イーリス聖王国の魔道士がオラリオに来るのは違っているだろうか? 作:カルビン8
厳しい評価有難う御座います!なかなかに考えさせられるコメントでした。
こういうの素直に嬉しい
『オオオオオオオオオオオオ!!』
各所で回復した冒険者達の雄叫びが上がる。士気が上がっているのかモンスター達の討伐される速度が上がっていて中央にやってくるモンスターの数も減っていてゴライアスの相手をしているリュー達の負担も減っていた。
「この光はいったい?」
「シエンですよ。弱体化していたとしても流石は彼の国が誇る魔導軍将殿ですね、侮れない!」
アスフィ達も切り傷程度であるがダメージを受けておりシエンの【リザーブ】による回復が施される。怪我だけでなく体力も全快だ。
アスフィ達に迫ろうとしているモンスター達も雷の槍に貫かれ魔石を残し消滅していく。
「・・・とはいえこの状況を打開するには強力な何かが必要です。アンドロメダ、何かありませんか?」
「それがあればこんな前線には来ていませんよ!」
アスフィ達が必死で足止めしつつ攻撃してもすぐさま回復してしまい、魔法には異常なまでの耐久性を誇るイレギュラーの階層主。回復する為には魔力を消費していることから、その魔力の源である魔石が徐々に小さくなりそれと同時にモンスターも弱くなっていくが現状ではあまり現実的とは言い難い。仮にそれで階層主を倒したとしても残る冒険者は僅かであろう。とても勝利とは言えない。この状況を打開する者、誰しもが【英雄】を求めていた。
中央より少し南 ベル・クラネル
「よし!全員回復してるな!これでまたゴライアスが拠点に行くのを遮ることができる!」
100人近くはいるであろう冒険者を瞬く間に回復させたシエン。・・・凄い、本当にシエンは凄い。それに比べて僕は・・・。
いや、そんなことを考えるな。僕にしか出来ないこと、それをやるんだ!
【英雄願望】、そうだ僕にはこれがある。前に使ってみて分かったことだが体力と精神力を大幅に削られる諸刃の剣。この後の戦闘では僕は使い物にならなくだろう。失敗したらどうしよう、ゴライアスに当たらなかったらどうしよう、そんなネガティブなことを考えてしまう。
けど、この状況を変える為にはこれしかない。僕は蓄積を始める、右手に白い光粒を収束させ大剣も白く輝きだした。リン、リンと鈴の音色が鳴り響く。
「この光、インファントドラゴンの時の・・・。よし、試してみる価値はある!ベル、後どのくらい時間がかかる!?」
「まだまだ掛かる!」
「具体的なのを知りたいがまだ2度目だもんな、無理もない。出来る限り貯めろ、時間稼ぎはオレ達がやる!」
そう言ってシエンは再び前線へと飛び出して行った。魔道士でありながら自らを危険を晒すシエンを不安に思いながらも僕は僕のやるべき事に集中した。
再び前線へと戻るオレは【トロン】によるダメージが見込めない事から足元ばかりを狙いゴライアスの体勢を崩すことのみに集中する。一直線に雷の槍が足を撃つと思いきや【ミラーバリア】を多数展開して【コ】を描くように槍の軌道変え膝裏に直撃させる。ただただぶつけるだけじゃない、工夫をすれば役に立つ。
「オオ!?」
「ハァ!」
「オオオオオオ!??」
後ろからの槍の直撃により左膝を曲げることになり体勢が崩れる。その隙を逃さずリューが木刀で右足の太ももを打つとゴライアスは体勢を保てず右に転がり転倒する。伝えてないのに良くもまあやってくれたものだ。機転が効く。
オレが2人に手招きするとゴライアスに追撃せずこっちに寄ってきた。
「手短に言う、ベルのスキルでアイツを倒す」
「クラネルさんの、ですか?」
「それはインファントドラゴンを倒したというあの噂の?」
「ああ、アイツは現在その準備をしている。その間はオレ達でアイツを足止めする。いいか?」
「「了解!」」
話を素早く終わらせリューはゴライアスに接近、アスフィはリューよりも少し離れた位置に、オレは更にその後ろだ。オレは時間稼ぎをするだけでいい、ベルに繋がなくては!
ゴライアスは迫り来るリューを見つつも黒ずくめのシエンを見つめた。自身にロクな怪我を負わせる事はできないが先程の強大な魔法を扱ったのはアレなのだと勘が働いた。アレを潰せばまた揺れる、そんな気がした。
「オオ、オオオオオオ!!」
迫るリューに向かって突撃する。リューはその巨体に触れるだけでも跳ね飛ばされてしまうだろう。リューはゴライアスの突撃を躱さざるを得ない。
「アンドロメダ!逃げてください!」
次にゴライアスはアスフィに迫る。その時アスフィへの道に自身の大きさを超える石の障壁が突然に現れてアスフィの居場所も分からなくなるが構わずにゴライアスは突き破る。破壊した後に彼女の姿を見つけることができても無視、狙いはシエンのみだ。
「(私を攻撃しない?狙いは・・・まさか!?)シエン、逃げなさい!!奴の狙いは!!」
「オオオオオオオオオオオオ!!!」
アスフィがゴライアスの狙いに気付いてもゴライアスが咆哮を上げる事でそれを妨げる。リューも追いつき木刀を使い殴りつけても無視、全力でシエンを潰しにかかっていた。
「【ミラーバリア】!」
シエンは障壁を貼りつつも距離を取ろうとするがゴライアスの方が速く、追いつかれてしまう。ゴライアスは障壁を拳をぶつける事で軽々と壊し、拳を開き手のひらの内側にシエンを掴み取った。ゴライアスはもう片方の手をシエンを掴んでいる手を包み込んで万力の力で握り潰した。
シエンが握り潰されたその状況は全ての戦場で戦っていた者達に見えていた。レベルの高い者、目の良い者達はゴライアスの拳の隙間から赤い液体が流れ出てきているのが見えた。いったい何なのか、語る必要もないだろう。
ゴライアスは拳を開くと黒ずくめの塊が地面に吸い寄せられるように落ちた。それで終わる事はなく拳をシエンのいる場所に叩きつけ続ける。その光景に目を背ける者も現れる。自分もああなるのだと強烈すぎる光景が今その場で行われていた。
「あ、ああ・・・シエン、様?」
「おいおい、ふざけろ・・・」
リリ達も同様で助けに行かないといけないが足がすくむ、動ける者はリューとアスフィ以外にいないと思われたが1人だけいた。
「あ、ああ、ウワアアアアアアア!!シエンから!離れろォオオオオオオ!!」
素早く動きだしたのは【英雄願望】をチャージ中だったベルだ。とても大剣を持っているとは思えないほどの神速でゴライアスに迫る。チャージは終わっておらず中途半端だったが黙ってみていることなどできなかった。大切な仲間が、ファミリーの命が奪われようとしているのだ。
この場にはもう自分に致命的なダメージを与えるものはいないと油断していたゴライアスは前からベルが近づいてきているのを気にしない。ニタリと笑みを浮かべながらシエンを殴り続けることをやめなかった。
「ぜやあああああああああああ!!」
ベルは白色に輝く大剣をシエンを殴り続けている腕を叩き斬る様に横薙ぎに振るうと白色の斬撃が飛びその斬撃が振り下ろしていたゴライアスの右腕に当たり、身体からズリ落ちた。
ベルの大剣は役目を終えたのかスキルに耐えきれなかったのか砕け散った。ベルもスキルを使った事により体力を奪われており片膝をつき動けなくなっていた。
「切れ、た?」
「やれるのか?勝てるのか!?」
「やれる!やれるぞ!!お前ら、【リトル・ルーキー】を守れェェェェ!!」
『おおおおおおおおおおお!!』
ベルが見せた勝利への可能性は他の冒険者達の士気を大いに上げた。動けなくなっているベルを救い出そうと冒険者達は中央に集まろうと走りだした。
「ベル様・・・!拠点にはあの大剣よりも良さげな物がありました。リリが持ってきます!!」
「リリスケ!?」
「リリがここにいても何も意味がありません!シエン様が生きているかはヘスティア様に聞いてきます!」
リリは自分のできる事をしようと拠点へと走りだした。ヴェルフはヘスティアから渡された白い布で覆われた魔剣を剥き出しにして構える。「自分の意地よりも仲間の命を優先すべき」とヘスティアより聞かされたヘファイストスの言葉が胸に刺さる。
もし中層で魔剣を振るっていたらこんな所に来ずに良かったのかもしれない。死ぬような思いをする必要なんてなかったのかもしれない。そんな言葉が頭に浮かんだ。
「(畜生ッ!だが今はそんな事を考えてる場合じゃねぇ!リリスケも自分にできる事をやろうとしている。今は意地を捨てる、俺も俺にしか出来ない事をやる!)」
ゴライアスの近くにベル達がいるために魔剣を使って攻撃して巻き込むわけにはいかないので構えるだけで留める。ヴェルフもまたゴライアスに攻撃する機会を狙ってただ待つだけだ。
「オ?オオオオオオオオオオオオ!???」
ゴライアスは何が起きたのかわからないといった感じだったが、自分の右腕を切り落とされた事を自覚するとシエンから標的をベルへと切り替え右腕を再生しながら残っている左腕でベルを殴りつけようとした。
ひ弱な兎がミンチになりそうになった時にリューが駆けつけベルを抱えて拳を避けた。そのままゴライアスから距離を取るために走り続ける。
「う、リューさん!?」
「間一髪でしたね、クラネルさん」
「は、はい。そうだ!シエン!シエンは!?」
ベルはシエンがいる場所を見ると地面が割れていたり殴りつけていたことから凹んでいる。埋まっているのかシエンの姿は見えなかった。
「クラネルさん、シエンさんが心配なのは分かる。あのゴライアスの標的が貴方になった事であのゴライアスはシエンさんを攻撃する事はないでしょう。出来るだけ彼からあのモンスターを引き離します」
リューは取り乱しているベルに冷静に諭す。ベルはそれを聞いて少し落ち着けを取り戻した。
「このハイポーションを飲んで体力の回復を、あのゴライアスを倒せるのは貴方しかいません。私はゴライアスを近づけさせないように足止めします。頼みましたよ」
「は、はい!」
そう言ってリューはベルに微笑んだ後にゴライアスに向かって走りだした。リューから貰った回復薬を飲み、体の調子が戻ったベルはシエンがいる場所をチラリと見た後に中央から離れ南の拠点へと走りだした。
「ヘスティア様!!シエン様が!!」
ベルよりも先に拠点に辿り着いたリリはヘスティアを見つけシエンの安否を尋ねた。
「サポーター君、安心してくれ。大丈夫さ、シエン君は生きてるよ。僕の恩恵は消えてない」
「本当ですか!?ベル様に伝えないと、それと武器を」
その言葉にリリはホッとした後に拠点に置いてある武器を探し始めた。探していると一本だけ黒色の剣のような物を見つけた。他のものとは違い妙な威圧感を感じるような気がした。
「(なんでしょうこれは?これならば行けそうな気がします!)」
とてもリリには持てそうにない大きさではあるがスキル【縁下力持】によってどんな重いものでも持てるようになっているのでベルの元へ運ぶ事も可能だ。
リリはベルの元へと急ぐのだった。
最前線 シエン
ゴライアスに握り潰されオレはしばらくの間、意識が途切れ真っ暗になっていた。今はどうやら生きているようだが身体のあらゆる部分が動かない。それに視界も真っ暗で口の中には血の味と土の味がした。地面の中に埋まっているのだろうか?戦況はどうなっている?ベルは?みんなは?
・・・分からないことだらけだ。体がダルい、身体がもう休めと催促をしてしてくる。もう寝てしまいたいくらいだ。
「シエン、聞こえますか!?聞こえているのなら早く出て来なさい!今、ベル・クラネルがあのゴライアスを倒そうとしている!」
上から微かにアスフィの声が聞こえる。彼女らしくなく大きな声をあげるということはなかったのに。そしてアスフィの言ったことをぼんやりと理解する。あの、ベルが?オレが手も足も出なかったゴライアスを、倒す?出来るのか?
「倒すためには時間稼ぎが必要です、私達だけでは足りません!貴方の力が必要なんです!」
そうだ、ベルの【スキル】か。うまくいったんだな。オレの力が必要、か。アスフィにそんなこと言われたら頑張るしかないじゃないか・・・ッ!
身体に力は入らない、けどオレには必要のない事だ。オレに必要なのは【魔力】と【魔法】のみだ。
ゴライアスがシエンを殴り続けた場所から黒紫色の魔力が少しずつ地面の割れ目から溢れ出てくる。それが一部の地面を吹き飛ばして黒紫色の物体が地面から僅かに浮き上がった。
全身は黒紫色の炎のように燃え上がり人の形はもはや見えず、以前のように目と口からは赤紫色の炎が出ている。今回はさらに両肩と思わしき所から黒紫色の炎が噴き出しており、魔力の圧が尋常ではなくこの場にいる者たちの視線を釘付けにした。
「な、なんだよあれ・・・」
「バケモンか!?」
相変わらずの扱いにシエンは失笑しそうになるが呼吸するだけでも辛いのでやめておいた。今はただやるべき事をやるだけ、【魔力】を全開にして【魔導】も発動、トロンの魔道書にも触れて精神力を流し込み魔道書は黒紫色に光を放ち準備は完了した。
いつもの倍以上の大きさの魔法陣がシエンの目の前に出現し、そこからゴライアスと同じくらいの大きさの紫電を纏った雷の槍がゴライアスへと突き進む。
その射線状にいた冒険者達は慌ててその場を離れた。
「ゴォ!?オオオオオオオオオオオッッ!?」
自分の同じくらいの大きさの雷の槍をもろに受けたゴライアスはベルのいる場所から遠くへと追いやられた。が、ゴライアスは無傷。今のシエンでもダメージを通す事は出来なかった。
「(こちとら瀕死でパワー全開だってのにッ!・・・落ち着け、オレは時間稼ぎをすればいいんだ。押し戻すだけでも十分だ!)」
自分のやるべき事を、勝利を掴む為に魔道士は再び立ち上がった
握り潰さそうになった時に全身に【竜化】を始めた為、硬化が間に合わなかった部分が大変なことになってます。
シエンの浮遊移動の仕方はロックマンエグゼのフォルテをイメージをしています。(オーラを纏いながら直立状態で移動)