蒼き雷刃のゼノグラシア ~灰かぶりの呪子と守る乙女ゲーシナリオ~ 作:雨在新人
「うーん、攻略できる相手かぁ……」
何となくリリーナちゃんが渋ります。皇子さまがそうなのは知ってますし、最悪わたしはそれだけで十分過ぎるんですけど……
「じゃ、まずは共通から言おっかな」
「きょーつう?」
「うん、攻略対象によっては私だったりアーニャちゃんだったりで固定の相手、つまりどっちかでしか攻略できない相手が居るんだよね」
「例えばエッケハルトさんとかですか?」
「いやあれは例外と言うか良く分かんないだけ。本来はどっちでも攻略出来るんだけど、今はアーニャちゃん一筋……でもないか」
その言葉にわたしも頷きます
「アレットさんとか、ヴィルジニー様もちょっと気にしてるような素振りはありましたから」
どちらとも会ったことがあります。わたしと一緒に人拐いに捕まった女の子と、教皇様の娘であるアステール様とは結構反目気味な枢機卿さんの娘
そして両方とも、エッケハルトさんには好意的
「あの方達は……?」
「んまぁ、戦略シミュレーションって面があったし、実は攻略しない攻略対象は他の女の子とくっつけたり出来るんだけど、そこは置いとこっか
賛否あって私は結構批判的だったから、あんまり語りたくないしね」
「そうですよね」
確かに、わたし以外の女の子達の話まで絡めるとこんがらがっちゃいます
「まずは頼勇様!アーニャちゃん視点の物語が出てきた時から攻略出来るようになるんだ」
「タテガミさん、確かに女の子から人気ですもんね」
「男性人気もかなり高いけどね……
見ての通りの超人キャラで、シナリオは……アーニャちゃんにも結構分かるかな?」
「えっと、タテガミさんとのお話になるなら……魔神族との」
うんうんとリリーナちゃんは首を縦に振りました
「そう、頼勇様ルートは魔神エルクルル・ナラシンハとの因縁の話……って程じゃないんだよね
だって頼勇様、聖女である私達居なくてもナラシンハに挑むし多分何とか勝つからさ。格好良いけどちょっと問題を抱えた男の人と恋愛しつつ問題を解決するって普通のシナリオというより、聖女って運命を背負わされた
「何となく想像できちゃいますね」
「『聖女の運命は自分で選んだものじゃない。そんな望まない力と責任を背負ってそれでも頑張る君を、私は一番近くで支えてあげたくなったんだ』がゲームでの告白台詞だしね」
「凄く言いそうですし、単純に格好良いです
わたしでもときめいちゃいます」
「そうそう、基本どんな時でも弱みらしい弱みの無い珠傷の無い完璧超人なんだよね頼勇様
それに甘く愛されるだけで満足は出来るんだけど……もっと私も役立ったーってシナリオの方が私は好き」
一息置いてお茶を一口。最推しだという青年について語った時よりは落ち着いた口調でリリーナちゃんは続けます
「で、王子様系と言えばシルヴェール様……はリリーナ編限定か」
シルヴェール第二皇子様。学園では教師をしていらっしゃる皇子さまのお兄様です
……確か11つ上の方の筈なのですが、恋なんて出来るんでしょうか?
「あれ?そもそもあの方、婚約者の方が」
「……亡くなっちゃうんだよね」
「大変ですよ!?何とか出来ないんですか!?」
かたっと机に手を置いて身を乗り出します
「……ゲームでも、結婚出来ない程に病が進行してはいるもののまだ亡くなってないから奔走はできるんだけどさ
聖女の力も万能じゃないよ。ゼノ君の呪いだって治せないんだよ?」
「そ、それはそうですけど……」
正論に言い澱みます。確かにわたしの力は皇子さまを癒してあげられませんし、リリーナちゃんだって唇を結んでますから悔しいのはきっと同じです
「でも、わたしたちなら?
聖女様が本物と借り物とで二人いたら何とかなるかも」
「……そうだよね。ゲームじゃどう頑張っても救えなくても、頼勇様もアーニャちゃんもゲームじゃ今居ないもんね
やれるだけ頑張っても良いかも。……それで助けられたらもうシルヴェール様の攻略って不可能になるけど……」
むー、とリリーナちゃんは少しだけ胸を寄せて考える素振りを見せると、ぱっと明るくなりました
「いやもう、そっちの方が幸せじゃん?婚約者死んだことでちょっと歯車狂ってダークな面を隠しきれなくなったゲームのシルヴェール様より、幸せな方が良いよね?」
「はい!」
「って脱線脱線。次は……エッケハルト君でいっか。自分の力不足に悩んだりするふっつーの貴族。突っ込み役で常識人枠」
「ざ、雑です……」
「そりゃまあ、雑だよ。だって原作と全く似てないもん話してもしょうがない」
苦笑しか出来ません
「で、次はロダ兄……ルパン君。ロダキーニャ・D・D・ルパン」
「誰ですかそれ?」
今までは見知った名前ばっかりだったのに急に変わってわたしは眼をぱちぱちさせます
「えっとね、この湖の向こうの国の人で、とにかく派手派手
派手さの裏に結構な心の闇を~っていうか派手人格の奥底に臆病な本来の人格が引きこもってる話なんだけど、兎に角表面が派手すぎてぱっと見分かんない」
その言葉にくすりとします
「皇子さまみたいです?」
「いやゼノ君はめっちゃ心の闇分かりやすい。一筋の光が見える闇の塊みたいなもんだから比率が逆
色々派手なのも気を引きたい人恋しさの現れだった筈だし、割とぼっちが好きなゼノ君とは本当に逆も良いところだよ?」
へー、としか返せなくて困ります。全く知らない人のお話では、ただそうなんですかと思うことしか出来ません
あと、皇子さまも自制しすぎなだけで人恋しいとは思いますよリリーナちゃん?
「でも、向こうの国っていうことは」
「会えるかも知れないねーって思ってるけど、どうかな?」
「次は……うん、西国の彼かな」
一息ついてから、話は続きます
「西……皇子さまのお師匠様の御国ですよね?」
「そうそう。カタナと弓を使うあの国の王族の一人
でもちょっと彼とは会いたくないかなぁ……」
みんな大体好きっぽそうなリリーナちゃんにしては意外でわたしは首を捻ります
「リリーナちゃん?」
「いや彼……ストーカー気質なんだよね。最初っから好感度高くて、こっちから距離を詰めようとしたら滅茶苦茶早い。アーニャちゃん→ゼノ君とかティアちゃん→ゼノ君と同じ絆支援最速進行タイプ」
「ストーカーさん?」
きょろきょろと見回しますけど、そんな人居ないです
そもそも皇子さま達が何とかしてくれそうですし、居るわけ無いですよね
「いや、まだ会ってないから居ないってアーニャちゃん
ちょっと初対面で運命の人……
「たまい?」
「魂の妹で魂妹。他人の妹じゃないよ
いやまあ、最低限礼儀はあるっていうか、さすがにメンヘラ方向あるとはいえ他の攻略対象とくっつこうとしたら刺してくるとかそんな事はない……
というか、兄を自称してるから祝福してはくれるんだけど何て言うか、怖い」
「こ、怖い人なんですね……」
ぶるっと体を震わせます
「で、ガイスト君。言動が変だけど良い子で、頼勇様みたいに魔神と因縁が……」
と、リリーナちゃんは遠い目をします
「ある筈だったんだけどなぁ……。ゲームだと過去に起こってる惨劇、普通に回避されてるんだよね」
「惨劇……」
「うん、本来は魔神に唆された兄のシャーフヴォルが家族全員殺して~つて事件が起こるんだけどこの世界だと起きてないんだよね。だから皆生きてるし、兄を唆した魔神との因縁もない」
「シャーフヴォル……あのアトラスの方ですよね。恐ろしい人なんですね……」
そして、何だかわたしに変な視線をしてて、と体を抱きすくめます
「あと共通枠は二部行かないおまけ枠なマッドなあの人と商人のフォース君と……」
「結構居るんですね……」
「リリーナ編だと世界終わっちゃうけど魔神王ルートがあって、ボイスだと恋愛感情持ってそうな台詞で仲間入りするカラドリウス君の味方ボイスもあるけどあれは没だし……」
「ま、魔神王さんも!?」
びっくりです。絶対に相容れないと思うんですけど
「魔神と仲良くなんて無理です無理です絶対無理です」
ブンブンと頭を振るわたしに、何となくリリーナちゃんは曖昧に笑いを返してくれます。普通にリリーナちゃんも天光の聖女様なんですから、同じ気持ちだと思うんですけど……わたしよりより伝説の聖女様に近いんですし
「うーん、確かにそう……かな?」
「理由は分からなくもないんですけど、それでも皇子さまを殺そうと人々を人質に決戦を仕掛けてくる屍の皇女って酷い化け物も居るんですよ?」
「……居る、ね一応……」
「?リリーナちゃん、どうしたんですか?」
「いや、ゼノ君大変だよねぇ……って」
その言葉にわたしは強く同意を返しました
あのアルヴィナって怖い魔神の問題も、きっと何とかしてみせます!
「あ、そうだそうだ、小悪魔ショタっ子も居たっけ」
そんなわたしを他所に、リリーナちゃんは話し続けます
「しょた?」
「幼げな男の子ってくらいの意味で覚えれば良いよ?」
「はい。でも、その方たちはお名前無いんですか?」
「いや、ロダ兄ちゃんにピンと来てなさげだから、言ってもアーニャちゃん混乱するだけだよねって言ってないだけかな」
その言葉にわたしはリリーナちゃんに会釈します。そこまで考えてくれていて嬉しいです
「で、私限定が前言ったけどシルヴェール様と純粋ショタな勇者アルヴィス。まあアルヴィス編のヒロインの一人って話だから、後者は実は攻略される側なんだけど」
あははと笑うリリーナちゃん
「そして、わたしが……」
「ゼノ君とラインハルト君。ゼノ君は推しだしシナリオちゃんと覚えてるけど……聞く?」
それはきっと優しさだと思います。でも、わたしはにこにこと聞いてくる聖女様に首を横に振って返しました
「え?聞かないの?」
「必要ありません、リリーナちゃん
確かに知ってたら……って思いますけど」
「いや、なら聞けば良いよアーニャちゃん?別にさ、エッケハルト君と違って隠さないよ私」
「でも、ですよ?
わたしとリリーナちゃんが一緒に居るように、事態はリリーナちゃんの知るゲーム通りじゃないかもしれないんです。そんな時にゲームでは大丈夫って楽観視して皇子さまの苦しみをちゃんと分かってあげられなかったりしたら、わたし後悔で死んじゃいます
ゲームでの皇子さまの話は要りません。わたしはわたしの意志で、皇子さまを幸せにしたいんです。シナリオ通りにとか、半端な気持ちを混ぜたくない、余計な事を知って今の本当の皇子さまを曇った眼で見たくないんです
だからリリーナちゃん。これじゃ皇子さまを幸せから遠ざけちゃうって間違った道に行きそうな時だけ、駄目だよってわたしに教えてくださいね?」
リリーナ「余計な知識で今の好きな人を見れなくなるから原作知識は要らないって……ガチ勢怖いなぁ……」