イーリス聖王国の魔道士がオラリオに来るのは違っているだろうか?   作:カルビン8

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久々にロキ編を見直す機会があってちょっと見ているとこのルートと矛盾してる部分が出てきて辛い。



シエンの戦闘記録

衝撃の事実が明らかになって叫び声を上げてしまったベル達に周りにいた人達の視線が一気にこちらに向いた。

 

「ベル、どうしたんだ?」

 

「ヴェルフ、いやちょっと、かなり混乱してて上手く言えないけど気にしないで」

 

ベルは混乱しながらもヴェルフに事情を話さなかった。この人、人間じゃないんです。なんて言えないよなぁ・・・

オレとしてはもうこうなってしまった以上どうしようもないし受け入れるしかない。イーリスでもまずいがここの世界でこの竜化の力を持っているのはまずすぎる。

この世界ではオレしかこんな事は出来ないだろう、神々が寄ってたかって来るはず。前にランクアップした時だって散々追い回されたし、この場合なら一生付け回される可能性すらある。ベルやヘスティアにも迷惑をかけるかもしれないし脱退するべきか、だがベルの道を手助けすると約束したしいったいどうしたらいいんだ。

仮に脱退したとして何処に行けばいいんだ・・・

 

「シエン君、君が何者であってもボクは離しはしないぜ?そんな事をしたら神の名が廃るしボクらは家族なんだから!」

 

なんて事を俯いて渋い顔で考えていたらヘスティアが話しかけて来た。

 

「ヘスティア、だが・・・」

 

「迷惑をかけない家族なんていないよ。みんなで力を合わせればなんとかなる!なんとかしてみせる!!それでシエン君はどうしたいんだい?」

 

「オレは神々につけまわされるなんてゴメンだし、ベルとヘスティアに迷惑もかけたくない。けど、2人と一緒にいるとトラブルだらけで大変だけど・・・毎日が楽しい。だから、まだ一緒にいたいが・・・ダメか?」

 

「ダメじゃないさ!まだ、じゃなくてずっとだぜ?」

 

「そうだよ、シエン。僕達同じファミリアの家族じゃないか。それに僕と約束した事忘れた?」

 

「・・・忘れるわけないだろ。ベルに出来ない事はオレがやって助ける」

 

「うん、だからこれからもよろしく」

 

「うん、ボク達の物語はこれからだ!!」

 

そう言ってベルは手を差し出してくる。オレも手を差し出して握手してヘスティアが両手でオレ達の握手した手を包み込み、顔を上げて打ち切りになりそうなセリフを言った。

 

「・・・すみません、お話の所申し訳ないのですが。謝罪を、自分はタケミカヅチファミリア所属のヤマト・命と言います。この度は本当に申し訳ありませんでした」

 

話は終わったあたりで魔力を持った黒髪の少女が地面に正座をして額を地面につけて土下座をした。誠心誠意という事なのだろうがそこまでしなくても・・・

 

「いくら謝れても簡単には許せません。貴方達が押し付けてこなければリリ達は18階層にまで逃げに来なくて良かったのですから」

 

「まあ、そりゃそうだ。シエンだってあのあと生き埋めになってそれを見捨てて俺達は逃げた。そんな事をしなくてもよかった筈だからな」

 

「あの、その、・・・本当にごめんなさい」

 

ちょっとおどおどして謝ってくるのが目隠れの少女、名はヒタチ・千草。

 

「あれはオレがやった事だ。そして俺はあれは間違っていたとは思っていない」

 

彼女達を守るためなのか彼女達よりも一歩前に出てきたのが身長が190Cほどありそうな巨漢。名はカシマ・桜花というらしい。

話を聞くに仲間が怪我をして戦線を維持できなくなり撤退していた時にオレ達になすりつけたそうだ。仲間の命と他人の命なら仲間の命の方が大切に決まっている。まあ、分からなくもない。

 

「それを被害に遭った俺等を前によく言えたもんだな、大男!」

 

ヴェルフが桜花を睨めつけながらに言う。このままでは一触即発と言ったところだろう。終わった事で喧嘩をしてもしょうがないしちょっと話に混ぜてもらう。

 

「まあまあ、良いんじゃないの?生き埋めにあったとはいえ怪我もしてないし全員無事なんだからさ。なぁ、ベル?」

 

「そうだね。僕も桜花さんの立場だとしたらそうしていたかもしれないし悪気はなかったんだから・・・」

 

「ですが、このままはいおしまいと言うわけには・・・」

 

「だとすればここは一つオレ等に借りが一つできたって事にして今度オレ等が困っている時に助けて貰えば良いだろ」

 

「そう言う事でしたら・・・」

 

「・・・割り切ってはやる。だが、納得はしないからな。大男」

 

「ああ・・・それでいい」

 

なんとか話はまとまっただろうか、それにしてもリーダーとは責任を負わないといけない面倒な立場だな。ウチはベルがリーダーで良かったよ。

 

「クラネルさん、シエンさん。無事でしたか」

 

タケミカヅチファミリアの冒険者達とは離れた後覆面を被ったエルフのリューが小声で話しかけて来た。

 

「リューさん!?なぜリューさんがここに!?」

 

「神ヘルメスに、冒険者依頼を申し込まれました。貴方達の捜索隊に加わってほしいと」

 

「やっぱり只者じゃないなリュー。ヘスティアを守ってここまで連れて来てくれて助かったよ、ありがとう」

 

「いえ、大したことではありませんので」

 

「さて、話は終わったかい?ここにずっと立っているわけにもいかない。どこか休める場所はないか、シエン」

 

「今オレ達は遠征帰りのロキファミリアの野営地でお世話になってる。そこに行ってヘルメス達も泊めてもらうように頼んだらどうだ?」

 

「そうだね、そうするとしよう」

 

そうして野営地に着きヘスティア達、神々がダンジョンに本当にやって来た事に驚きつつもヘルメスの交渉により殆ど全員が泊まれることになった。(リューは途中で姿をくらましてどこかへ行ってしまった)だがテントは足りず男は野宿という事になりそうだ。

 

「いやー、ダンジョンの中を旅するのもまた良いものだねぇ」

 

「ああ、どうしてこんな事に・・・ロキファミリアに借りができてしまいましたし、罰則が・・・もうやだぁ」

 

野営地に戻り、オレ達が離れた時に食事の準備が終わったのだろう。全員で食事会が始まった。オレの隣にヘルメスがその隣にアスフィが座って食事をしている。ヘルメスはクリスタルがたくさんくっついている天井を見上げながらカップに入った果実、ゴードベリーを飲んだ。これはゼリー状の果肉の味が酒に通ずるものがあるらしい。ノンアルコールの酒といったところだろうか。

アスフィはこの後に待ち受けているであろう罰則に嘆きつつゴードベリーを飲む。その姿は意地悪な上司に苦労をしてお酒を飲んでるOLだった。

 

「ハッハッハ!ヘスティアも言ってただろ?困っている時は助け合いって、・・・だからオレを助けてくれアスフィ?」

 

笑っていたヘルメスは表情をキリッとして甘い声でアスフィに囁いた。しかし今の余裕のないアスフィには逆効果だった。

 

「・・・シエン、そこの駄神を捕らえてください。少しぶっ飛ばしますので」

 

「ちょっ」

 

「オッケー。ヘルメス、アスフィを弄りすぎた君がいけないのだよ」

 

「あれっ!?足が動かな、シエン何をするんだ!あ、アスフィ・・・?そんなに怒った顔をしているとシワが増え・・・ギャアアアアアアアアアア!???」

 

それを聞いたアスフィは主神の頬を打ちヘルメスは絶叫をあげた。シエンは【呪い】を使って足を拘束したがそれが外れてしまうかもしれない威力だった。

 

「全く!私がいったいどれだけ貴方の起こしたトラブルを尻拭いして来たと思っているんですか!!少しは反省してください!!」

 

「わかったわかったって。あいててて・・・さてオレ達もロキファミリアに世話になっているわけだし一つ余興をしようじゃないか」

 

もう十分余興になっているとシエンは思ったが口には出さなかった。そしてヘルメスは懐から一冊の本を取り出した。表紙に書かれた文字はここの世界のものではなくイーリスで使われている文字だった。

 

「え、なにその本の文字!ヘルメス様、あたしそれ見た事ないよ!」

 

「そりゃそうさ、これはシエンのいたイーリス聖王国で使われている文字だからね」

 

シエンはヘルメスの持っている本の文字を読み取るとこう書かれていた。【イーリス十六神将記】と。

 

「タイトルは何ですか・・・?」

 

「それはねアイズちゃん。イーリス十六神将記、神に滅ぼすことができなかった邪竜を討ち滅ぼした16人の英雄について書かれた本さ」

 

「英雄!?あたし聞きたーい!アイズもそう思うでしょ!?」

 

「うん、ベルは?」

 

「僕も聞きたいです!」

 

「おいヘルメス!」

 

「しょうがないじゃないか、もう()()で大人しくしてるつもりはないんだろうシエン?それに何より・・・オレがッ!語りたい!!」

 

もう何を言ってもこの男は黙らないだろうとシエンは分かってしまい、ため息を吐いた。

 

「はぁ・・・」

 

「そのため息は話しても良いと判断するぜ?とはいえ16人も話してたら寝る時間になりそうだし1人だけにしよう」

 

「どんな人?」

 

「そうだね・・・」

 

そう言ってヘルメスは本のページをめくり手を止めた。そしてオレをチラリと見た後に喋り出した。

 

「よし、彼にしよう。イーリス十六神将の1人、【魔導軍将のシエン】」

 

「「「「ッ!?」」」」

 

ヘルメスの声を聞いた人達が一斉にこちらを見た。それを見てヘルメスはニヤついていた。だろうなぁ、その反応を楽しみにしてたんだろお前!

 

「本に名前が載るなんて・・・凄いよシエン!!」

 

「フフーン!そんな彼を眷属に迎えたボクの目は狂いは無かったようだね!」

 

ベルはオレを尊敬の目で見ていてヘスティアは得意げになっているが本の内容がまともである事をオレはただただ祈るだけだった。

頼む、まともな事を書いてありますように!!

 

「続けるよ、魔法の才能に溢れ、闇魔法と光魔法を得意とする魔道士。歴代の魔導軍将の中でも唯一の平民の生まれ。幼い頃から聖王クロムと友人でもあり聖王エメリナの計らいにより同じ王宮で一時的に共に過ごした事もある」

 

「(なるほど、その時に作法をしつけられたということか)」

 

「しかしそれをよく思わなかった王族、貴族達の嫌がらせによりシエンは追い出される事になり国を出て、北の実力主義の連合国フェリアへ向かい闘技場にて自身を鍛え、その強さを気に入った西の王バジーリオの一時的な家臣として迎えられる。この年にあった闘技大会にも参加してバジーリオを勝利に導き、統一王にのし上げた。この時まだ8歳だったという」

 

「・・・すごい」

 

「いや、アイズさんも大概っすからね?」

 

「それから数年の間フェリアに留まり続けて聖王クロムがイーリス自警団を作り上げたという噂を聞くと西の王バジーリオに別れを告げてイーリスに帰還し自警団に入団してクロムの護衛に努めた」

 

「その後、軍師ルフレと出会いイーリスと隣国のペレジアによる戦争が起き、最前線で戦い時に撤退戦では殿を務めて聖王クロムを逃すなど活躍する。そしてシエンの住んでいた村を滅ぼしたペレジアの暗愚王ギャンレルを討ち取り復讐を果たす。その暴れっぷりに「お前は魔道士ではない」などと言われる事もよくあったそうだ」

 

「魔道士が最前線で戦う?どうやってだ?」

 

「戦争って事はコイツは人殺しなのか!?」

 

「お前達、少し黙れ」

 

「アハハ、まあ事実なので・・・」

 

モンスターから人を守るのが英雄と言われているこの世界の人達からすれば人殺しが英雄だなんておかしいよなぁ。だからオレのことを英雄だなんて言い触らすのはやめてほしいと思っている。

 

「王がいなくなったペレジアとは休戦となり一時的に平和が戻る。その間にシエンは新たな魔法を生み出す事に成功し過去にあった魔法を復元させる事にも成功する。それらを使い、水不足や水害を堤防を作る事で問題を解決し困っていた人達に【賢者】と呼ばれるようになる」

 

「過去の魔法の復元!?凄いじゃないかシエン君!!困っている人も助けてるし立派だぜ!!」

 

「賢者ってほど賢くないんだけどなぁ」

 

「平和になって約2年後、別大陸ヴァルム大陸を治める。ヴァルム帝国がイーリス大陸に攻め込んでくることが分かり、それを阻止してヴァルム大陸に乗り込み皇帝ヴァルハルトを討った」

 

「別大陸の皇帝まで倒したの!?」

 

「いや、オレじゃないけどな。オレの戦友が殺った」

 

「その後すぐにペレジアにて邪竜ギムレーが復活を果たす。シエン達は虹の降る山を登り聖王クロムが覚醒の儀を行いファルシオンの真の力を引き出す事に成功。ギムレーとの決戦の地、ペレジア国の西の孤島に存在する始まりの山へ向かった」

 

「この時私達はシエンと出会ったんです。ここにいる人達が本当に強くてヘルメス様と私は殺されかけたんですがシエンに助けてもらいましたね」

 

「そうだなぁ、正直よく無事だったなって思うぞ。レベル4、5クラスの盗賊が50人くらいいたよな」

 

「(レベル2の彼がレベル4、5相手に勝った!?いったいどういう事なんだ?)」

 

「邪竜ギムレーとの戦いは苛烈を極めたが死者を出さずに短時間にて終わった。その後しばらく経った後にシエンはイーリス聖王国から消えた。シエンは上層部にやたらと嫌われており裏で消されたとも言われていたり、ルフレに遠くに行くと言い残し別の大陸に渡ったとも言われている」

 

「(実際にはルフレは死んだようなものだけど書く必要は無かったんだろうな)」

 

「なるほど、そうやってオラリオに来たわけか」

 

「ちなみにシエンが行方不明になった後にイーリス上層部の人間が謎の急死を遂げるなど不可解な事件が多発した。殺されたシエンの恨みだと騒がれたが実際のところ原因は不明である」

 

「ンー、これは王が統治をする際に邪魔になったのかな?」

 

「さあどうでしょうね?」

 

フィンさんから聞かれたがオレはとぼけておいた。イーリスを離れる前に奴らの罪状をクロムに渡したりなんてしてませんよ?




後半はシエンの過去のお話、理解しなくても、流し読みでも問題ないです

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