蒼き雷刃のゼノグラシア ~灰かぶりの呪子と守る乙女ゲーシナリオ~ 作:雨在新人
目の前にしっかりと存在を認識できるというのに、きょろきょろと視線を動かす聖女にどういうことだ?とおれは首をかしげる
「ってアルヴィナ、つつくなつつくな」
その隙に更に頬をつつこうとした狼の魔神の手を掴んで止めた
うん、普通に掴めるな。実は幽霊でーなんて事も無さげだ。確かにアルヴィナは其処に居る
間違いなくその筈だ
「ほら、リリーナ嬢」
むくれるアルヴィナを一旦無視して掴んだ腕を少女の前に突き出す。が、それでも桃色聖女は目をしばたかせるばかりだ
「え?ゼノ君には見えるの?」
「寧ろリリーナ嬢には見えないのか」
「見える方が不可思議。あと、皇子、痛い」
「悪いが我慢してくれアルヴィナ
というか、何でリリーナ嬢をつつくんだ」
「ボクにとって、結構敵だから」
その淡々とした答えにおれはそうか、と返す
「なら、聖女の護衛として逃がすわけにはいかないな」
「……ん」
耳を立ててアルヴィナご満悦である
捕まえてる分には良いのか……って思うが、シロノワールが睨んでいるからそこまでキツくは出来ないな
あくまでも彼はアルヴィナありきで共闘しているのだ。アルヴィナを傷付けるなら即座に敵に戻るだろう。親友の事もあるしな
「シロノワール」
と、ふと思って呼んでみる
「アルヴィナが見えるか?」
と、姿を見せた三つ足の八咫烏は首を横に振った
「居ることは何となく分かる、程度だ」
「……は?」
思わず目を見開く。シロノワールでそれって一体……
『ルゥ?』
と、背後から寄ってきた白狼がおれの腕の中に収まった少女の白耳を舐め始めた
「アウィルには見えるのか」
『ルルゥ!』
嬉しそうな鳴き声と共に桜雷を天狼は纏い……
「だめ」
言われ、展開しかけた甲殻を閉じてお座りした
「解除されたら、バレる」
「バレるのか」
「絶対安全だから、偵察」
「絶対安全……」
確かに、おれとアウィルにしか見付からないからな。とおれは像前の噴水の縁に腰掛けて膝上にアルヴィナの小さく軽い体を乗せる
そそくさとリリーナ嬢がスカートにゴミがつかないようにしたそうだったので掃いてやればそこに腰掛けるが……アルヴィナは見えていないようだ
「絶対安全って、どんな能力なのさ
ゲームだと出てこないけど……ゼノ君が見えてるってことは、ステルスじゃないよね?」
ステルス。カメレオンみたいなのだったり、いくらかの魔神の持つ姿を消す能力だ。似たような魔法なら普通にある
「多分な。魔法でもステルスはあるが、普通におれに効くはずだ」
こくりと頷くアルヴィナ
「皇子が見えるの、普通」
「そうなのか」
「ボクの事、覚えてたから」
ぽつりとどこか嬉しそうに告げる黒髪の少女の頭に手を当てて撫でながらん?とおれは首をかしげた
「そう、なのか」
「原理は、同じ。ボクを見た記憶が消え続けてる。だから、居ることを認識できない」
「目の前に居るのに居ることを忘れ続けてる?」
「そう、アレの剣翼の力。ボクと本人にしか、使えないけど」
その言葉に呑んだ息を吐く
「つまり、誰彼構わず認識できないまま潜入されて好き勝手される事にはならない、と」
「……ボクを覚えてられる存在や……あとはあのタテガミのフィールドにも、多分弱い」
「また竪神か
ホント万能だなあいつ。頼りになりすぎる」
だが、これはこれで収穫か。アウィルが見えてるのは……いやアウィル自身アルヴィナの事を覚えてそうだしその関係だろうな
そうでなければ、臭い臭いとオーウェンに噛み付きかけたアウィルがアルヴィナには甘噛みして懐いてる理由がない
「頼勇様が頼りになるの?」
……声も今もまだ聞こえてないようだ。いや、聞こえている事実を忘れてしまうってところか
「……間違いなくな」
と、聖女に対応しつつ腕の中の魔神を見る
「で、何で居るんだ?」
「偵察、の名目
実際は……」
かぷっと捕まえているおれの右手を黒髪の白耳狼が噛む
痛くはない辺り、アウィルのような甘噛みだろう
「皇子にボクが見えるか確かめに来た
決戦でもボクはこの力を纏うはずだから、見えなかったら……困る」
「いや、ならリリーナ嬢にちょっかいかけるなよ」
「……名目」
言われて仕方ないなと思う。何か向こうに損害出そうとしたと言わなきゃと……
「あと、ボクを昔突き飛ばしたから嫌い」
「まあ、仕方ないか。でも昔の事だから一発で満足したら終わりにしろよ?」