その日の夜。エルは紫に言われたことが、頭に過った。頼まれた妖怪の相談役の話のことである。
「……………」
「エル。八雲に言われたことを考えていたのか?」
「うん。慧音先生…妖怪に詳しい人がいたら教えてくれない?」
「………アポが取れるかは、わからないぞ?」
慧音に言われて、小さく頷いたエルは、歴史書を読み進めるのだった。
翌朝。朝早くから魔理沙に誘われたエルは、魔法の森に来ていた。その理由は…
「エル。私の家に案内するぜ!」
「家あるの?」
「廃墟を見つけたんだぜ!」
魔理沙に案内されて魔法の森を歩いていくと、古びた一軒家がそこにあった。隣には【霧雨魔法店】と書かれた看板があった。
「……………この家は?」
「私の家だぜ!」
「持ち主は…」
「私だぜ!」
「………………魔理沙が普通の泥棒になった!」
「私は普通の魔法使いだぜ!泥棒は失礼だぜ!?」
家に入れてもらうと、中は案外綺麗に整理整頓されていた。戸棚には魔法薬の入った小瓶が置かれていた。
「魔理沙は掃除出来るんだね。」
「私じゃないぜ。」
「誰がしたの?」
「香霖だぜ!」
「…………霖之助さんにやってもらったの!?」
魔理沙の言っている香霖とは、香霖堂の店主…森近霖之助のことである。エルもお世話になっている男性だ。
「迷惑かけたらダメだよ?魔理沙…」
「迷惑になってないぜ!」
(なんだろう。来ただけで疲れたよ……)
精神的疲労が出てきたようで、溜め息をしているエル。魔理沙は珈琲を出した。
「魔理沙は珈琲…飲めるの?」
「修行の帰りの時に、師匠の家から貰ってきたぜ!」
「そう…………苦い!?」
「砂糖入れるか?」
平気で飲んでいる魔理沙を見て、ちょっと負けた感じがしているエル。
(………私だけは、魔法薬で苦味が消えてるぜ。)
苦いのを我慢して、飲み終えたエルは、マグカップを流しに置いておく。
「後でするから良いぜ!」
「後ですると落ちないよ?」
「………わかったぜ。」
魔理沙はマグカップを洗いながら、エルに話す。
「本当久し振りだぜ。今何歳だ?」
「半年、会えなかっただけだよね?今は8歳だよ。」
「人里で仕事してたよな。何でだぜ?」
「慧音先生の家に住んでるけど、迷惑はかけられないから。」
エルは悲しげな表情で、話している。
「そろそろ、お昼になるぜ。」
「ヤバ、紫さんとの約束忘れてた!?」
エルは紫との約束を思い出して、立ち上がる。
「約束?」
「うん。荷物運びの仕事を依頼されてるんだ。また今度ね!」
外に出たエルは、霊力を足に込め、地面を蹴ると同時に一瞬でその場から消えた。
「消えたぜ……瞬間移動か!?」
待ち合わせの場所である妖怪の森付近に到着した。
「この技は空を移動するより使えるね。霊力の消費が激しいけど…」
「遅かったわね。エル…」
「遅れてごめんなさい。」
「例の話は受けてくれるのかしら?」
「相談役でしたよね。僕みたいな子供に?」
その言葉に、紫は笑みを浮かべると、鬼の少女が酒を飲みながら姿を現した。
「紫~遅れてごめんね。」
「萃香。余り待ってないから大丈夫よ。」
「紫さん?隣にいるの……妖怪だよね?」
「久し振りに人間を見たよ。私は伊吹萃香。鬼だよ。」
萃香は酔っ払いながら、名前を名乗るが、エルが取り出した物を見て、酔いが完全に覚めた。
「何で…豆を持ってるんだ!?」
「紫さんから必ず持ってくるようにと、言われたから。」
「紫!?」
「冗談よ。楽しみにしていたお酒を全部飲まれたことは、恨んでないわ。」
「やっぱり、恨んでるじゃん!?」
萃香と紫のコントを見て、思わず欠伸を我慢するエルなのでした。