この頃。エルは人里を出て、あの黒猫に会うようになった。
「今日は魚の干物を持ってきたよ。」
黒猫は匂いを嗅いで、ゆっくりと干物を食べ始めた。それを邪魔しないように観察している。
「美味しい?」
エルの声に反応して、黒猫は近づいて、手を甘噛みしている。その様子を隙間で見ていた妖怪賢者の八雲紫。
「今のところは、問題ないわね。少しずつだけど、霊力に慣れてきているかしら?」
エルの成長を観察していた紫に、式神の藍がとある報告をして来た。
「エルの行動を怪しんでいる人間がいます。少し、段階を早めた方がよろしいかと…能力成長の妨げになりかねません。」
「厄介ね。エルは幻想郷のバランスを保つ必要な存在。暫くしたら、行動するわよ。」
「畏まりました。」
エルが幻想郷に来て半年が過ぎた。霊力の制御も完璧になり、低級妖怪なら戦闘も出来るようになったが、能力の方は、無意識に使っているからか、制御も出来ていない。
人里で荷物運びの仕事をしながら、魔理沙のことを考えていた。魔法使いの修行行ってから半年になるからだ。
「そろそろだと、思うんだけどな……」
「何がそろそろなんだぜ!」
エルが振り向くと、魔理沙が箒を片手に持っていた。魔法使いの修行から帰ってきたようだが…
「………魔理沙なの?」
「私は霧雨魔理沙だぜ!久し振りだな…エル!」
「う、うん。久し振りだね。魔理沙…」
帰ってきた魔理沙は、以前の魔理沙とは、かけ離れ過ぎていたが、帰ってきて嬉しそうである。
「魔法使いにはなれたの?」
「一応だぜ!魔法も使えるぜ。でも、主に使うのは魔法薬だけどな。もっと修行を続けないと、魔法は完璧にならないぜ。」
「この荷物運んでくるね。魔理沙はどうするの?」
「霊夢に会いに行くぜ!久し振りだしな。」
魔理沙と別れたエルは、荷物運びの仕事を終わらせると、慧音の家に帰った。
「エル。おかえり…お前に客が来ている。」
「僕に客……妖怪の匂いがする。慧音先生以外に2人いる?」
「な!?」
「流石ね。妖怪の匂いがわかる人間がいるなんてね。」
壁から隙間が開いて、紫と藍が姿を現した。エルは小刀を取り出して、警戒をする。
「僕に何のようですか?」
「自己紹介させてもらうわ。私は八雲紫…幻想郷を誕生させた妖怪賢者。」
「私は紫様の式、八雲藍だ。よろしく頼む。」
「………エルです。外から来た人間です。」
お互いに自己紹介を終えると、紫が話始めた。
「先ずは、エル。貴方に謝罪に来ました。」
「謝罪?」
「エルを幻想郷に連れてきたのは私なのよ。その謝罪にね。」
紫の謝罪を一応、受け入れたエルは、藍を見る。
「どうした?」
「お姉さん…狐の……妖怪?」
「よくわかったな。確かに私は、狐の妖怪だよ。」
「なんとなくだけど…紫さんは、謝罪だけに来たんですか?」
「……本題に入るわね。エルに頼みがあるのよ。」
紫がエルに頼むことは、妖怪と人間が共存できる幻想郷を誕生させること。そのために、エルには妖怪達の相談役になって欲しいとのことだ。
「相談役……何故、僕なの?幻想郷には、博麗の巫女がいましたよね。」
「博麗の巫女の仕事は、人間を襲った妖怪を退治すること。基本、人間の味方なのよ。」
「僕に、妖怪の味方になれと?」
「それは違う。信じられないだろうが…妖怪の中では、人間と仲良くなりたい者も存在する。慧音先生もその1人だ。」
「私は半獣だぞ?」
「だけど、人間と仲良くなりたいのは、本当だろ?」
藍に言われてしまい、慧音は黙ってしまった。その話を聞いてエルは、信用してもいいと思ったが、理由がわからない。選ばれた理由が…
「選んだ理由単純よ。貴方が妖怪の黒猫と仲良くしてたから。基本人間はそうはならない。それと、エルはルーミアに会いたいわよね?」
「…………会いたいです。」
「正直で良かったわ。でも、人食い妖怪のルーミアを人里に入れるわけにはいかない。大体わかるわよね?」
「考えさせてください。」
「勿論よ。協力する場合は、住む場所を変更してもらうわ。でも、人里に遊びにいったり、長期間の宿泊も許すわ。」
「余り深く考えなくても、大丈夫だ。妖怪の味方になるわけじゃない。また、会おう。」
紫と藍はその場から、姿を消した。