さとりの寝室で、眠っていたエルが目を覚ました。寝ていた場所がさとりの寝室だとわかると、起き上がろとするのだが、体が動かない。こいしがエルの上で、寝ているようである。
(……僕は何で……頭痛で気を失ってたのか。心配かけちゃったな。)
すると、こいしが目を覚まして、エルの顔を見ると涙を流している。
「エルが目を覚ました!」
「こいし…おはよう。下りてくれたら、助かるんだけど…」
エルのその一言に、こいしは昨日のことを覚えてないか聞いてみた。
「お姉ちゃんにされたこと、覚えてない?」
「さとりさんにされたこと。うーん………覚えてないよ。」
間の長かったエルに、こいしは妖しげな笑みを浮かべると、妖怪としての力を入れて、エルの体を押さえ込む。人間のエルでは、起き上がることはできない。
「逃げられないよ。叫んでもいいけど、私の能力で、エルと私を無意識下にすることで、見えなくできるから。どう…私のこと怖くない?」
「………だから何が?」
「…………え、だから…」
「何で、僕がこいしを怖がらないといけないの?今すぐ、僕をこの場で…殺したいの?」
「それは、やらないけど…」
エルからの予想外の反応に、こいしは困惑している。妖怪としての一部の本性を出せば、エルが怖がると思ったようだ。
「ならいいよ。それと、こいしには言ってるよ。妖怪に殺されるようなら、それまでだって。」
「嫌わないの?」
「こいしが覚り妖怪だから?」
その質問に、こいしは小さく頷いている。昨日のさとりとエルの会話を聞いていないようだ。
「……僕は、覚り妖怪だからと言って、嫌わないよ。逆に嫌われたくないかな。覚り妖怪は、他の妖怪からも、嫌われてるの?」
「一部の妖怪からは…」
元気の無いこいしを見て、エルは起き上がるとこいしを抱き締めた。その行動に、驚いたようだが拒まなかった。
「全く、こいしは勘違いしすぎだよ。僕がこいしからの依頼を受ける時点で、嫌ってないよ。もし、嫌ってたら依頼を断ってるよ。」
「………ごめんなさい。痛くなかった?」
「やっぱり、妖怪は力が強いね。羨ましいや…」
平気な顔で、こいしを安心させるのだが、信用していないようだ。悩んでしまったエルは、暫く考えて何かを思い付いたようだ。
「こいし…」
「なにエル!?」
エルはこいしのおでこにキスをすると、顔を赤くして、硬直してしまった。正気に戻るまで、エルは待つことにした。暫くして、正気に戻ったこいしは、顔を赤くしたまま睨んできた。
「何するの!?」
「ダメだったかな?外の時に、機嫌が良くなるおまじないで、教えてもらってたんだけど…」
「……誰から?」
「外の世界に住んでいた時に、親から教えてもらったよ。」
「………………親から?」
「他に誰がいるのかな?」
本当に、純粋な行動でやっていたようだ。エルの様子から、嘘だと思えないようで、こいしは溜め息をしてしまった。
「……………悪いこと……しちゃったかな?」
「……………ある意味、悪いことだよ。」
こいしは寝室から出ていってしまった。理由がわかっていないエルは、首を傾げるのだった。