イーリス聖王国の魔道士がオラリオに来るのは違っているだろうか? 作:カルビン8
「な、なんだ!?地震か!?」
「これは・・・嫌な揺れだ」
リューがそう言うとシエン達もまた悟った。イレギュラーが起きると。
そしてそれはすぐに起きた。天井の水晶の光が薄暗くなり、天井中央の1番大きいものの中に何かがいた。
ダンジョンはさらに振動し、何かが入っている水晶に衝撃を与え、バキリとヒビが入った。間違いない、あの何かが生まれるのだろう。
「あれは・・・モンスター!?」
「そんな、ここは安全階層ですよ!?」
「今は非常事態だからそんな事は関係ねぇぞ、リリ助!」
「おいおい、まさか、ボクのせいだって言うのかよ。たったあれっぽっちの神威で・・・冗談だろ?・・・もしかして、ダンジョンにバレた!?」
誰もが神威を使い争いを止めたヘスティアを見た。確かにヘスティアにも責任があるのかもしれないがそんな事は後だ。シエン達は南の17階層に上がる穴に急がなくてはならない。
「いや、あれはヘスティアのせいじゃない」
木から降りてヘスティア達の元に行こうとしていたヘルメスも一旦足を止め真上に起きている光景を見ていた。
「ヘルメス様、今度は何をやらかしたんですか!?」
「流石にオレもあんなことはできないな。厄介な事になってきたな、だがそれがまた面白い!」
「なに馬鹿な事を言ってるんですか、さっさと逃げますよ!?」
「いや、多分」
ヘルメスが言葉を続けようとすると南の方から岩の雪崩が起きて17階層に上がる穴が塞がれてしまった。ダンジョンが憎い神を逃すまいとしている事が嫌というほどに伝わって来る。
「あ、やっぱりね。アスフィ、リヴィラの街に行って応援を呼んで来るんだ」
「ああもう!分かりましたよッ!いつもこんな事ばかり!これで死んだら恨みますからね、ヘルメス様!!」
そう言ってアスフィは西にあるリヴィラの街に向けて移動を開始する。
天井にいたモンスターがいよいよ姿が分かってきた。七Mほどの人型のモンスター、ゴライアスだ。短足の猫背で全身の体色は本来のと違い黒色で背中まで長い白髪の頭髪があった。
「ちょっと変わってはいるが、階層主だな。さて、オレ達が勝つか、負けるか。どっちだろうな」
まさに絶体絶命の危機だというのにヘルメスはそう怯える事なくどこか達観してこの状況を楽しんでいるように見えた。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!」
天井に生まれたゴライアスは重力に引かれ中央樹に目掛けて落下した。落下先にあった。中央樹を押し潰して着地に成功する。これでシエン達は19階層に逃げることもできなくなった。
「・・・へ?」
なんともマヌケな言葉を漏らしたのはモルド達だった。ベル達の戦いからに逃げてきた彼らは中央の大草原まで来ていたのだが運悪くそこはゴライアスが降ってきた場所に非常に近かった。
そして着地したゴライアスの赤い瞳がモルド達を見て最初の獲物に見定めた。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
「うわわわわわああああああ!???」
モルド達は他のパーティが階層主を倒した後に18階層にくる冒険者達だったのでゴライアスとまともに戦うことなんてあり得なく逃げ一択だった。
「黒色のゴライアス!?」
「17階層で見た奴よりもずっと強く、素早い!?」
シエン達も東の森を抜け大草原にてゴライアスが起こしている惨劇を目の当たりにする。
「早く助けないと!?」
ゴライアスに襲われているモルド達を助けに行こうとベルは飛び出そうとする。
「待ちなさい」
飛び出そうとしていたベルを止めたのはリューだった。
「本当に彼らを助けるつもりですか?このパーティで」
現状のベルのパーティはゴライアスに立ち向かうにしては貧弱すぎる。レベル4のポテンシャルを持つゴライアス相手に無駄死にするつもりかとリューは言っているのだ。
「助けます!」
ベルは少し躊躇った後にはっきりと答えた。
「貴方はパーティのリーダー失格だ」
「ッ!?」
「だが、間違っていない」
リューはそう言ってベルに微笑した後にいち早くモルド達のいる大草原へと駆けて行った。
「全く、ベルはお人好しだよなぁ。あんな事をされたってのに」
「うん、でも見捨てられないから」
本当にどうしようもない奴だった。助けに行ってお前自身が死んだらどうするんだ?
死なせないようにオレがなんとかするしかないな。ホントにトラブルばっかりだけど飽きさせない奴だよ。
「みんなもゴメン!だけど、力を貸して欲しい!」
「勿論です!サポートはリリにお任せください!」
「俺もやるぜ!ベル!!」
「大型モンスターとはあまりやり合ったことはないんだがな。まあ、なんとかなるだろ。オレ達にできる事をやるぞ、ベル!」
「俺達、タケミカヅチファミリアも協力しよう」
「ベル殿、自分も微力ながら援護します!」
「わ、私も、頑張るから」
「みんな・・・、よし、行こうッ!!」
ベルの呼び掛けに応え、大草原に急ぐオレ達。さて、いったいオレ達に何が出来るのやら・・・
「なんだよ、あれは・・・」
ここはリヴィラの街、リヴィラの街でも階層中央付近の大草原に落ちた漆黒の巨人が暴れているのが見えた。ここ18階層ではモンスターが生まれない筈なのに現れるというイレギュラーにここの冒険者達は動揺し動くことができなかった。
「ボールス、いますか!?」
「アンドロメダ!?お前どこから現れたんだ!?」
「そんな事はどうでもいいです!早く、冒険者と武器を集めなさい!あの階層主を倒します!」
「討伐だと!ふざけるな!あんなのを相手にする必要はないだろが、逃げるほうが勝ちだ!」
「そう出来てたら私だって逃げてます!南の洞窟は崩れて通ることができなくなってます!諦めて戦いなさい!」
「・・・畜生め。やるしかねぇかッ!お前らァ!アレとやんぞ!今から逃げ出した奴は二度とこの街に立ち入りは許さねぇからな!」
アスフィに必死の説得でリヴィラの街のリーダーのボールスは黒色のゴライアスを倒す指示を出す。動き出した冒険者を見てアスフィはその場から離れ、ゴライアスのいる中央の草原へと急ぐのだった。
中央の大草原
中央の大草原では戦闘が始まっていた。といってもモルド達がただひたすらゴライアスの太腕から逃げている状況だ。モルド達もタダでやられているだけではなくなるべく被害が出ないようにバラバラに散って行く。
『スゥ・・・・アァ!!』
ゴライアスは軽く息を吸い吐き出した。それはもっとも離れていた冒険者に直撃し彼は吹き飛び、糸の切れた人形のように転げ回り止まる。
「は、
「嘘だろ!?アレが!?」
『恐怖』を喚起し束縛する通常の威嚇ではなく、【魔力】を込め純粋な衝撃として放出される巨人の飛び道具だ。
予想外の飛び道具に青ざめるモルド達。だがそれだけにとどまらない。
ゴライアスは雄叫びをあげると北、東、西、南、あらゆる所からモンスター達が現れる。ゴライアスが呼んだのだ。
『ひ、ひえええええええ!?』
モルド達が震え上がりながらも応戦しているとゴライアスが近づいてくる。冒険者の1人が捕まりそうになっていたその時、疾風の如く駆けてきた冒険者が間に合った。
「フッ!」
それは纏ったケープをなびかけたリューだった。ゴライアスの死角の真横から持っていた木刀をゴライアスの膝に一閃しバランスを崩させる事によりゴライアスの攻撃から冒険者は逃れることが出来た。
「おおおおお!」
「ハァアアア!!」
痛めた膝を見ているゴライアスの隙を桜花と命がリューに続き斧と刀で攻撃するが斧は欠け、刀は刀身が折れる。ゴライアスの身体は尋常ではない硬さだった。
「早く離脱を!」
ゴライアスが2人目掛けて【咆哮】を撃ち込もうとしているのをリューが見てそう呼びかけるも間に合わない。
「【燃えつきろ、外法の業】」
【咆哮】を放とうとしていたゴライアスの口元が爆発する。この対魔力魔法を放ったのはヴェルフだ。今の現象を起こしたのをヴェルフをゴライアスはギロリと睨めつけ再び【咆哮】を放とうとする。
「【トロン】!」
ゴライアスの行動よりも速くヴェルフやリュー達よりも離れたところから雷の槍が飛んできた。ルフレから貰ったシエン専用の魔道書【トロン】に精神力を込めて本を光らせていつでも戦闘準備万端なシエンだ。
シエンは攻撃するだけでなくこの場所で怪我をした人を移動しながらも【リライブ】の杖を使い治療を開始し即座に回復させる。
「て、テメェは!?」
「邪魔だ、サッサっとどっかいけ!」
シエンは素早くモルド達全員を治療する。なにか言ってるようだがそんなのにかまっている暇はない。
それは【魔導】により威力の上昇した【トロン】を食らったゴライアスの身体に穴が空いてないからだ。この世界に来て今までにはない強敵だ。
17階層にて出現する普通のゴライアスはレベル4相当のポテンシャルを持つ、しかしこの個体は違っていた。シエン達は知らないがたくさんのモンスターとの戦闘経験のあるリューは思った。
このゴライアスのポテンシャルはレベル5に届くと。
「グオオオオオオオオ!!」
マッドビートル、バクベアー、ガン・リベルラ、ミノタウロス・・・あらゆるモンスターがこの場へとやって来る。
「邪魔くせえ!全員伏せろ!!」
シエンは足元に黒い魔法円を浮かび上がらせ、シエンの周りに多数の魔法陣を展開しシエンを中心に魔法陣が回転を始める。そこから現れるのは雷の槍で冒険者達に当たらないように高さを調整し全てを塵に変えた。
「あの量のモンスターを一撃で!?」
「速すぎる・・・」
「なんという・・・」
「流石はヘスティアファミリアの魔導士だぜ、シエン!」
「とはいってもあのゴライアスには何にも効いてないからな!覆面さん!そこんとこ頼んだ!!」
「お任せください」
シエン達のゴライアスとの戦いはまだ始まったばかりだ。
複数のトロンの回転はガンダムWのローリングバスターライフルをイメージしました。