カゲルの碁   作:かろんかろんちょ

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2013年 退藤カゲル 12歳

 

何で俺が倉の整理なんて。

 

 カゲルは不貞腐れていた。勉強をせず友達とばかり遊んでいたカゲルを見かね、彼の祖父はカゲルに倉の掃除を命じた。カゲルは子供らしくわがままな性格ではあったが、それでいておじいちゃんを大切にするかわいらしい部分もあった。

 命じられたカゲルは、祖父の言うことには逆らえず、しかし決して好意的とは言えない態度で、仕方なく、しぶしぶ倉へ入った。

 ぎいと扉を開けると、カゲルの目に埃が飛び込んできた。彼は両手でぐしぐしと目をこすると、そばにあった照明のスイッチを押した。

 立派な倉だった。掃除されていないため、埃っぽく、また雑然としていたが、そこには、古めかしい書物やら装飾品やら家具やらが置いてあった。ただし、古いは古いがそれがいかほどの価値なのか、カゲルも、またカゲルの家族も一人として知らなかったし、把握する気もなかった。

 

 とにかく、おじいちゃんの言うことは聞かなくちゃいけない。

 

 カゲルは倉の中へ踏み出して、立てかけてあったほうきを手にとった。が、少し埃やら砂やらを外へ払うと、だんだん面倒になってきたのか、ほうきをまた元の壁に立てかけて、掃除を放棄した。

 

 とはいえ、このまま帰っては掃除をさぼったのが丸わかりで、すぐさま叱られてしまう。そう考えたカゲルは、しばらくこの倉の中で暇をつぶすことにした。

 

 価値があるのかないのか分からない書物やら家具やら壺。カゲルは、その雑多とした物の中で、ある一つに注目した。

 

 それは碁盤であった。

 もっとも、当時のカゲルは囲碁の知識などまるでなかったから、それが囲碁の対局に使う盤だとは分からなかったが。しかし、その不思議な魅力に引かれ、カゲルは思わず手で触れたのだ。

 

 その瞬間だった。

 目の前で神々しい光が炸裂した。

 

 カゲルは思わず尻もちをついた。なんだなんだ花火?不発弾?戸惑っていると、しばらくして光はすっと消え、倉の中は再び照明の燈のみとなった。

 

 なんだったんだ、今のは…

  

 呆然として…しかし何も起こらなかったことに些かほっとしたカゲルは、倉の中央に―光が炸裂したその場所に、一人たたずむ男を発見した。

 

 それは和服の男だった。

 

 先程まで、確かにそこには誰もいなかったはずなのに、カゲルが碁盤に触れた途端、その男が暗闇の中に出現したのだ。

 扇子を持ち、暗闇の中でたたずむ息を呑むほど綺麗な男に、思わずカゲルは見とれた。しかし、しばらくして我に返ると。

 

「ゆ、ゆうれいだー!」

 

 と絶叫し、カゲルは倉から逃げ出した。カゲルの逃走は仕方がなかった。和服の男は、真実、幽霊だったのだから。

 

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