エル、さとり、こいしが居酒屋に入ると、ハチマキ、エプロンをしている鬼である居酒屋の店主、一鬼がエルとこいしの姿を見て、手を振っている。
「エルとこいしじゃねえか。宿泊だったな。居酒屋の隣に部屋があるから、泊まりな。これが部屋の鍵だ。」
一鬼がエルに鍵を投げ渡すと、仕事に戻っている。居酒屋を出ると、隣にある小さな家に入り、荷物を置いて寛いだ。さとりは落ち着かないのか、そわそわしている。
「落ち着かないね?」
「出掛ける必要がなかったので…」
「お姉ちゃんはこれから、毎日地底内を散歩してもらうからね。」
こいしに言われてしまったさとりは、信じられない表情で、こいしを見ている。
「こいしは私に死ねと言うんですか!?」
「外に出掛けるくらいで、妖怪は死なないよね?」
「いっそのこと、お姉ちゃんを無意識状態にして、外に連れ出そうかな。」
こいしの発言に、さとりは体を震わせている。エルからしたら、無理矢理でも出さなければ、さとりは何年も引きこもるだろう。
「今は13時だから、お昼はどうするの?」
「お昼は一鬼さんが、用意してくれるよ。」
「そうなの?」
さとりはエルの心を読んでいるが、何も聞かずに待つことにした。すると、一鬼が料理を運んできた。
「おでん、お浸し、塩鮭、白米、味噌汁…?」
「おでんは…ちくわ、大根、茹で卵だね。」
「おでんはサービルだからな。エル坊と嬢ちゃんは、ちゃんと食べないとダメだぜ。」
おでんは小鍋にグツグツ煮えている状態で、持ってきたようだ。さとりはちくわを食べる。
「熱々ですね……おいしいです。」
「茹で卵おいしいよ!」
「塩鮭おいしい…」
黙々と、料理を食べていると、さとりとこいしはお酒を飲んでいる。エルにも飲ませたいが、無言でお酒を下げた。心を読みながら無言で会話している。
「お腹一杯…」
「エルは食べなさすぎよ…」
塩鮭半切れ、おでんは大根とちくわ以外は、全部食べきれたようだが、明らかに少ない。
「これ以上は食べきれないよ…」
「たくさん食べないと、倒れちゃうよ?」
「こいし…山盛りの白米を食べたんだよ!?白米だけで、結構な量あったからね!?」
「男の子なら、たくさん食べないと。」
そう言って、さとりは小鍋から茹で卵をエルに差し出す。
「食べなさい。」
「……………」
さとりの無言で、茹で卵を近づけてくるので、諦めて食べた。
「…………御馳走様でした。」
「もう食べないの?エル…」
「勘弁してよ!こいし…」
エルは床に寝転ぶと、お腹一杯で眠くなったようで、眠ってしまった。その寝顔を見ているこいしは、料理を食べ終えて、エルの隣で寝転んだ。
「行儀が悪いわよ?こいし…」
「お姉ちゃんも、素直になろうよ?ほらほら!」
「……………仕方ないわね。少しだけよ?」
こいし、エル、さとりが、川の字で寝ているが、エルが目を覚ますと、両側にこいしとさとりが寝転んでいるので、少し驚いたがクスリと笑みを浮かべて、二度寝した。
数時間後。こいし、エル、さとりが欠伸をしながら目を覚ました。時間を見ると、16時になっている。
「エルは予定はないの?」
「……一鬼さんと戦闘する約束があったね。」
「人間と鬼が…戦闘するのはいいけど、地底を崩さないでよ?」
「壊さないから大丈夫だよ。」
余り信用していない様子のさとりは、起き上がると、こいしの体を起こした。
「エルが鬼と戦うの?炒り豆準備しないと…」
こいしが部屋から出ようとしたら、エルに腕を掴まれると、床に倒れそうになって、エルが咄嗟にこいしを抱き締めて、倒れるのを防いだ。
「大丈夫?」
「う、うん。大丈夫…」
顔を赤くするこいしだが、エルは気づいていないようで、部屋から出ていった。