蒼き雷刃のゼノグラシア ~灰かぶりの呪子と守る乙女ゲーシナリオ~   作:雨在新人

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第二部二章後編 血戦!ダイナミック・ダイナスト・ギガンティス!
すれ違い、或いは譲れないもの


きゅっとおれの肘辺りで切れた軍服の袖が握られる

 

 「皇子さま、痛くないですか?わたしに出来ることとかありますか!?」

 左腕はその先から無い。必死にそれを見て訴えるのは銀髪の聖女(予定)

 だが、正直な話今治せるものでも無いんだよな、回復魔法効かないし

 ってか、ユーゴに傷つけられた目は治癒したけど、片腕って流石に治るのか?七天の息吹が使えれば治せるのは有名な話だが、古傷になると治らないしな……

 

 そして、少女は何時もは優しげな瞳できっ!とその袖を握る幼い少女の顔を睨み付けた

 びくり、とその白狼耳を震わせるアルヴィナ。ころん、と零れ落ちていたおれの左腕を、白い翼にくるんで握っている

 「……くっつく?」

 「いや、ネジか何かが取れて分解しただけの機械じゃないんだからくっつくわけ無いだろ」

 ちなみにちゃんとした回復魔法を使えば割とくっつく。魔法万歳だな

 おれには効かないけれど

 

 「貴女方のせいなのに」

 「辛辣過ぎるぞアナ」 

 「お前は誰の味方なんだよゼノ!?魔神の肩なんて持って!」

 ……言われて対応に困るおれ。自分としては明確にアルヴィナの味方であり同時にアナの味方なんだが

 そもそも、最後に夜行からアナを庇ったように、アルヴィナ自身はアナと敵って気分じゃない訳で。この場で敵なんて、心を見れば本当は居ないのだ

 

 ……ただ、過去の行動と魔神であるという事実がアルヴィナのそれを赦さない

 「おれはアルヴィナの味方だ」

 だから今、おれが言えるのはこの言葉だけだ

 

 「皇子さま!その子は、世界を滅ぼす魔神なんです!貴方の護るべき……ってそもそもその思考が変なんですけど、護ろうと何時も頑張ってる皆の一部じゃなくてっ……その皆を殺す悪い化け物なんです!

 皇子さま、貴方は騙されちゃってるんですよ!」

 「そうだぞ、何魅了されてんだよゼノ!?お前実はロリコンだったのかよ!」

 「ロリコンではないんだがな!」

 「ボク、歳上」

 ……ただまあ、外見を見ればロリコンの謗りは免れないだろう。ノア姫ほどに外見の幼さに反してしっかりとしてるってオーラがあるわけでもないしなアルヴィナって

 

 「おれは正気だよ、アナ

 君は覚えていなくとも、おれは覚えている。アルヴィナ・ブランシュという友達の事を」

 愛刀を地面に突き刺しぽんぽんと残る右手でアルヴィナの耳後ろを叩きながらおれは告げる

 「だからおれは友達の事を信じているだけだ」

 「と、友達!?何がなんですか?」

 「実は……」

 

 こうして、鋭い瞳で此方を見据える頼勇に武器を突き付けられながらも何とか事情を話す

 が、

 「あのATLUSやかつての四天王との戦いに至るまでの暫しの間、彼女は私達と交遊関係を結んでいた

 それはスパイ活動から始まった行動だったが、何時しか本当の意味で友となり……自身の潜入時の記憶と友情と引き換えに、ATLUS等から皆を護った、と」

 静かな炎を湛えた茶色い瞳。信じられないですと言いたげに不安な光を抱く青い瞳

 真実を告げてもこれだ。記憶がないなら、信じるなんて出来ないだろう

 

 君が記憶無くしてるだけで昔友人だったんだよと親の仇が馴れ馴れしく言ってきて信じろと言われたらおれでも無理だ。頼勇もアナも間違ってはいない。ってか、あの説明で微かな今の記憶の違和感から信じてくれてたノア姫が流石エルフってところなだけなんだよな

 

 「何度でも言おう、皇子。冗談は後にして夢は寝てる時に言ってくれ」

 「ボク、友達には嘘つかない」

 「私にたいしては別、と」

 ぺたんと耳を倒してこくりと頷く魔神少女

 「でも、皇子やそっちの銀髪には嘘をつきたくない」

 「説得力が欠片もないな」

 「そうですよ!そもそも皇子さまの腕を抱えて、何を言っても……っ」

 涙目で訴えてくるアナ

 

 「ってか、何で抱えてるんだアルヴィナ?」

 「勿体ない」

 予想外の答え

 

 「な、何がなんですか!?」

 「そこの変なのに皇子が撃たれてむかむかした。怪我するの見て、やだって思った」

 何時しかおれの指まで飾られた胸飾りを持ち上げて、とうとうとアルヴィナは語り続ける

 「欲しかったから心がぽかぽかするのに、皇子痛かったと思うと、水を被らされた気分になった

 だから、こんなに良いもの、二度と手に入っちゃだめ」

 なんて言いながらも、アルヴィナの唇の端からはつぅと一筋の透明な液(よだれ)が垂れる

 

 アナの視線は暫く困惑したように揺らいだ後氷点下になった

 アルヴィナぁぁぁっ!?神経逆撫でしかしてないぞアルヴィナぁっ!?

 

 「皇子さまの腕を、御馳走みたいに……っ!」

 「たからもの」

 大事そうに腕を抱えたまま、胸元の瞳を閉じ込めた水晶を翳すアルヴィナ

 「おいアルヴィナ」

 「それ……」

 銀髪サイドテールの少女の海色の瞳の向く先がおれの右目、アルヴィナの胸元、おれの左目、そしておれの右目とちょっとぐるぐると巡り……

 

 「皇子さまの、左目……っ!」

 怒ったように、拳を握り締め震わせた

 「可笑しいと思ったんです、ユーゴさん?の時はわたしは状況知りませんけど、同じ眼の傷でも治ったのに。痛そうで見てて辛くても、皇子さまの傷はそのうち治るものだったのに。あの左目の傷はどんなに頑張っても一切治る気配がなくてっ

 貴女が、奪って呪っていたからっ……!」

 財宝を奪わんとする敵に向け牙を剥き出しにした龍のごとき(と形容するには幼さの残る顔立ちは可愛すぎるが)憤怒の形相で、アナは叫ぶ

 

 一度だけ見た本気で猛り狂う始水に似てるな、なんて場違いな逃げ感想しか思い浮かばない。あの時の始水は「私が連れてきた以上此処では兄さんの品位は私の品位です。謙遜は私の品位も下げるので兄さんは黙っててください」とおれを黙らせてから冷静かつ冷徹に言論で相手を完全に叩き潰してたっけ

 

 「アナ、落ち着いてくれ」

 「落ち着けませんっ!皇子さま、貴方の眼は、もう治らないんですよ?一生隻眼なんです

 例え貴方の忌み子の呪いを解ける方法があっても、貴方に回復の魔法って奇跡の力が使えてもっ……

 完全にもう治らない状態が正常って固まってしまったその左目は絶対に治せないんです」

 うんまあ、それはそうだ

 

 「それなのにっ!どうして貴方の片眼を呪って、治せなくした化け物なんか庇うんですか!」

 「おれが、命を懸けてくれたアルヴィナにあげたものだからだよ」

 「どうしてっ!」

 響くのは悲鳴のような声

 

 「どうして、そこで微笑(わら)えるんですか、皇子さま!

 何で、自分が傷付く事についてはそんなに無頓着で……」

 きゅぅと瞳が閉ざされる

 「わたしの手を、何で取ってくれないんですか!

 何がいけなくて、わたしに貴方を助けさせてくれないんですか!」

 瞳の端から零れる水滴をアルヴィナのメカクレていない片眼が追う

 

 ……うん、しょんぼりなのは分かるが半分おれの後ろに隠れるのは逆効果だと思うぞアルヴィナ、とおれは耳まで入れてもおれの肩まで無い少女の肩を小さく押した

 

 「……君は腕輪に選ばれた、聖女を支えるもう一人の聖女」

 それは違うと言いたそうにしたエッケハルトを目線で制する

 

 チラチラと視界の端に見えるんだよな、フードの影。そう、此方に現れた魔神族の中にちゃんと撃退していない奴が一体居るのだ。四天王ニーラという存在が

 つまり、アルヴィナ関連でまだあいつが観察している

 

 アルヴィナ、と目線を向けさせたら互いにアイコンタクトしてまた隠れ切っていないよう隠れた。まだ居るから存分に負けてくれという意思表示だろう。ならば余計な情報は与えるべきではない

 

 そんな冷酷さがあるから、人に好かれないんだろうなと思いつつ、おれは少女に向けてアルヴィナを庇うように動く

 

 「貴女が救うべきはおれじゃない」

 「ボクでも、本当はない」

 いやそこで真実を言うなアルヴィナ!?

 「……確かに聖女様の力をエルフの秘宝は貸してくれてますし、それで皆が助けられるなら助けます

 でも、わたしが幸せにしたいのは貴方なんですっ!」

 「おれに幸せなど要るものか!あって良いものなものか!」

 始水、と呼んで眠れる血を呼び覚ます

 

 魔神への先祖返り。何度か頼勇には見せたが、ニーラには見せていないからアルヴィナが此方に付いたのではなくおれを自身の死霊のようなものに変えて何とかしようとしている……感は出せるだろう。わざと勘違いしてくれる筈だ

 後は頼勇が分かってくれるか、というところ

 

 「皇子さま!」

 「アナちゃん、もう止めようぜこんなの」

 「……皇子。それが答えか」

 静かな瞳がおれを射抜く

 

 「腕輪の聖女様。彼はもう皇子では無かった。既に殺されて死骸が使われているだけだ」

 静かな瞳におれへの殺意はない。アルヴィナへの怒りは痛い程に伝わってくるが、それはおれに向いていない

 理解はしてくれたようだ。本気でおれが屍だというなら、云わばおれはアルヴィナの使う道具だ。アルヴィナに向ける殺意の幾らかが混じるはず

 

 「だから、後は私の仕事だ。皇子の代わりに、屍の皇女を葬り去る」

 カッ!と輝く左手の輝石。溢れる緑色の光と共に、今日三度目……アイリスにかなりの負担をかけて無理矢理エネルギーを供給したろう機械巨人が転送されてくる

 「LI-OH」

 

 さすがにアルヴィナを理解(わか)ってくれる訳はないことはおれにも納得できる

 「おれはアルヴィナを護る。それが一番の未来への道だと信じているから」

 だから、おれは手を翳す。おれを信じてくれる為に、負ける前提でも!

 

 「頼む、殿下、父さん」

 「頼む、不滅不敗の轟剣(デュランダル)よ!」

 「魔神(ひげき)を討ち払う光を!」

 「未来の(きぼう)を護る焔を!」

 「Come on!LIO-HX!」

 「変身!スカーレットゼノンッ!」

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