妖怪の山、山頂に突如神社が現れたのだが、それだけではない。三人の人影が神社から出てきた。
「諏訪子様、神奈子様。幻想郷ですよ!」
緑髪の少女、東風谷早苗は幻想郷の風を感じながら景色を眺めている。その後ろから、帽子を被った少女、洩矢諏訪子と注連縄が目立っている女性、八坂神奈子が早苗に笑みを浮かべている。
「さて…幻想郷に来たは良いけど…やることが沢山あるね。」
「挨拶回りやらしないといけないとダメだよ。妖怪の山の連中は、生張り意識が高いからね。」
「紫さんから幻想郷での掟は、聞いているので準備が出来次第、行きましょう。」
この光景を遠くから監視していた椛と文は、気づかれないようにその場を立ち去る。
「文様…天魔様に御報告しなくては…」
「そうね。それと、エルの方にも伝えておきなさい。あの少年は、人間でありながら妖怪側の味方をする人間。問題にはならないはずよ。」
「わかりました。」
椛はエルに伝えるために妖怪の山を飛び去った。だが、文と椛はエルが幼児化兼記憶喪失になっていることを知らない。その頃エルは、博麗神社で境内の掃き掃除をしていた。
「良い天気だよ。掃き掃除終わらせないとね。」
「エル。掃き掃除が終わったら今日の仕事は終わって良いわよ。」
「そうなの?でもどうして、霊夢姉。」
「紫から依頼を頼まれてね。忙しくなりそうだからよ。」
「わかった。掃き掃除が終わったら、兄さんに会ってくるね。」
「気を付けなさいよ。」
エルは掃き掃除を終えると、紅魔館に向かう。姿が見えなくなったタイミングで、紫が隙間から姿を現した。
「紫…依頼は?」
「………」
「お茶を出すわ…」
紫にお茶を出す。沈黙を保っていた紫から依頼内容が説明される。
「さて…近々、幻想郷で大規模な異変が発生するわ。」
「異変…解決はするわよ。私の役目だしね。」
「幻想郷が崩壊する規模の異変ではないから安心して良いわ。」
お茶を飲み、話を続ける紫。霊夢は煎餅を食べながら話を聞く。
「異変だけど、霊夢には人里に結界を施してほしいのよ。念のために…」
「人里に結界…わかった。他にすることは?」
「……そうね。」(エルの記憶が戻ると、エル自身に負担が…幻想郷にも影響が出かねない。)
深く考え込むと、霊夢が痺れを切らしたようだ。
「紫!何を考えてたの?」
「……うーん…結界以外出とくにないわね。何か思い付いたら教えるわ。」
紫は隙間に入り姿を消した。霊夢は紫の考えが検討もつかないようで、ちょっとイライラしている。
(大規模異変…ね。何が、起こるのかしら?)
エルは休憩中のレインとパチュリーがいる図書館で、静かに読書をしていた。
(エルとレイン…集中力が凄いわね。エルは記憶喪失だとしても集中力は変わらずね。レインは妹様の狂気らしいけど…妹様とは似ていない…そうとは…思えない。)
パチュリーは読書を中断して、エルとレインの観察をしていると、フランが入ってきた。
「パチュリー本読ませて!」
「妹様…図書館では静かにね?」
「わかった!」
フランがエルとレインがいる椅子の近くに座ると、エルが気配で気づいたようだ。
「フラン姉…いたの?」
「今さっきだよ!何読んでるの?」
「外の世界に関する雑誌だよ。何故かあった。」
「たまにだけど、本が増える時があるのよね?」
パチュリーは紅茶を飲みながら読書を続ける。
「エル……そろそろ…」
「ん…夕方になる。そろそろ帰るね。」
「気をつけて帰りなさい。」
エルは図書館を出ていった。レインは休憩時間が終わったので、メイドの仕事に戻る。
「妹様はどうするの?夕飯まで、まだ時間があるわよ?」
「そうだね…魔法の参考書が読みたい!」
「良いわよ。今、持ってこさせるわね。」
こあが何冊かの参考書を持ってくると、フランに渡した。
「館内で読むのなら自由よ。」
「静かにしてるね。」
妖怪の山にある天狗の集落では、突如現れた神社に警戒しているようで、数人の天狗が会議をしていた。
「妖怪の山は天狗の土地だぞ!許せるのか!?」
「こればかりは、どうしようもないだろ?奴等も天狗の里を攻める素振りも見せん。」
「何かあっては遅い!早急に対処しなくては…」
天狗の上層部が警戒をする中で、文は一つ提案を出した。
「あの方に依頼を出してはどうですか?」
「……妖怪堂の店主の人間にか?」
「人間に頼むなど…」
「ですが、あの方は天魔様の御友人で、人間でありながら、妖怪側の味方をする。我々の敵にはならないかと。」
「射命丸よ。勝算はあるのか?」
「今現在は危険度が不明です。此方を攻めなければ良いのでは?どうですか?」
文の発言に暫く議論する中で、上層部が決心した。
「……仕方あるまい…この問題は射命丸に一任することにする。」
「畏まりました。」
文は妖怪の山を飛び去り、エルを探しに向かった。