蒼き雷刃のゼノグラシア ~灰かぶりの呪子と守る乙女ゲーシナリオ~   作:雨在新人

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一瞬だけ仮として置いておいた小説の作者名をホシノシア→星野井上緒へと変えています
変更前に読んだ読者様は申し訳ありませんが、『魔神剣帝スカーレットゼノン』の作者は星野井上緒だということでお願いします


演劇、或いは帰還

「アナ、この本がどうかしたのか?」

 事態についていけず、おれは首を傾げる

 

 「ああ、この本読みたかったとか、そういう奴か?」

 なら貸そうか?父さんのだけど、とおれは一旦本を閉じて……

 「そうじゃないです、皇子さま」

 否定の言葉に、まあそりゃそうだろうなとおれは頷き返した

 ストーリーは割とありきたりで、良く言えば王道。面白いと言えば面白いが……読んでた感じ女の子が好きそうな感じではない。アイリスだっておれが読んでたから聞いてただけで、自分では読むことはしないだろう

 

 「じゃあ……何?」

 「えっとですね、最近、このお話の劇があって、それが人気なんです」

 「劇」

 「そうそう。結構皆見に行っててさ」

 と、エッケハルトも付け加えてくる

  

 「お前は見に行ったのかエッケハルト?」

 「いや俺は……って思ってたんだけどさ、クラスの男子皆見に行ってやんの」

 全く、参るよなと肩を竦める少年

 「で、見に行ったと」

 「いんや、まだ。そのうち行こう行こうと思ってたら何か人気になってさ。席が即日取れないって言われた」

 「ん?辺境伯の子なら席作ってもらって入れるだろ?」

 「馬鹿ゼノ!そんなことしたら、俺がその芝居をすっごく見たがってる感じじゃんか

 あくまでも話題に合わせる為でだな……あんな子供向けは」

 少し口ごもる感じの少年に、案外見たがってるなこいつ?とおれは笑って

 

 「おれも、お前も子供だろ」

 「いや、そうなんだけどさぁ……分かる?」

 「いや全く」

 そこで話を切り上げて、おれは少女に顔を向けた

 

 「で、エッケハルトは良いとして……どうしたんだよアナ」

 「えっと……そのお芝居です」

 「芝居がどうかしたのか?」

 「院の皆が……あっ、みんなって言っても、男の子達だけなんですけど、噂で聞いて見に行きたいって」

 「あ、そう」

 何というか、だ

 おれに言われても困るというか。おれ自身、そんなに権力を振りかざせる立場にないというか

 「自分達で見に行ってくれ」

 「……えっと、わたしのお金で足りる事は足りるんですけど……」

 申し訳なさそうに銀髪の少女が呟く

 

 「いや、おれが出してる運営資金に余裕とか無かったのか?」

 「それが……。この1ヶ月、皇子さまが一回も来なくて」

 「おれが来なくて?」

 「何時もは皇子さまが今回はこれだけな、って言うのが無かったから、みんなつい誕生日にはご馳走をってやっちゃって……

 ご、ごめんなさい!」

 「いや、それは謝ることじゃないと思う」

 何度も頭を下げる少女を宥めながら、おれはそう言い続けた

 

 というか、まあ子供だものな、仕方ないと言えば仕方ない

 寧ろ、金が無いわけではないのに我慢できるアナが随分と大人びているというか……。おれはまあ、多分だけど合計で考えると20歳越えてるオッサンだから普通なんだけど

 

 「それで、その劇を見に行きたいって言うのは分かった

 お金ならおれに後で言って、見に行けば良いんじゃないのか?

 というか、本読めば良いんじゃないのか?」

 「皇子さま?わたしはちょっとお姉さんで、魔法の力が人よりちょっと強めだったからって早くに教えてもらえたから読めますけど、みんなはまだ文字なんて読めませんよ?」

 「ああ、そっか」

 忘れていた。おれ自身、ゼノとして普通に文字読めてしまっていたが、普通は習わなきゃ本なんて読めないわな

 「じゃあ、この本貸すからアナが読んであげるとか」

 「みんな、動いてるのが見たいって

 きっとわたしじゃ、声が女の子ーだとか、かっこよくなーい!とか、満足してくれない気がします」

 うーんこの贅沢

 

 「で、見に行くのは?」

 「なあゼノ、さっき俺が言っただろ?直ぐに席が取れないんだって」

 「……あれ本気だったのか」

 「そう。子供達……って何人?」

 「14人かな」

 「1ヶ月以上待ちだな、それだと」

 少しだけ遠い目をして呟くエッケハルト

 

 「何か、凄い人気だな……」

 「何でも、聖教国で始まった劇なんだけどさ、特撮……ってアナちゃんは分からないか」

 「何なんですか、エッケハルトさん?」

 「特撮って言うのは、本当じゃないものを魔法で加工してそれっぽく見せてあげる劇のことなんだ

 子供向けのそれって物珍しくてさ。一気に大人気だって」

 「あー、そういや劇って時折雷落としたり、あとは歌手の歌声を響かせるために魔法使ったりはあるけど、基本的にはあまり魔法使わないものな」

 魔法を多用するのは大道芸人というか、ストリートでショーしてる人々の方。格式高い演劇は、魔法は万能であるがゆえに魔法に頼らない事を信条としていることが多い

 魔法でも作れないもの、それは人の心であり心を揺さぶる物語。というのが脚本家の言であり、それを魔法をふんだんに使って演技されるのはぶちギレ案件と言われても可笑しくないだろう

 だが、此処に例外があったって訳だな

 そもそも、変身とかいう魔法ありきの設定で、尚且つ子供向けの話。格式だの伝統だの関係なく魔法ふんだん爆発大量、視覚効果に訴えたものを作ってみたところ、普通の演劇はつまらないしていた貴族子息に馬鹿ウケしたと

 

 「……1ヶ月待ちなのは分かった

 それで、おれに何をしろと?」

 そう、話はそこだろう

 1ヶ月待ち、そこが話の終わりだとは思えない

 ならばその先、何かをおれにやって欲しいから、アナはそれを言っているんだろう

 

 「えっと、皇子さま

 皇子さま、ゼノンをやってくれないかな?」

 「……は?」

 あのな、アナ?さっきわたしが読んでも女だし……って言ってたけどな?

 今のおれ、つまりゼノ(幼少期)の声優は茜屋 夏和子(あかねや かなこ)。名前の通り女性声優なんだが?

 おれが読んでも女の声なんだが良いのかそれで。せめておれの声が原作の八代 匠になってから言ってくれ

 というか、良く良く考えてみれば自分の喉からプロ声優の声が出るって凄いわこれ

 

 「アナちゃん、俺がやるよ」

 と呟くエッケハルトに、言葉は出せないので目配せをやってみる

 つまり……

 お前の声優も女性だろ、と。エッケハルトの声優は白 路美(はく ろみ)。少年声を得意とする女性声優だ

 「……良いだろ、ゼノ」

 「えー、だめだよー?」

 その声は、入り口から聞こえた

 

 聞こえる筈の無い、その声が

 「アステール?」

 「うん、そーだよー」

 ひょい、と顔を覗かせ、とてとてと覚束ない足取りで部屋に入ってきたのは、鮮やかな金髪の狐娘、アステールであった

 

 「いや、何で居るんだアステールちゃん」

 「あ、皇子さまとお話しした時の人!」

 アナの目が驚愕に見開かれる

 「……なあゼノ。あのときの俺全く事態に付いていけてなかったんだが、結局あの可愛い子、誰?」

 「……聖教国教皇の愛娘」

 「マジかよ……」

 ぽつりと呟くエッケハルト

 おれもその気持ちは分かる。いやだってな、ゲーム内では教皇の娘って話は出てくるけど登場しないし、外見とか性格とか境遇とか全く知らないんだよな

 分かるのは帝国に割と好意的かつ協力的であり、故にヴィルジニーを送ってきたって事だけだ

 「まさか、亜人だったとは……って思った」 

 「まさか、ヒロインやれる容姿とは……って」

 うん、エッケハルトは何時も通りだ

 

 「で、アステールちゃん」

 そう呼び掛けると、アナが少しだけ不満そうに顔を逸らし、エッケハルトがちゃん付け、と笑う

 「なんでエッケハルトじゃ駄目なんだ?」

 「えー?なんで、おーじさまの役をおーじさまじゃない人がわざわざやるのかなー?」

 「待て、おーじさまの役?」

 ……嫌な予感がする。いや、変な予感か

 井上緒……何て読むんだと思っていたが、い、うえ、お?いうえお?

 ア行からアを捨てたらイウエオな訳だが……ア、捨てる?

 いや、まさかね……

 

 「うん、この話ね、ステラが大まかなおはなし作ったんだー」

 「やっぱりそうかよ!?」

 井上緒でア行からアを捨ててるからア捨てーる。つまり、井上緒(アステール)

 よって、主人公のゼノンのモチーフはおれで、多分村娘のステラってのは……自分なんだろうなぁ……

 「いや、何で帝国に居るんだ?」

 「おーじさま、大変だったんだよー?」

 「いや、何が?」

 「おーじさまのためにおはなしを考えてー、国の人にそれを小説に書いてもらってー」

 いやお疲れ様です、その小説家さん

 「これでおーじさまと会えるねーって来たんだよ?」

 可愛らしく首を傾げる少女に、おれは何も言えなかった

 

 「……なあゼノ、何時も思うんだが……」

 「何だよエッケハルト」

 「これ、お前主人公のギャルゲーだっけ?」

 「ギャルゲー版の主人公はアルヴィスだろ」

 ……いやでも、七大天の話が本当だとすると、アルヴィスって他の神の干渉に対して来るのが遅すぎるからって来ないんじゃなかったっけ?

 「なーんかお前ばっか女の子に好かれんな、ゼノ」

 ぼやく言葉が、妙におれの耳に残った

 

 いや、何だかんだお前もアレットと交流続いてること知ってるぞエッケハルト?




『ブレイヴ!トイフェル!イグニションッ!
スペードレベル、オーバーロォォドッ!!
魔神剣帝スカーレットゼノン!地獄より還りて、剣を取るッ!』
魔神剣帝スカーレットゼノン

初登場作品:遥かなる蒼炎の紋章~英雄の旗の元に~
登場作品:~英雄の旗の元に~
     蒼き雷刃のゼノグラシア

基本設定
幼少期 髪の色:くすんだ銀 瞳の色:血色 身長126cm 体重:35kg cv:茜屋 夏和子(あかねや かなこ)/佐藤 香菜(さとう かな)
青年期 髪の色:くすんだ銀 瞳の色:血色 身長174cm 体重:62kg cv:八代 匠(やしろ たくみ)/阿部 篤(あべ あつし)

英雄の旗の元に
イベント、死霊祭と魔神の時計~忌み子は英雄になれるか~及びその続編である死霊祭と魔神の時計~Necoとの遭遇~に登場する謎のヒーロー。常に変身状態で現れ、事件を解決していく最初のヒーロー。その正体は誰も知らない
という形で劇中劇に登場するキャラ。その正体はcvからも分かるように第七皇子ゼノ。劇中劇の為、おまえ忌み子だから変身とか無理じゃない?という疑問もなく、普通に変身できるらしい
キャラクターとしては~忌み子は英雄になれるか~イベントで配布される星4キャラクター、スカーレットゼノンとして入手可能。お芝居の中のキャラだからか、キャラクターとしてはゼノとして扱われない他、劇中劇のキャラ故か、普通に魔法防御を持つ。その為、魔法防御をかなぐり捨てているが故の高火力はなく普通のキャラである。他の魔神○○は全てガチャ限定である為、一回り弱い


蒼き雷刃のゼノグラシア版
謎の作家星野井上緒(アステール)によって書かれた小説、『魔神剣帝スカーレットゼノン』。或いは同作の主人公の変身形態のこと
亡国の皇子であったゼノンは、祖国が滅びる際、祖国を滅ぼした魔神によって殺されてしまった。だが、彼はその魔神の力の一部を取り込んで蘇り、何時か祖国の仇を撃つために今日も戦うのだ!というストーリーのヒーローもの
ヒーローとしての姿はフルフェイスの仮面にマントを翻す竜モチーフのスーツ姿。そのせいか主役が演技しやすくて劇が作りやすく、子供に人気を博したとか

因みに、モチーフは当然ながらデュランダル装備時のゼノ。おーじさまポジティブキャンペーンとしてアステールが考えたヒーローなので当然である

変身条件:自身のHPが最大値の60%以下であり、周囲3マス以内に絆支援レベル:C以上のキャラクターが存在し、守護レベルが10以上で同一のバトルマップに存在する敵軍の真性異言(ゼノグラシア)の転生特典ランクの合計が8以上である場合に出現するコマンド『変身!スカーレットゼノンッ!』を選択する
変身効果:轟火の剣デュランダル:ゼノを召喚し、装備する(決意と覚悟の纏炎は発動する)

守護レベル:隠しパラメータ。守るべき者が多く、そして危機的状況であればあるほどに上昇していく。街が3桁の魔物に襲われているくらいで10に到達する。最大値は21。半端な数値なのは、七大天による一人3ポイントの投票制だからである
転生特典ランク:隠しパラメータ。真性異言の持つ特典を強さに応じてランク付けしたもの。1から始まり、8が最大。七大天がそれぞれ1ポイントを投票して決めており、8は即時満場一致、マジものの規格外の事を指す
今まで出てきた特典としては……エッケハルトのものが1、謎の少年の刹月花が3、アガートラームが8。EX-カリバーン(エクスカリバー)単体の場合3といった形。つまり、規格外のバケモノか、条件無視の神器持ちが3人くらいで条件を満たせる

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