蒼き雷刃のゼノグラシア ~灰かぶりの呪子と守る乙女ゲーシナリオ~ 作:雨在新人
すっとおれを見据える青髪の青年の茶色い瞳。澄んでいて鋭いそれをじっと見返しながら、少しだけおれは探りを入れる。
「竪神。それは良いんだが、かなりいきなりだな」
「確かにそうだな」
「少し前、ダイライオウの調整がって言ってなかったか?」
頷く彼に、おれは問い掛ける。
オーウェンから託されたデータの中に入っていたのは、一つの設計図。名を……ジェネシック・ダイライオウ。
まあ、元々竪神とアイリスが中心となって作っていた支援機及びその全合体形態であるダイライオウ自体、LI-OHのフレーム内部に残されていたデータをサルベージして作っているところがあるから、実質完全版ダイライオウだな。
とはいえ、そんなもの一朝一夕に完成させられる筈もない。元々作ってあった支援機の合体時に相互干渉で強化する筈がうまく行かないコネクト部分等を調整している段階だ。正式な設計図に基づいた機体はまた別開発中。まだまだ完成は程遠い。
だからこそ、今の頼勇ってLI-OH本体、そして5年前に完成したHXS以外の機体での訓練ってあまり言い出さなかったんだが……
「ああ。事態が変わった」
「屍の皇女関連か。だけれども、そこまで急がなくても良くないか?」
アルヴィナ相手にダイライオウで一気に決着をつけに行くと言われたら、上手いこと事態を収められない可能性が出てくる。だからおれはそう聞くんだが……
「皇子、父さんに今まで出会った魔神に関して魔力データを取って貰っていたんだが……殆どの個体が、同じ魔力波形の部分を持っていた」
「魔神の共通点か?」
が、彼は首を横に振る。
「いや、例外は二体。あの狼の魔神達……ルートヴィヒ・アグノエルの使役していた死霊だ。
つまり、魔神の共通波形でないのは確かだ。なら、四天王の影を含むほぼ全個体は……同じ魔神の下にある存在だという事になる」
……良く気が付くな頼勇。ノーヒントだっていうのに。
確かに全部アルヴィナの死霊だからな、それで正解なんだろう。
「つまり、あの屍の皇女が全ての魔神の影を作っていた。ならば、決戦の際に同じだけの戦力を投入してくる可能性は十二分に考えられる」
ぎゅっと握られる青年の手。
「そう、エルクルル・ナラシンハを含む四天王のような!
ならば!LIO-HXじゃ足りない。少し無茶だとしても、あれだけの戦力に対抗するならば、ダイライオウを完成させなければ!」
……いや、アルヴィナ負けに来るんだからそこまで本気で戦力集めないと思うぞ?
と言いたいんだが……これを言うわけにはいかないし、ある程度本気っぽい戦力を整えてないと流石に幾らなんでも露骨すぎるだろうから心配は最もだ。
「前に出会った時は人々が少なかった。だが、予告された決戦の地は他国との交易都市。
避難の必要性を語ったとして、証拠は相手の宣戦布告のみ。住民全員が理解し従ってくれるとは限らない……だから!
そんな不確定の話で故郷を離れたくないと言うだろう人々すら護れるだけの力が!」
「……分かった、竪神。
行くぞ!」
「ああ!行くぞ!父さん!殿下!皇子!」
迸る緑の光。転移してくるのは蒼き鬣の機械神と……既に此処に在る剣を除く3つの支援機体。
設計図上は空、陸、そして海の生物を模した全対応の三機だが……そもそも海中とか地上とか要るのか?とはちょっと思う。
んだけれど、設計図的には4機合体で4つのコアを連結する事で出力を確保するのが本題なのだとか。だから……
一つは天を裂いて駆け抜けるコンドルのような機体、HXS。そして時を同じくして転送されるのは、戦車を思わせる鋼の塊と、空を舞うジェット。設計図にある海と陸の生物モチーフなど何処にもない。
そう、どうせ全部再現できないなら、単体合体をかなぐり捨ててしまえば良い!対空性能と機動力を上げるLIO-HXは必要だが、残りはダイライオウへの最強合体のみで上等!
その割り切りにより完成したのが、この二機だ。大分スペックは設計図より落ちたが……
「超特命合体!」
……本来なら今ある程度攻撃して妨害する方が良いのか?と思いつつただただ見守る。
戦車のような機体が宙に浮かび、無限軌道を含む車体が後部のエンジン付近を残し、大きな砲塔と完全に軸接続。そのまま左右展開してLI-OH本体が背負うような形でエンジンを接続軸に合体。無限軌道が本体前方にスライドしながら展開して前面装甲になるのに合わせ、車体がLI-OH腕に接続。
ジェットから機首パーツが離れ、そして後方エンジンが二つに分離すると機首が元無限軌道のレールにスライドして胸元を覆うように合体し、後方の二パーツがLI-OHの足を覆うように大きな下駄(というかブーツ?)として合体。翼が畳まれると翼に取り付けられていた大きな二つのエンジンが分離し、LI-OHの二の腕から先に合体。内部機構が押し出されて拳と腕を形成。
そして前のようにHXSがバラバラになり……本来は腕アーマーとなる胴体部がエンジンと接合して増加装甲の無い股を覆い、長い機首が武装として左腰へとマウント。尾翼がブレードアンテナとして頭に装着され……エネルギーウィングが背の砲塔に合体して紅の光の翼を噴き出す!
更には頼勇が握って振るってみていた巨剣が浮き上がってその拳に収まり、柄の両脇のパーツが弾けたかと思うとLI-OHの頭に更なる兜飾りとして合体する!
「ダイ!ライッ!オォォォウッ!」
そうして顕現する存在こそ、目指してきた合体兵器……ダイナミック・ライオウ!
「さぁ!この力をテストさせてくれよ!皇子!」
そのまま巨神が緑の光をツインアイに湛えて剣を振り上げ……
ブン!と振り下ろす。それにおれは呼吸を合わせ……
「迅!雷!抜翔断!」
金雷の昇竜閃で迎え撃つ!
「っ!らぁぁっ!」
せめておれの奥義くらい、力任せに打ち破ってくれないと困るって話だ!
何処と無く龍の咆哮のような音を轟かせ噴き上がる雷光の柱と共に放たれる斬り上げと、赤い金属剣がガッチリとかち合って……
流石に重い!ってかそうでないと!
実際問題……LIO-HX相手なら迅雷抜翔断の斬り上げで武装を弾き飛ばすというか切り落とせてしまうのは前の訓練で実験済だ。出力は間違いなく上昇しているって感じだな!
後は……
が、そう思った瞬間。
『Fusion Error!Overheat!』
突如として巨神の姿が弾け、それぞれの機体に戻って沈黙する。
「……無理があったか」
「……そうみたいだな」
コア機体のコクピットから飛び降りた青年に、地面に降り立ったおれは曖昧な表情で相槌を返した。
「……オーバー、ヒート?
合体出力に……内部が、危険?」
ぶつぶつと呟くアイリス。その瞳は魔力で観測しているデータを覗き込んでいるが……おれに内容が読める筈もない。
「失敗か」
「失敗だな。竪神」
「ああ、何とも……もどかしいな」
おれの言葉に、恐らくおれと同じように微妙な顔を浮かべた青年は溜め息と共に肯定を返した。