紫と萃香のコントが終わり、エルの方を見ると歴史書を黙々と読んでいた。視線に気づいたようで、歴史書を鞄にしまった。
「僕は何をすればいいの?」
「今日は萃香と戦ってちょうだい。武器が欲しいなら渡すわよ?」
「戦うんですか?鬼…怖いし…」
萃香はエルの表情に、少し悲しげである。妖怪の立場としてなら、嬉しいかもしれないが、萃香本人はショックを受けている。
「嘘を言われるよりいいけど……」
「ご、ごめんなさい。」
「正直なのは、良いことだぞ……」
萃香の落ち込みようが激しいので、エルはやる気を見せるために、霊力で身体強化をする。
「…………やる気だね?殺しはしないけど、私の攻撃に耐えられるかな?」
萃香が試しに、近くにあった岩を持ち上げて、エルに投げつけると、霊力の玉を岩に放って破壊した。
「霊力が使えるのか。面白くなってきたよ!」
笑みを浮かべている萃香に、エルは右手に霊力を溜め込んで、萃香に放つ体勢をしていた。
「この私に、霊力を放つ気かな?だけど…」
萃香がその場から消えて、エルの背後に、瞬時に移動した。
(後ろから攻撃されたら…意味ないよな!)
エルに攻撃する寸前に、霊力の込められた右手が、萃香の腕を掴んだ。
「な、なんで!?」
「僕は妖怪の匂いがわかるよ。背後にいても、関係無い。」
絶体絶命の萃香は、エルから降参するように言われる。このまま攻撃しても、霊力の込められた右手で、倒されるのが先である。
「…………私の負けだよ。」
萃香の降参宣言に、エルは力が抜けて、地面に座り込む。
「助かった。」
「エルは賭けに勝ったようね。」
紫の発言に、萃香はエルを見ながら聞いてみた。
「何をしたんだい?」
「………そのまま前から攻撃されたら、僕の負けだよ。後ろからの攻撃は、避けられるけど、前からは少し苦手で………」
萃香は苦笑して、エルを見ながら興味を示している。
「私とまた、戦ってよ。」
「萃香さん!?紫さん…これどうなるの!?」
「…………想定外だわ。鬼が後ろ楯になれば、エルは妖怪に襲われなくなるわね。」
「エルの護衛なら何時でもするよ。気に入ったからね~」
萃香はご機嫌の状態で、姿を消した。紫は1枚の封筒をエルに差し出した。
「………これは?」
入っていたのは、1枚のカードだった。隙間移動できるように、紫の能力の一部が込められている。
「幻想郷のとある森に建物を建てたから、エルが使っていいわよ。このカードを使わないと、行けないから。無くさないように…」
「……いいの?」
「いつか、必要になるわ。」
人里まで送ると、紫は隙間で姿を消した。慧音の家に帰ると、妹紅も一緒にいた。
「おかえり…エル。遅めの帰りだったな。」
「妹紅さん…それが…」
昼の出来事を説明すると、妹紅と慧音が目を見開いてしまった。
「伊吹萃香に勝った!?」
「でも…萃香さんは手加減してましたよ。」
「手加減でも、勝つことはあり得ないからな!?運だとしてもだ。」
慧音は暫く何かを考えると、エルに紫の話を受けてみないかと、提案してみた。
「………でもそれは。」
「八雲紫は幻想郷を大切に考えているし、それについての危険は無いだろう。伊吹萃香は嘘を嫌う。認めてもらったことは、誇ってもいいことだ。」
「………紫さん。近くにいるよね?」
天井に隙間が開いて、紫が顔を出した。
「で、どうするの?」
「協力してくれる?」
「勿論だわ。」
エルは紫の提案を受け入れるのだった。