気を失ったこいしを寝室まで運んだエルは、目が覚めるまで、こいしの傍にいた。さとりは地霊殿の仕事があるため、エルに任せた。
「……」
こいしの手を握り、目が覚めるのを待った。さとりが寝室に入ってくると、エルを心配している。
「少しは休憩しなさい。私がこいしを見てるから…」
何も喋らないエルだが、さとりは心を読んで、話続ける。
「余り、自分を責めたらだめよ。仮契約をしたのは、こいしの意思なの。だから、エル君は悪くないわ。」
無言のエルに話続けるさとりに、エルは立ち上がって、寝室を出た。少し、客室で休むようだ。
「こいしが目を覚ましたら、教えるわ。」
「…………わかった。」
客室に入り、ベットに横になるエルは、眠気が来たようで、そのまま眠ってしまった。
翌日。客室で寝ていたエルが目を覚ますが、動けないでいた。こいしが腕を掴んだ状態で、隣で寝ていたのである。
「こいし…起きて。」
「ん…エル、おはよう。」
こいしが目を覚ますと、エルはこいしの開かれているサードアイを見た。
「……開いてるね。」
「エルと仮契約した影響かも。一応、エルの心が読めるよ…いろいろと、我慢してきたんだね。」
こいしがエルを抱き締めると、最初は抵抗しようと思ったが、すぐにやめた。こいしの好きにさせたのである。
「……無理したらだめだよ。私達、妖怪なら頼れるよね?無理して、笑わなくても大丈夫だよ。」
こいしの抱き締める力が強くなると、泣くのを我慢していたエルは、我慢できずに泣き出してしまった。それを拒まないこいしは、エルが泣き止むまで、抱き締め続けた。
「……………ごめんなさい。」
「謝らなくて良いよ。」
泣き止んだエルだが、こいしの目の前で、思いっきり泣いてしまったので、恥ずかしくなり後ろを向いている。だが、こいしも心が読めるので、余り意味がない。
「………さとりさん。隠れてないで、出てきてよ…」
扉の裏側に隠れていたさとりが、部屋に入ってきた。エルを心配しているようだが、誤魔化されない。
「さとりさん。僕は、さとりさんの弟にはなりませんよ。一応、人間なので…」
「エル君は、人里の保護を放棄したのだから、妖怪になれるわよね?3人目の覚り妖怪として、地霊殿に、一緒に暮らさない?」
「それは、良いアイデアだね。お姉ちゃん!エルも一緒に暮らそうよ!」
「さとりさん、こいし…紫さんを敵に回すつもりなの?僕は、妖怪専門の何でも屋だけど、限度があるからね?」
エルの説得により渋々諦めたようだが、油断ならない。
「こいしの依頼は、さとりさんを外出させることだよね?そんなに、地霊殿から出てないの?」
「出てないね。私は無意識状態で、頻繁に出掛けてるけど、お姉ちゃんは50年近く地霊殿から出てないよね?誤魔化してもわかるからね。お姉ちゃん?」
「やっぱり、こいしのサードアイ、閉じませんか?」
「それなんだけど、仮契約を解除しても、こいしのサードアイは、閉じないよ。元々、覚り妖怪だからのと、こいしがトラウマで、能力を封印しただけだから。解除したところで、意味がないよ。」
懇切丁寧にさとりに説明したエルは、眠くなったので、ベットに横になり寝たのだった。