蒼き雷刃のゼノグラシア ~灰かぶりの呪子と守る乙女ゲーシナリオ~ 作:雨在新人
「……竪神、頼勇!」
その存在に黒い目を見開く魔神夜行
その隙に実は全然力を込めて拘束していないアルヴィナの骸骨腕を振り払って脱出、案外痛そうに身を振るわせているのでそのまま背に駆け上がって愛刀を回収する
……恐らく、HXSから射出したのだろう。ざっくりと突き刺さった刀身は屍の幾重もの層を貫通し、本体に届いている
……蒼い刀身が見えてる時点で分かっていたが、鞘無いなこいつ
「竪神、鞘は?」
「すまない、作れなかった!」
「案外鞘の構造って分かりにくいものな!」
ああ、実は二重構造とか外から見たら分からないし作れなかったならしょうがないな!いや抜刀術的には困るし、当然迅雷抜翔断も撃てなくなるんだが、言っても今更!月花迅雷が無いよりは余程良い!
歌姫天使……幼い外見をしたセレナーデと呼ばれた彼女の歌は未だに続いている。が、それを受けても月花迅雷は微動だにしない
あくまでも、すべての武器などを吹き飛ばすのではなく、魂に作用する……言ってしまえば超強い雪那月華閃に近い性質だとすれば、それもまあ理解できる。月花迅雷そのものには魂が何だの繋がりは無い。誰でも使える第三世代神器だから、逆に歌の効果を受けない!
「竪神、歌には気を付けてくれよ
恐らくはレリックハートの繋がりすら断ち切る!」
「何でもありか、そいつは!」
「何でもありだ!」
おれの言葉と共に、奥歯を噛んで修繕した青金の結晶剣を盾のように剣の腹を見せて構える頼勇
おれは握ったことも無いから知らないが、シロノワールと話しているのを見るにある程度ユーゴが使ってきたアレと同じ能力を使えるだけ修復出来たようだ
「……ほう、狼一号か!」
「私はそんな野性的な気はないが」
「だが犬ではない!」
……アバターの割に案外元気だなこいつ!?と耐えきったロダ兄を見て思うが、それはそれだ
「……彼は」
「ロダキーニャ・ルパン、そこのワンちゃん一号の御主人様にして、悲しみを人より奪うもの」
「味方と思っておこう」
「そう、その通り!」
……これで分かり合える辺り、やっぱり覚悟決めきった攻略対象って凄いな
って、そんな訳はない。何なんだ彼はと頼勇の精悍な茶色い目が訴えてきている
見た通りとしか言えないのが困りものだ
「味方か」
「英雄だ」
「……あまりちょうど良いフォローは期待しないでくれ」
「上等!合わせてやろうじゃないか」
さりげなくぶっ倒れたリリーナ嬢等を庇うように射線を遮って月花迅雷を中段に構え、二人の攻略対象を両脇に相手を見据える
「……どうする、皇子」
「LI-OHは無しだ。恐らくレリックハートが剥がされる以上、エクスカリバーで戦うほうが安全」
……だが、待て
少女天使セレナーデを観察すれば……
やはりだ。此方を見てすらいない
「俺様との縁は嫌か?」
という声と共に確認のために撃たれる弾丸だが、当然ながら精霊障壁に阻まれ届くことはない
見上げているのは空。いや、頼勇が降り立つ際にすれ違いざまにぶった斬って倒したあの異形の天使のような者が現れないか空で警戒を続けるゼルフィードの姿のみ
楽しげに、嬉しげに、それでも少しの寂しさを乗せた
おれには何も影響がないが……
『嘆きの解放、魂の詩!』
少し余裕の戻ったガイストの言葉に安堵する。そうだな、ゼルフィードってガイストの魂に干渉してるとかそんなんじゃなく、ただ扱い方を伝えているのがガルゲニア公爵家ってだけだからな!
ガイストとゼルフィードにはこの歌の影響は0!混じりっ気無し(いや魂に作用する特殊能力持ってるだけで、ロダ兄や頼勇もそうなんだが)の攻略対象だからこそ、どうやら後天的な魂のあれこれを引き剥がすあの歌を受けない
……ん?となると、
まあ良いか、耐えられる分には助かるだけだ
「犬ころ、何処に消えた?」
と、ロダ兄が左右で色の違う瞳で周囲を見回す
……居ない。忽然とアルヴィナが姿を消していて……
「ぐっ!」
左手を噛まれた!そこにいるのか!
……が、姿は見えない
……虚空を凝視するおれに対し、噛み付いた見えない何かは不満げに恐らくは舌だろう濡れた感触で暫し左手の指をペロペロと舐め回し……
「あ、ぐがぁっ!?」
そうか、これが前にアルヴィナが見せた力、眼前に居ても気が付けないという……
何で今はおれにも効いて
と、思い出すのは今のおれとしての始まりの道化の言葉。『地獄の業火』
あの言葉、記憶をそのまま持つことを皮肉った言葉……な気がする。嘘は一つだけと言ったが、その嘘が何だったかは彼は結局言わなかった
そして、始水が龍姫な以上、『転生させるのなんて誰でも良かった』こそが嘘だろう。なら、地獄の業火とは本当な筈で、実際記憶があるからの苦悩はおれの中にある
……ああ、アルヴィナの記憶を欠落させる力が効かなかったのは道化の加護で、今のおれはそれがないから記憶が見た端から欠落しているのでアルヴィナを認識できないというカラクリか
って噛むな噛むなアルヴィナ!?
と、おれの左手、囓り取られた指から呪いの青炎(アルヴィナが浮かべている人魂のようなそれ)が燃え上がり……
一気にそれは手首まで拡がると肉が腐り落ちて骨格を顕にさせたかと思うと、接合を喪ってぽろりと落ちる
「皇子さま!」
悲痛な声が耳を打ち、漸く事態を理解する
何とか出来ないかと膝を折って意識の無いリリーナ嬢に向けて回復魔法をかけていたアナが、地面に落ちたおれの左手の骨を泣きそうな顔で見つめていた
……手首から先がない。そして、地に落ちたおれの手だった骨には、見ず知らずの青い結晶が所々に生えていて……
「屍の皇女ぉぉぉっ!」
出来れば説明してくれアルヴィナ!?魔法耐性が無いせいで、おれが気が付かないうちにセレナーデの力なのか何なのか左手に変なもの埋め込まれてるってさ!?
更に見えない何かに優しく腹を蹴られ……地を蹴って派手に吹っ飛ぶ
その隙に、右手の愛刀をひったくられた
が、良い。愛刀は大事だが、あったところで迅雷抜翔断でしか精霊障壁は抜けない。そして今のおれには撃てないから、夜行相手に言い訳に使うくらいの役にしか立ててやれない
「皇子、無事か」
「あまり無事じゃないが……」
夜行なる魔神を突破する手段が上手く思い付かない。エクスカリバー、そして多分グングニル辺りの名前のついたシロノワールの槍。二つほど精霊障壁を貫く方法はあるが、セレナーデの力が未知数
それを知れなければ、守りを捨てて打って出るしかない以上返り討ちにされるのはおれ達だ
唯一の救いは……ただ歌い続けるセレナーデなる少女天使。おれ達を見てすらいないし、攻撃してくる様子もない。ただただ、魂を解放する歌を気ままに歌うのみ
「夜行」
「姫様」
「ボクの死霊、消さないでほしい」
不意に視界に映り直すのは誇らしげに口に蒼刃を咥える屍狼の姿
「文句、無能天使に」
「無能?」
「脅威と認識していないから、敵対行動を取ってくれない」
夜行の言葉に、不可解なセレナーデの行動を理解する。敵とすら思われてなかったから歌ってるだけだったのか
「だが!」
「竪神、待て!」
「相手は異形ではなく、敵意を持たないならば、今のうちに……」
叫ぶ青年の額には小さな汗
珍しく焦りを浮かべている頼勇を、それでもおれは制する
「違う、竪神
神は自分に似せて人を創った」
「……皇子?」
「日本という国の、いや地球という世界の、『天使が出てくる創世を語る』聖書の一節だ
つまり、人に近い姿の天使ほど、神に似た外見をしているということ」
恐らく、だからあの獅子頭の天使も掌の中に美少女顔があった。あそこだけが、神に近い意匠をしていたのだ
「だから、下位の天使の方が神に似ているなんて有り得ない。無力に見えるセレナーデの方がさっきの異形より数段高位で凶悪な性能、仕掛けたら殺されるのは此方だ!」
「……愚考」
その通りだ。それが分かって何になる
ただ、アガートラームの時と同じってことを認識できるだけ。勝てないしちょっかいかけたら終わりな化け物を、如何に刺激せず夜行を倒せるかって話だ。最初から何も進展がない!
「……面倒な」
しゃん、と更に振られる小槌。連続して振ってこない辺り、クールタイムか何かあるのだろう。その隙を突ければ良いが、まだ情報不足
そして落ちてくるのは、さっき頼勇が切り裂いたのと同一の姿の天使Xが二体。やはりというか、本気でただの量産型下位天使だったのだろう
「……勝ち目、あると思うか?」
「無ければ作る、縁も勝利も同じ事!」
「言えてるな!」
ちなみにですが、次々回で一気にひっくり返します。それまで結構暗いですがどうかお付き合い下さい。
次々回予告(ネタバレかつ結構緊張感台無しなので読み飛ばしてくれても大丈夫です)
貫く光、止まらぬ
天使が貫く光が炎を拭い去った筈のその時、最後の切り札は目を覚ます。
「禍幽怒」
「……そうだな。力を振りかざせば祈りはただのエゴだろう。だが、それで良い。エゴイストだとも、私は。護りたいというのも、何もかも欲望でエゴ。それは悪いこではない!」
『ならば、捩じ伏せて手懐けてみろ、荒れ狂う未知の力……太古から受け継がれてきた命の奔流を!』
「これが、ジェネシック・ティアラー!託された最後の手段!」
「父さん、エッケハルト!行くぞ!」
次々回、蒼き鬣の
「レヴ……システムだと!?」
「「ジェネシック・フュージョン!
(注:今章が竪神編なので目立っているだけで、主人公は変わりません)