蒼き雷刃のゼノグラシア ~灰かぶりの呪子と守る乙女ゲーシナリオ~ 作:雨在新人
「え、えっと……」
何て言って良いのか分からずに、わたしは混乱する
「陛下、その亜人は」
「……眼を見て分からんか?
馬鹿息子よりマシな境遇だろうと言ったら表に出てきたコスモの娘だ。『セーマ』の一族、扱いを間違えると怖いぞ?」
「きょ、教皇の!
失礼しました!」
びしり!と態度を変える騎士団の人
「ふっふっふー、ステラのおともだちに酷いことしないでほしいなー」
「……分かりました」
わたしを拘束する手が緩む。けれど……
「しかし、犯罪は犯罪。あまり目こぼしする訳にも」
わたしをゆるく囲むように、周囲に騎士さんが集まるのまでは止められない
「で、この銀髪娘等が何をやったと?
犯罪と言うならば、
焔の眼が、団長さんを見据える
恐れに半歩下がりながら、騎士団長さんは口を開いた
そして……
「馬鹿息子の敵前逃亡による許可凍結、不法居住の立ち退き拒否諸々、か
そこまでするほど妹が怖いか。あの馬鹿の叫んだプリンス・オブ・チキンハートは結局変わらなかったと見える」
事情を聞いた皇帝陛下は、ひとつ溜め息を吐いた
「助けて、くれますよね?」
そんな皇子さまのお父さんを、わたしは見上げて……
「助けん。これはあの馬鹿の……アイリス派の起こした自業自得。それに介入しては、皇帝として皇位継承者へのある程度の公平が保てん
アイリス一派に対してだけ肩入れする訳にもいかんのだ」
「でもっ!」
「分かれ、皇民アナスタシア。これは、皇族同士での皇位継承権順位を巡っての派閥闘争の一環だ
この事態を招いたのは、アイリスを快く思わん兄姉が多いことを知りながら、自分がアイリスの味方である事で思考停止し、彼等と交流して敵を減らそうとしなかったあの馬鹿だ。落ち度は
静かな瞳が、わたしを諭す
皇子さまが言うような烈火の熱は無くて、けれども恐い瞳が、わたしの心を焼いていく
「故、
友人に後を頼んでいたようだが、詰めが甘い。いや、あやつ……お前の大事な皇子さまからしてみれば、相当大事に護ろうとしたのだとは思うが……
政治的な事への対応がなってないにも程がある。良い薬だ」
……恐い
あっさりとわたしたちを皇子さまのミスだからって言いきる彼は……
「……でだ、阿呆狐
馬鹿息子ならこの辺りで口を挟むが、このままで良いのか?」
「んー?ステラ、何か言っていいのー?」
「言わんなら
「おっけー」
良く分からない会話の後、アステールちゃんはわたしの方を向いて、尻尾を振った
「ちょっと……
おーじさまのおとーさん、ちょっと演技してー」
「
半眼の皇帝陛下
けれど、一つ咳払いをすると、わたしを見て……
「成程、これが不法占拠の犯罪者か」
「ちょーっと待ったー!」
大袈裟な仕草で、わたしと皇帝陛下の間に割って入ってくるアステールちゃん
「何者だ」
って、案外ノリ良いのかな?皇帝陛下は、絶対に知っているはずのアステールちゃんに向けて、そんな事を言う
「ふっふっふーっ!よくぞ聞いてくれました
ステラはねー、七大天さまの代理人だよー?」
「で、その七天教が何の用だ?」
「はい、めんざいふー」
って、アステールちゃんは何時の日かねだって買って貰っていた……後で皇子さまがわたしにも色ちがいのものをくれたポーチの中から、一枚の魔法文字の書かれた紙を取り出した
「免罪符?」
えっと……罪をめんずる?ってことは分かるし、習ったと思うけど……どんなものだっけ?
そんなわたしの疑問に気が付いたのか、アステールちゃんは自慢げに耳を立てて解説してくれた
「めんざいふっていうのはねー
七天教のえらーいひとが発行するすっごく強い効果のおふだー!」
「神への奉仕、神の保証の名をもって、人に対するありとあらゆる罪を購う、七大天を信ずる全国家の法規を超越した免罪
子供にも分かるように言えば、『この人は悪いことした人だけど、これから心をいれかえて神様の言葉を信じて神様の為にご奉仕します。だから、みんな許してあげてね』って物だな」
そうなんですね、とわたしは頷いて
「あれ?ひょっとしてですけど、その免罪符で許される罪人って、わたし?」
「そだよー?」
何で聞くのー?と小首を傾げるアステールちゃん
「ステラねー、龍姫様から一度腕輪を通して力を貸してあげた女の子が辛そうな目に逢うから免罪札持っていってあげてねーって言われて、じゃあ仕方ないよねーって来たんだ」
「えっと、それを受け入れるとどうなるんですか?」
……また、皇子さまに逢えるの?みんなと一緒に居られたりするんですか?
「みんなと、まだこの孤児院で成人して一人立ちするまで……」
「あー、ごめんねー
めんざいふってそういうのじゃなくて、教会の人になって神様の為に働くから今までの罪は無かったことにするよーってだけだからー、この孤児院はなくなっちゃうかなー」
そんな言葉に、わたしは……捨てられて、物心付いた頃からアイリスちゃんのメイドやってた3年以外はずっと暮らしてきた建物を見る
アイリスちゃんからもらったお給料で入れ換えた窓や、皇子さまが作ってくれた遊ぶための組み木の登れるオブジェ。
それらは懐かしくて、愛しくて
……でも、もう無くなってしまうって思うと悲しくて
「……陛下。連れてくるように言われた者達を免罪でかっさらわれたとなると」
「そもそも、連名した本人等はどうした」
口を挟む騎士団の人の言葉を、皇子さまのお父さんはばっさりと切り捨てる
「ああ、出てこんか。まあ、当然か。潰す側も不名誉を被る可能性がある
……間違ってはいないが、普通の帝王学に染まりすぎたか?」
「……は?」
「この孤児院を潰そうとした息子達に言っておけ
『孤児院は構わんが、そこに暮らしていた子供達は、
「……はっ!」
敬礼して一言言うと、わたしの包囲を解く騎士団の人達
わたしは、漸く解放されて……
「……えっ、と?」
「孤児院を護れんのは自業自得。其所に
だが、お前達民までも見棄てると言った気は無いぞ?まあ、今回はそこの狐が免罪しに来たようなので、それはそれで構わんが……」
と、皇帝陛下はちらりとアステールちゃんを見た
「……ああ、あの馬鹿息子に何だかんだ大事にされているからといっていたぶるなよ?
あの馬鹿、そういう事は嫌いだからな」
「えー、ステラ、おーじさまのためにならないことしないよー?」
「……なら良い。仕事に戻る
良いか、皇猿騎士団。そこの狐娘は、教皇の娘だ。下手なことの無いようにな」
それだけ言うと、皇帝陛下の姿は焔に包まれて消えた
「あの、アステール、ちゃん?」
皇帝陛下の姿が消えた孤児院前
騎士団の人達はまだ居るけれど、皆を連れ出してはいくけれど、そんなに乱暴な事はしていない
「ふせーじつだよね、おーじさま」
そんなわたしに、ぽつりと、少女は同意したくないけど同意しか出来ないことを呟いた
「ステラじゃだめだよーって、言わなきゃいけないのにねー」
「そうですか?」
「そーだよ?他に好きな人がいるーでも、ステラの事がきらいーでも、亜人はだめー、でもなんでも良いけど
『大事だから駄目』って理由になってないよねー」
それに、わたしは大きくうなずきを返した
「自分は傷付くから駄目って、なんですか!わたしは役に立てないんですか!って思っちゃいますよね、あれ」
「それで誠実に縁を切ったと思ってるんだから、おーじさまっておばかだよねー
言葉の外で助けてほしいって、未練を残してほしいって言ってるようなものー。ステラがそれで諦められる訳無いのにねー」
「えっと、それで?」
でも、この話とアステールちゃんの行動が結び付かなくて
「だからねー、ステラ、おーじさまのおよめさんとしておーじさまのミス?のふぉろーをしに来たんだー」
って、アステールちゃんはどこか無邪気に笑った
ヒロインから不誠実だとボロクソ言われるゼノ君の図
実際、あれで断ってると思ってるのゼノ君くらいですからね……