蒼き雷刃のゼノグラシア ~灰かぶりの呪子と守る乙女ゲーシナリオ~   作:雨在新人

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偽物、或いは魂

「じゃあ、ステラ一旦帰るね、ばいばーい!」

 「ああ、またなステラちゃん」

 元気よく手を振り、ついでにふかふかの尻尾も左右に振りながら時折振り返りつつ遠ざかっていくコンタクト少女

 「今度はアステールと呼ぼうか?」

 「うーん、今更でもちょっとうれしーけど、これで慣れてるからステラのままがいーかな」

 そんな事を告げて去っていく狐少女

 

 それを見送って、おれは小さくふぅ、と気を抜いて息を吐いた

 「あ、終わったかなゼノ君」

 「リリーナ嬢、一人では……」

 「にゃにゃぁ」

 ツンとした態度の猫が鳴き、おれは仕方ないなぁと自身の頬を掻いた

 

 「アイリスが居るならまあ良いか。で、だリリーナ嬢。何かおれに言いたいことがあって来たんだろ?」

 何となくおれも想像が付いていて、出きる限り優しく微笑みかける

 

 「うん、そうなんだけどさゼノ君

 あの娘ってゼノ君が教えてくれたステラって娘だよね?」

 「まあ、対外的には」

 「アステールって呼んでやってくれってゼノ君が言ってた、教皇の娘さんな狐亜人。ユーゴ君が狙ってるらしい、私の知らない作品での彼の恋人」

 「……まあ、多分な」

 ちょっぴりごまかすおれに何か変だよともごもごしつつ、桃色の原作主人公はおれを見上げた

 

 「うん、でもさ。ゼノ君から話を聞いたあの娘にしては、何か変じゃない?

 ほら、私って好感度見られるんだけど……」

 「やっぱり、おれへの好感度がマイナスだったか?」

 「いやいやいや、マイナスって有り得ないって!あの態度でマイナス入ってたら可笑しいどころの騒ぎじゃないっていうか、超演技派過ぎるよ」

 全くーとブンブン振られる首と手

 

 「というか、何でマイナス?ゼノ君はあの娘と距離を取らなきゃってちゃんとフッたって思ってるから?」

 「思ってるって何だリリーナ嬢」

 思わずちょっと目を細めて突っ込む

 

 「え?ゼノ君さ、勝手に嫌われるのは大得意だけど……自分から縁切るのって苦手でしょ?」

 「いや、そんなことは」

 「ゼノ君の思考回路的には距離取ったはずのあの銀髪聖女とか見てから言って欲しいかな」

 ……ぐぅの音も出ないとはこの事か

 

 「だからさ、ゼノ君の話を聞いてる限り、ゼノ君への好感度ってまぁ滅茶苦茶に高いんだろうなーって思ってたんだ

 でも、予想してたより相当低かったんだよね。だから、可笑しいなーって」

 「それ、幾つだ?」

 「ゼノ君はどれくらいだと思う?ちなみに、私の予想は40近いってところだったんだよね」

 小首を傾げ、小さくおれの手を取る少女に、何か不安事項があるんだろうなとさりげなく位置を変えてステラが消えた方向を体で塞ぎつつ、おれは少しだけものを考える

 

 「……10前後」

 「流石にゼノ君よりはちょっと上だよ?

 って言いたいんだけど、ゼノ君あの娘苦手なのかちょっと他人より低めに出てるんだよね」

 ……いや、そうなのか。リリーナ嬢はおれは誰に対しても10台とフラットだと言っていたが……それより低かったのか、あの時のおれの態度

 

 ……バレたか?

 

 「ってそれはそれだけど、あの娘からの好感度は+20。低くはないんだけど、あの態度を取る相手への好感度じゃないよ?」

 「やっぱりか」

 「多分、ゼノ君があの娘をステラって呼んだせいもあるんじゃないかなと思うんだけど……

 というか、ゼノ君ちょっと変じゃなかった?何であの娘をステラって呼んでるのさ、自分で蔑称だからアステールと呼ぶべきだと発言しておいて」

 その言葉に、周囲に何もないか警戒しながらおれは頷く

 

 「その通りだよリリーナ嬢。アステールはアステールと呼ぶべきだ」

 「今さっきステラって呼んでた!」

 「アステールは、な」

 少し屈んで地面に手を伸ばし、妹猫の通り道にする

 意図を汲んだ猫ゴーレムは、おれの右腕を伝ってそそくさと肩にまで登ってきた

 

 「アイリス、あいつゴーレムだったか?」

 「ん?」

 「リリーナ嬢。アステールは教皇の娘だ。君だってさ、流石に聖教国の枢機卿や教皇一族にのみ現れる神の象形の事は知ってないか?」

 「えっと、オリハルコングラデーションとか?」

 「ああ。そういうものの特徴は?」

 「魔力に染まらない、誤魔化しがきかな……」 

 あ、と口を開けてぽんと手を打つリリーナ嬢

 

 「じゃあ、一番目立つ瞳の中の星って、本来ゼノ君から貰ったカラーコンタクトしても、貫通して外から見えてないと可笑しい?」

 「その通りだ」

 「つまり、ゼノ君があの娘をステラって呼んだのって……」

 「あれはアステールじゃない。自称アステールだ。それで、アイリス。あいつはゴーレムだったか?」

 『にゃにゃぁ……』

 この鳴きかたはそれっぽいけど確信は無いってところだろうか

 「そうか、有り難うなアイリス

 ……一応、中身がアステールって可能性は残るか……」

 

 少なくともあの肉体がアステールのものでない事は間違いない。おれがステラと呼んでも寂しさを感じさせない等の性格の違和感からして中身も別人な気がするが……他人の変装ではなくゴーレムならば、アイリスみたいに本人が本人の姿のゴーレムで安全圏に籠ったまま会いに来ている等の可能性は消えない

 っていうか、他人がアステールに化けるなら化けるで逆に変だ

 

 「というか、明らかに可笑しい。おれがずっとアステールをアステールと呼んでいた事は周知の事実。なのに、ステラ呼びに何も反応しないから探りを入れたら、『昔からそうだよねー』と返してくるんだよ

 逆にさ、変装してアステールのフリしてる奴がそんなところ間違えるか?」

 「じゃあ、何なのかな?」

 「いや、それが二人きりになっても上手く聞き出せなかったんだが……」

 駄目だな、と苦笑する。おれはそういうの苦手だ

 といっても、敵だった場合に困るからリリーナ嬢等に手伝って貰う訳にもいかなかったんだが。特にアナとか、隠し事あんまり得意じゃないからな、疑ってるのが筒抜けになりすぎるし

 

 「うーん、困ったね」

 「困ったな……ステラ、君は一体……誰なんだ」

 

 たったひとつのヒントは、ぽつりと言い残された一言。魂のSEELE

 だがそれを知る者は、此処には居なかった

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