうするのか、楽しみだな」
「やっぱり気に入ってるじゃないか」
「黙れフィン」
正直前二つのサブタイトルは失敗だったと思います