蒼き雷刃のゼノグラシア ~灰かぶりの呪子と守る乙女ゲーシナリオ~ 作:雨在新人
「はい!まずはみなさんで自分の能力を語るべきだと思うんです」
貰ったスタンプ帳を胸元に抱き抱え、リーダー風を吹かせようと少女が彼女的にはそれなりに声を張り上げる
「これからオリエンテーリングですし、得意なことーとか難しいことーとか、分かってた方が協力出来ますし」
「いや、要らなくない?」
と、ぼやくのはやる気の微妙なエッケハルト。アナと折角同じ班な割に表情がだらけていて、体も警戒が抜けている
「いやどうしたんだよエッケハルト。アナに良いところ見せたくないのか?」
「いや、それさぁ……」
半眼の視線がおれを射抜く
「大概お前一人で何とでもなるだろゼノ。だから面白くないの」
「何で参加してるの」
と、追撃のアレット。中々に辛辣だが……
「まあ、そうね。例えば鳥は本来は飛んでいるところを魔法で追跡して、特定の場所で暫く休ませているところを……って想定なのだけれども。アナタ、飛んでる最中を撃ち落とす気でしょう?」
ちらりと横目でおれの背の弓を見て、エルフ少女が呟く
「基本的に、入ったばかりのまだ若い皆が力を合わせればクリアできる難易度にしてあるのよ。だから、アナタやあの青い髪の子……ライオならごり押しで正攻法無視でなんとか出来てしまう
それで力を合わせるなんて……茶番劇になるしかないのよ」
「だろ?」
「だから、加減してくれる?と言っていたのだけれどもね」
「それに、ちょっと危険な事をしたら取れるなら、わたしは皇子さまに危険なことをさせたくないです」
と、銀の髪を少女は揺らした
「ええ、ワタシと同じこと。手を借りても良いけれど、あまりルール無用の化け物を活用せずに頑張るなら協力も要るでしょう?」
そんな言葉に、おれは何だかなぁと頬をかく
「そもそも、おれはスタンプの在処を探す魔法とか使えないぞ?
そりゃ竪神なら索敵フィールドみたいなものを張れば一発で見付けてそのまま取ってくるとか一人で全部出来るかもしれないけれど、おれは無理だ」
ってか、本当に万能だな頼勇。スーパーダーリン担当とか欠点無さすぎて逆に攻略出来ないとか言われただけはある
「だから」
「まあ、私は導きの鳥。その気になれば幾らでも探せはするのだが」
と、静かにシロノワールがカラス姿に戻りながら告げた
色々と台無しだなオイ!?折角おれのごり押しが問題視される中、場を和ませようとおれに出来ないことを挙げたのに……
「……とはいえ、露骨に手を貸す気はない」
詰まらなさそうに影の中に消えようとする八咫烏と
「シロノワールさん、それはそれで駄目ですよ?
協力です。わたしは、貴方の事も知りたいですし、今は一緒に頑張るメンバーなんですから」
その三本足のうちの一本を腕輪を着けた右手で掴む少女
おれの中の影に消えようとしていたカラスは影に消えることは出来ず……
「聖女がそう言うならば」
金髪の超イケメンに姿を変え、脚を握られていたのを手を繋いでいる状況へと変換しながらそう微笑み返した
「むーっ」
「むくれてないで行けよ、エッケハルト」
と、おれは少し離れて敵愾心を燃やすエッケハルトを焚き付ける
おれ自身はアナが誰かと幸せになってくれる事は願ったり叶ったりって状況だ
やはり友人であり転生者の
例えその相手が魔神でも何でも。幸せになれるならおれが口出しする問題じゃない
「でもさ
というかゼノ、あいつ何なんだよ突然現れてさ!」
「おれに手を貸してくれている、未来を導く八咫烏だよ」
元々は魔神の導きの鳥でラスボスなんだけどな。でも、今だけは……彼自身の言葉の端々から感じた想いや、何よりカッコつけて向かったものの逃げ帰ってきた時に
少なくとも、共通の敵に対しては手を取り合えると。いや、それを考えたら……聖女堕とすと言ってたし、これは止めなきゃだめか?
でも、聖女を信じるから手出ししないって約束したしな。それを破るわけにもいかないだろう
「……なーんか気になるんだよなぁ……」
ぼやくエッケハルトだが、何だろう、正体には気が付いていないのか?
「ゼノ皇子?」
と、不思議そうに見上げてくるオーウェン。彼は気が付いていたが……
その割におれは疑ってかからないな。露骨に疑わしいと思うんだが
「いや、大丈夫だオーウェン」
おれは頷いてどこか仔犬感ある少年に笑いかけた
「ってことで、分かるとは思うがゼノ、第七皇子で属性は無し。魔法は全く使えないが、単純に物理的な性能ならゴーレムより上。人間サイズで速くなったアイアンゴーレムくらいのイメージでいてくれ」
と、最初に語るのはおれ
「シロノワール。見ての通りの八咫烏で、影属性の力をある程度使える。神の加護で、普通の個体とは違って魔法も多少」
とはシロノワール
いやお前魔神王だから当然だろ、種族からして違うとなるが、自分から誤魔化してくれる辺り有り難い
「あ、わたしはアナスタシア・アルカンシエル。腕輪の聖女様って呼ばれてます
あんまり攻撃とかそういった魔法は得意じゃないんですけど、一応水と天属性で、癒しは得意です」
「そのおっぱいで?」
じとっとした目はアレット
「そ、そういうえっちな事じゃないですよ!?」
あわあわととたんに余裕が消えるアナ。ぶんぶんと胸元で手を振って否定するが……
それで揺れる胸をエッケハルトがガン見しているのが何というか、うん
そんな友人の腕をつねり、正気に戻させる
「あ……」
少し残念そうな声
「しっかりしろお前」
「あ、ああ。俺はエッケハルト・アルトマン。知っての通り炎属性。炎に関してなら大概扱えるんだけど、他属性は無理」
「私はアレット・ベルタン。魔法は……自己強化ばっかりだけど、盾で守りは万全
今回は……守りがあんまり使えない気がするけど」
まあ、危険は無いだろうしなと頷いて、最後に残った少年の肩を叩く
「僕は……オーウェン。姓は無い」
少し寂しげに呟く少年
「おれも無いぞ?」
「わたしも元々ありませんでしたよ?」
と、フォローの言葉が少女と被る
「えへっ、気が合いますね皇子さま?」
「いや、姓が無いのは皇族と一部平民くらいだから、それがたまたま被っただけだろう」
ちなみにシロノワールは本名テネーブル・"ブランシュ"だから姓があるんだよな
「い、いや大丈夫だ。寂しい訳じゃない」
と、少し引き気味に少年は告げて、言葉を続ける
「僕の属性は……重/雷」
「エッケハルト、重力って土属性派生だっけ?」
真面目に授業聞いてた覚えはあるんだが……魔法の授業とか内容結構忘れてるなと苦笑する
「え?そうじゃね?」
と、青年は興味薄げに答えて
「……影魔法だ」
「主に影属性ですよ?」
「ふげっ!?」
撃沈した。うん、好きな子の前で適当言って訂正されるとか情けないよな
「影はシロノワールも使えるけど、雷属性は一人か」
うん、視線が明らかにおれの腰の雷の神器に向いてるけど無視!
「あまりおれは無茶させて貰えないらしいし、頼りにしてるぞオーウェン」
と、おれは誤魔化すように告げたのだった
「それで、あの可愛らしいエルフの人は?」
「あれはノア・ミュルクヴィズ先生。天/火属性だけど見てるだけで手伝ってはくれない」
「今まさにゼノ皇子の頭の上に飛び乗ってきたのは?」
「これはアイリス。おれの妹で土/火/鉄属性のゴーレムマスター
というか……」
てい、とおれは頭の上で丸くなるオレンジの猫を
『うにゃう!』
「うにゃう、じゃないアイリス。ちゃんとゴーレム動かしてオリエンテーリングの障害をやってくれ」
アナちゃん耳かきAMSR計画を本格始動させました。声の方のスケジュールとか色々とあるので2~3ヶ月ほどはかかりそうです。
また、恐らくですが、cvは半ばネタで設定に書いていた上s……光坂菫ではなく、声優の犬塚いちご様になるかと思います。
ということで、アナスタシア・アルカンシエル【少女期】(cv:犬塚いちご様)による耳かきAMSR、多分きっとそのうち無料公開します。