イーリス聖王国の魔道士がオラリオに来るのは違っているだろうか?   作:カルビン8

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風花雪月のアップデートまであと少し・・・


ロキファミリアとの交流その3

18階層 野営地

 

ダンジョンの中でテントを張り、その中で寝るという変わった体験をした。しかしダンジョンの中で熟睡する事は出来ずオレは目を覚ましてテントを出た。天井を見上げるとびっしりと貼り付いているクリスタルの光がほんの少し明るくなってきているような感じがしてダンジョンの中の朝が始まりそうな気がした。

 

「あれ?珍しいね、シエンが僕より先に起きているなんて」

 

いつもの習慣として【魔力】のトレーニングの瞑想をしにテントから離れ場所を移そうとするとテントからベルが出てきた。確かにオレの方が先に起きているのは珍しいと思う。そうだ、今回のダンジョンの探索で新たに出た課題について話しておこう。

 

「まあ、確かに珍しいな。それよりもベル。ダンジョンの中だけどちょっと軽めのトレーニングをしようか」

 

「それは良いけど、いつもの瞑想とか?」

 

「それもするけど今回のダンジョン探索でオレが気になった事はゴライアス戦のことだ。ベル、お前は障壁がどこにあったか分からなかっただろ?」

 

「うん、全く見えなかった。ゴライアスがいきなり転倒してたくらいだし今思うと見えなくて突然現れるなんて恐ろしいね」

 

「そこでだ、ベル。お前にはオレの障壁がどこにあるのかを感知出来るようになってもらう」

 

「ええ!?けど僕はシエンみたいなスキルはないから出来ないんじゃ・・・」

 

「そんなの関係ないぞ。ベルは【魔力】と【魔法】を持っているから特訓すれば感覚みたいなものが掴めるはずだ。それにオレの障壁がどこにあるのか分かるようになったら空中に足場を作ってそこで戦う事だって出来る。ベルが出来るようになれば戦闘においてかなり有利になる」

 

「く、空中で戦う!?そんな事が・・・」

 

ベルにはなんとか頑張ってオレの【魔法】の探知を出来る様に頑張ってもらいたい。対人戦では相手側に【魔力】に優れた者がいたら逆にオレの障壁は利用されてしまうだろう。それはまずい。

 

「別に今すぐ出来るようになれというわけじゃない。訓練をするためにロキファミリアの団員に野営地を少し離れることを伝えよう」

 

「ここでやれば良いんじゃないのかな?」

 

安全性から見るとここで特訓した方がいいかもしれないが他の派閥の冒険者に見られるのはちょっと面白くない。

 

「周りの人から見ると何にもないところを恐る恐る移動している変な人に見られることになるんだが?」

 

「いったい何を僕にやらせるつもりなんだ・・・」

 

「地上でならいつでも鍛錬は出来る。こういう危険な場所での特訓はそう出来ないからな。しっかりやるぞ」

 

【魔法】をうまく使う為の修行である瞑想だってダンジョンの中でわりかし安全な場所で修行できるというのも貴重な体験だ。【魔法】はダンジョンという危険な戦場で使う事が多いのにそのダンジョンの中で【魔法】を使う為の練習をせず、安全な(安全ではない)地上で瞑想の修行をするのは非効率だ、戦場でやるからこそ得られる物がある。

ダンジョンで【魔法】を丁寧に発動なんてベルは今までやった事はない、魔法の制御が良くなるかもしれないし、きっと良い経験になるはずだ。

 

ロキファミリアの団員に少し離れることを伝えてリリとヴェルフがいるテントには書き置きを残し場所を変えた。木々が少なく草原が広がりモンスターが身を隠しづらく、それでいてロキファミリアの野営地も見える良い場所だ。そのまま腰を下ろすと草の水っけで尻が濡れてしまうので【ストーン】で二つ石の板を作り出し置く。

 

オレとベルは気を落ち着かせ石板に腰を下ろし呼吸して【魔力】【精神力】の制御を行う。瞑想は交代交代で行う事にした、2人とも目を瞑っているのは流石に危険過ぎる。

そして瞑想を終えてもう一つの特訓をする事にした。

 

「よし、それじゃあ。目の前に障壁を張るからそこから何か感じ取ってくれ【ミラーバリア】」

 

ベルは見えない障壁にゆっくりと手を近づけて触ってたり、目を閉じて何かを感じ取ろうとしている。感覚でいいから何か掴んでくれるといいんだが・・・

 

 

野営地 朝 レフィーヤ

 

「ねえねえレフィーヤ!昨日シエンの話、面白かったね!」

 

「は、はい。聞いたことのないような話ばかりで新鮮でした」

 

「よし、早速今日も聞きに行こっと!」

 

今日も朝からティオナさんは元気です。あのアイズさんに近寄っているヒューマンとリヴェリア様が気にしているヒューマンが18階層にやって来てからいつも以上にテンションが上がっているように見えます。

 

「アンタねぇ、団長から言われた事を忘れてる?あのシエンって冒険者の正体を掴むためでもあるのよ?昨日言っていた事は嘘を言ってないとは思うけど余りにも私達との価値観が違いすぎるし、あの神ヘルメスとの知り合いだなんて怪しさ満点じゃない!」

 

少し前にもヘルメスファミリアの人達と共闘した事がありましたがその時にヘルメスファミリアの団長のアスフィさんが使っていた杖の効果は凄まじい物でした。

今回の遠征でもその杖を作ったシエンというヒューマンに製作を依頼して私達にも使わせてもらうと手早く杖の回復魔法を発動でき戦闘中でも大助かりでした。最下層の休憩所でもアイズさんがその杖を使って治療をしている姿はとても綺麗だったなぁ・・・

 

「・・・リヴェリアもシエンの言ってた国について知らないって言ってた」

 

「リヴェリア様でも知らないなんて・・・いったいどんなところなんでしょうか、イーリスって国は」

 

「だったらシエンに聞きに行けばいーじゃん!いこいこ!」

 

彼らのテントに行っても目当ての2人は見つからず、書き置きが残されていた。事情を知っている団員の方に聞くとどうやら今は野営地を離れているらしいです。

 

「アルゴノゥト君はどこかな〜」

 

「あ、いた」

 

「え?どこどこ?本当だ!おーい!アルゴノゥトくーん!!」

 

少し歩いて木々の少ない草原に出るとすぐに彼らは見つかりました。なにやら黒い粒子のような物が見えましたがおそらくあれは【魔導】によって現れる魔法円の粒子だと思われます。私も【魔導】の発展アビリティを持ってますからなんとなく分かりますがティオナさんが声を掛ける前に消えてしまいました。いったいどんな【魔法】を使っていたのでしょう?

 

「おっはよー!アルゴノゥト君、シエン!」

 

「お、おはようございます」

 

「おはよう、ティオナは元気だなぁ」

 

「えへへ〜、あたしはいつでも元気だよ!ねぇシエン、またなにか面白い話聞かせてよ!」

 

「昨日散々喋ったじゃないか・・・」

 

「おはよう、2人とも起きるの早いね」

 

「アイズさん、おはようございます」

 

「おはよう、ダンジョンの中で寝るってのは初めてで、あまりぐっすり眠れなかったよ」

 

「うん、それはよくわかる」

 

「身体も汚れていて気持ち悪いのもあったかもしれんけど。そうだ、この辺りに風呂を作ってもいいか?」

 

「えっ!?シエン、お風呂を作る事が出来るの!?」

 

「まあな」

 

なんとシエンさんはお風呂を作る事ができるようです。一応森の奥には泉があってそこで水浴びをする事ができますがお風呂に入れるのだというのならお風呂のほうがいいです!

 

「貴方、そんな事ができるのね・・・。風呂、混浴・・・!!これはチャンスね!!風呂を作る許可は私が必ず取ってくるから絶対に作っておきなさいよ!!団長〜♡一緒に入りましょう〜♡」

 

「速い、もう見えなくなった・・・これが第一級冒険者か。流石に混浴の許可は出ないだろうけど・・・ティオネは団長さんの事が好きなのか?」

 

「うん」

 

「そうですね」

 

「そうなんだよ〜。いっつもフィン、フィンって言ってるよ」

 

団長の事でティオネさんが暴走するのはいつもの事です。こ、混浴の許可はおそらくは出ないでしょう。

 

 

「なら、ササッと作っておくか」

 

オレは早速お風呂作りを始めた。アイズ達が来なくても風呂を作る気満々だったので3つの魔道書を持ってきている。

まず足元の草が鬱陶しいので先ほどの石板をもっと面積の広いものを地面の上に現れた魔法陣から生み出して置く。排水を外に出す孔もちゃんとある。

石板の上にバスタブ、脱衣所を二つ作る。バスタブは小人族のフィンさんとリリの為に浅い部分も作っておこう。

全員入り終わったらバスタブは力持ちの冒険者にぶん投げて捨ててもらう事にしよう。明日もここを使うかも知れないからな。

 

石板の周りを囲むように塀を作る。男女で別の入り口を作りその付近の塀には共通文字で男、女という文字を浮き出させておく。これで間違えて脱衣所、お風呂に入ってくる事はないはずだ。

勿論、男風呂と女風呂の間にも塀を作っておくがオレがお湯を作って運ぶ為のパイプを通すために孔もある。塀の外でお湯を作り、男女の風呂に運ぶものだ。

孔の大きさはパイプとピッタリなので覗きを疑われる心配はない。

後はバスタブにお湯を入れるだけだ。

 

「よし出来た!」

 

「本当に出来ちゃった・・・」

 

「すごい・・・」

 

「こんな魔法の使い方があるなんて」

 

「うわぁ、気持ちよさそう!よし、早速入ってくる!朝風呂だー!!」

 

そう言ってティオナは女湯に突撃していった。オレも男湯にさっさと入ろう。

 

 




上手く伝わるといいなぁ・・・
排水問題が地味に厄介だった。
髪の毛の長い冒険者が多いから風呂から上がった時に髪の毛を乾かすのすごい大変そう・・・

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