隠れ家で寝ていたエルは、目を覚ますと体の調子を確認する。昨日とは違い、調子が良さそうだ。
(体の調子は良いけど…僕は何やってたんだっけ?)
エルは再び、記憶を失っている。前回のとは違い、自らの意思での記憶喪失である。その目的を知る者は、誰もいない。その影響か、身長も縮んでいる。
(…うーん。何を忘れてたんだろ?)
隠れ家から出ると、霊力、魔力、妖力の玉を出して、力を確認する。
(ちゃんと、力は発動できるね。霊夢姉……あれ?何か違和感が…うーん…)
エルは背伸びをした後、荷物の確認をして、隠れ家を出ていった。それを見ていた藍は、直ぐに報告に急ぐ。
(何故だ!?エルがまた、記憶を失っている。今度は自らの意思で…)
マヨイガに戻ってきた藍は、紫に一部始終報告する。
「………エルが再び記憶を?」
「見るからに、自分の意思での行動です。」
紫が隙間を開いて、エルの周囲を確認する。別の隙間も開いて、幻想郷内を調べると、何かに気づいた紫は隙間を閉じた。
「良いわ。自由にやらせなさい。問題が解決したから。」
「え、ですが…紫様のプランが…」
「エルの行動は職務放棄に当たるけど、代案を用意したようね。私にプラスに働いたわ。藍、エルの監視は終わりよ。通常業務に戻りなさい。」
「よろしいのですか?」
「良いわ。エルの状態だけでも説明するわ。」
紫の説明だと、エルの能力…【契約する程度の能力】で、得た全ての能力が消滅しているが、霊力、魔力、妖力の3つの力は使うことが出来るらしい。
記憶の方だが、能力は消えているが、エルの知り合った人物との記憶は失っていないが、過去の記憶が消えていて、エルが10歳まで戻っている。
「種族は、エルの種族は?」
「特殊だけど…半人半妖になったわ。能力は消えても、複数の存在と仮契約してたから、力だけが定着したみたいね。もう、戻ることはないわね。エルの分身であるロードも、消えることない。」
「あの幻想郷を観測している5体の人形は?」
「エルが代わりに用意した観測者よ。エルの血、3つの力、記憶を受け継いだ存在ね。彼等は幻想郷の掟を破ることはないわ。私達の味方ね。」
「……あの存在に…過去の記憶…は?」
「エル本人が持ってるわね。あの悲しみの過去を与えるわけがないわ。エルの性格からして…妖怪堂の方はロードにやらせなさい。霊夢にはエルの監視を命じなさい………良いわね。」
「……………畏まりました。」
藍は紫から離れると、エルの元に向かう。
「藍さん!お久し振りです!」
「……今日は霊夢に会いに行くぞ。」
「………わ、わかりました。」
藍とエルは博麗神社に向かった。
博麗神社に到着すると、霊夢とニーナの2人が出迎えた。
「エル!?藍、どういうこと!?」
「説明するから待て!ルーミア、近くにいるんだろ?エルと一緒にいろ。レイとレイン、殺気を放ってないで出てこい!」
草村から、ルーミア、レイ、レインの3人が顔を出した。
「バレたのかー」
「マスターが!?」
「エル……」
「エルと一緒にいてやってくれ。レイとレインは記憶共有されてるだろ?」
「知ってますよ。」
「わかった……」
「任せろなのだー」
藍は霊夢とニーナにエルの状態を説明する。
「記憶喪失…」
「そんな…」
「だが、今回のは特殊だ。今、エルには知り合った存在の記憶は失っていないが、過去の記憶だけが失った状態だ。」
一部嘘を混ぜて、説明を続けるが、ニーナの視線は藍に向けられていない。
(ニーナは気づいたか……)
「霊夢にはエルの保護を頼みたい。」
「………私なんかでいいの?」
霊夢の表情が暗い。自分を責めているんだろ。だが、渋々藍の頼みを聞き入れた。
「頼む。暫くは、ニーナも一緒にいてくれ。」
「私もですか?構いませんが…」
「また、後で…」
藍は姿を消した。