蒼き雷刃のゼノグラシア ~灰かぶりの呪子と守る乙女ゲーシナリオ~   作:雨在新人

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相変わらずメインヒロインは?と聞かれて男が、トップの図

頭始水or頭アナちゃんが多いですね……。まあぶっちゃけ、作者的にもそう答えて貰いたくてこの作品やってる訳ですが


幕間 宰相と馬

帝国宰相、アルノルフ・オリオール伯爵が皇帝の執務室に呼ばれたのは、夜も遅い頃であった

 

 「失礼します、陛下」

 そう2度のノックをして、返事を待たずに部屋に入る

 呼び出したのは他でもない幼馴染の皇帝。入るのを待っていたら、呼んでおいて入るのに礼儀も何もあるか、と小言を言われるだろうと分かりきった行動

 それにだ。呼び出された場所は執務室。謁見を行ったりする公の場ではなく、基本的に大まかな方針を決めるのが実務の皇帝が、政の大半は(オレ)が口出しするようなものではないからこれで十分、と本来の大きな執務室を臣下に譲って勝手に使っている小さな部屋だ

 其所に呼ばれるのは、大体プライベートな話。前に呼ばれたのは……と、宰相を勤める彼は思い返す

 確か、馬鹿息子が見ず知らずの孤児を救うために孤児院を買いたいそうだ、書類手続きを教えてやれ、と馬鹿を言われたあの時だ

 

 ならば今回も個人的な話だろう

 そう分かるからこそ、その扉を開き、机1つに椅子1つのその部屋に足を踏み入れる 

 

 「陛下、何度も申し上げていますが、宰相は呼べば来るモノ扱いは止めていただきたい」

 それだけの信頼があるとは分かっている。判断を迷った時、お前の意見を聞いておこうと思ってな、と言ってくるのは……それだけ、かの皇帝は宰相を信じている証拠である筈だ

 だが、だからこそだろうか。諦めの良い伯爵家の三男坊とあまり期待されていなかった皇子であった頃のように、軽く文句の1つも言う

 

 「そう言うなアルノルフ」

 「では、重要な話なのでしょうか」

 「……分かっているだろうに聞くか?

 真実大事であれば、当に耳に入っているだろう?それに、呼び出すのも公の場だ」

 「……明日より暫し、久し振りにイヴと海に向けて出立するので早く寝ますと言っていた筈ですが」

 「まあ、そう言うな。その分、娘が行きたがっていたらしいが遅かったと言っていた、龍海の生き物ツアーのチケットくらいならばくれてやる」

 と、皇帝は机の上にある封筒を手に持ち、軽く振った 

 

 「……陛下。用とはひょっとしてこれですか?」

 「そうだが?」

 あっけらかんと言う銀の髪の男に、宰相は有難いとはいえこの皇帝は……と、複雑な気持ちの笑みを浮かべつつ、封筒を受け取るために机に近付き……

 

 「陛下、それは?」

 漸く、ソレに気が付いた

 いや、漸く、ソレについて話をする気になった

 

 宰相の目の前で、皇帝の手によってその四肢の最中に縦に封筒を持たせられた……デフォルメされた馬のぬいぐるみ

 皇帝の机にも、豪奢な作りの石の机にも、そもそも大の大人の机にも相応しくない、ソレ

 

 だが、封筒をソレにからめられたからには、言及しない事は出来ない

 「コレか?まさか、知らんのか?」

 お前がか?と見てくる銀の皇帝に、いえ知ってはいますが、と宰相は肩を竦める

 「陛下の愛馬。エリヤオークスのぬいぐるみでしょう?

 確か、伝説馬列伝復刻版の」

 「知っているじゃないか」

 「いえ、分からないのは、何故こんなものが此処に?」

 その言葉を待っていましたと言わんばかりに、男の唇がニヤリとつり上がった

 

 「あの阿呆が、生誕の祝いとして贈ってきた

 傑作だろう?」

 「傑作ですね、それは」

 その言葉に宰相も同意する

 傑作としか言いようがない。とても、皇帝への贈り物にも、皇子の贈り物にも思えない

 

 「全く……庶民か、あの馬鹿は」

 「庶民派皇子と言えば聞こえは悪くはないのでしょうが、贈り物の感性が庶民ですね」

 「だろう?実に笑える話だ。これが、(オレ)に向けた大真面目なプレゼントだとさ」

 くつくつと笑う男に、宰相はそうですね、と相槌を打ちつつ封筒を取る

 「良かったですね、陛下」

 

 「……何だ、引っ掛からんか」

 「ええ、当然。何年の付き合いですか」  

 「33だな」 

 「それで引っ掛かるほど、耄碌も疲弊もしていませんよ」

 「ふっ。だろうな」

 

 ……そう。罠だ

 だってそうだろう。馬鹿かと、庶民かと言いつつ、彼はしっかりその愛馬のぬいぐるみを、其所に飾っているのだから

 この皇帝が、気に入らないものを側に置いておく筈もない。つまり、何だかんだ阿呆と言いつつ、それを明確に贈り物として気に入っているからこそ、彼はぬいぐるみを置いているのだ

 

 そして、カマをかけた

 「誰か、引っ掛かりましたか?」

 「駄目な方の息子が一人な

 全く、嘆かわしい。この(オレ)が、好かんものを唯々諾々と近くに置くような男だと息子に思われていたとはな」

 「おや、誰です?」

 「贈り物が笑えた方のもう一人だ

 国への貢献を贈り物にとおべっかを使おうとして、(オレ)が当に誰かやらんのかと見ていた国営のあそこの改修工事への着手を気づきつつ遅らせていてな」

 「ああ……」

 その言葉で気が付く

 第三皇子だな、と

 

 「そろそろ着手した事が、民に、国に貢献した事が貴方への贈り物と言える時期という頃に、あの馬鹿に唆されたアイリスに先を越されてな

 結果、プレゼントは面白くもないもの。笑えん方の傑作だ

 

 後な、あの2頭、そっちでない馬鹿息子が暫く使うそうだ」

 「……馬鹿息子自慢は兎も角、そっちは大事なので早く言ってください」

結局のところ、この物語のメインヒロインは誰のように見えますか?

  • アナスタシア・アルカンシエル
  • アルヴィナ・ブランシュ
  • アイリス・ローランド
  • アステール・セーマ・ガラクシアース
  • ニコレット・アラン・フルニエ
  • エッケハルト・アルトマン/遠藤 隼人
  • ヴィルジニー・アングリクス
  • ティア/金星 始水
  • ゼノ/獅童 三千矢
  • その他

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