蒼き雷刃のゼノグラシア ~灰かぶりの呪子と守る乙女ゲーシナリオ~   作:雨在新人

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対話、或いは思い出した答え

「だ、大丈夫ですか二人とも!?」

 言いながら瓦礫にちょっと足を取られて揺らぎつつも駆け寄ってくる銀の聖女。胸と幼く髪を売ってた頃からの特徴なサイドテールが揺れる

 

 「ああ、何とか……」

 「あと、アルヴィナ」

 右手で頼勇の機械腕を取ってふらふらと立ち上がるアルヴィナが、ぽつりと顔を小さく綻ばせた

 

 「アナ、ひょっとして……」

 瓦礫の中に埋もれながら、おれは少女を見上げる

 「はい、やっと思い出せました、リリーナ・アルヴィナちゃん

 って偽名で、本当はアルヴィナ・ブランシュちゃん……だったんですよね?」

 こくりと頷くアルヴィナ。その和らいだ表情が少し苦悶に歪んだ

 おれの立ち位置からではほぼ見えなかったが、左腕が半ばから無い。黄金嵐によって削り取られてしまったのだろう。掠めた、ただそれだけの事で

 

 それを見たのか、アナの曖昧に綻んだ顔も沈む

 「大丈夫ですか、アルヴィナちゃん?

 あの日みたいに、体の端から結晶化して砕けていく……みたいな事は無さそうですけど」

 アルヴィナがアナと交流していた頃の最後の姿。それを言えたってことは、ちゃんと記憶が戻ってるんだろうな

 

 「ごめんなさい、ずっと……皇子さまを護ってくれた友達の事を忘れていて」

 「……寧ろ、覚えてる皇子が変」

 「愛の奇跡なんですね」

 アルヴィナが首をかしげた

 

 「そんなものがあったら、ボクの横には皇子じゃなく我が物顔のアドラー・カラドリウスが居る」

 ……言えてるだろう。アルヴィナの事を考えて死んでいった彼だが、当然おれより愛は何倍も深い。愛で奇跡が起きるならおれを殺して彼がアルヴィナを救っていたろう

 

 「あれ?

 皇子さまは、アルヴィナちゃんの事が好き……なんですよね?だから、わたしの言葉も、アステール様も、誰も彼も来るなって……」

 溜め息を吐くアルヴィナ

 「そうだぜアナちゃ……」

 そうして、アナの肩に手を置こうとしたエッケハルトの右手に噛み付いた

 

 「アイダッ!?

 痛、いだだだだだっ!?た、竪神竪神竪神っ!こいつやっぱり危険な魔神だろ!」

 ブンブンと手を振るが、ステータスは多分だが屍の皇女と呼ばれたアルヴィナの方が数段高い。エッケハルト程度の能力だとGJTに変身でもしなければ引き剥がせる道理はなく、アルヴィナに噛まれ続ける

 

 「いや、今のは辺境伯が悪い」

 「侮辱」

 かぱっと八重歯の見える口を離し、アルヴィナはアナの前に立つ。銀の少女は一瞬躊躇う素振りを見せるも、腕を広げた

 

 「……ちょっと分からないことは多いですけど、お帰りなさい、アルヴィナちゃん」

 「ただいま、アナスタシア」

 ぎゅっと白の少女は黒い少女を胸元に掻き抱いてもう離さないというかのように抱き締める

 

 「ごめんなさい、本当にごめんなさい

 最後までわたしたちの為に戦った貴女の姿を、わたしは知ってた筈なのにっ……

 あとらすさん相手に、最後に全部全部バレちゃうのに、全力で立ち向かってくれたあの時と被る時まで、忘れたままだったなんて……」

 「言ったけど、皇子が変なだけ」

 「でもっ!それでもっ!

 

 忘れてたくなんてなかったのにっ!皇子さまは覚えていて、アルヴィナちゃんはわたしをさりげなく助けてくれてたのにっ!

 忘れたからって、何度か救われてる相手を含んだ皆、絶対に分かり合えない化け物だなんて……っ」

 瞳から涙を、口からは整理も出来ずに溢れる言葉を溢しつつ、少女は漸く会えた幼い頃の友人を抱き締め続ける

 

 「アルトマン辺境伯。君の言葉は私には擁護できない」

 「いや、ちょっと眼福……って感じの尊い光景の何処にそんな言われる筋合いが」

 「いや、皇子を見ていて、彼とあのただのアルヴィナが恋仲に思えるか?

 私には思えない。そんな嘘をさも事実かのように告げて、あの仲を取り戻そうとする二人の関係をギクシャクさせようというのは、流石にどうかと思う」

 呆れ気味に、青髪の青年は自身のエクスカリバーから刃を消し、柄だけをバックパックに嵌めて背負いながら告げた

 

 「……ああ、そういえばだが、私からの呼び方はアルヴィナで良いのだろうか」

 「良い。許す。ボクも今では悪いと思ってるし」

 「……当時は思っていなかったか」

 苦笑しながらも、敵意は向けない

 

 その辺り、頼勇はマジで英雄的なんだよな……流石の逆にシナリオどうすんだと言われたスパダリ枠

 「でも、片腕の事は」

 「勘弁してくれないか。私としても死を目前にしてまでの行動で無ければ納得がいかない。傷くらい付いてくれ」

 「今、皇子とお揃い」

 「その納得の仕方は止めて欲しいんだがな?」

 疲れたとばかりに、頼勇が肩を竦めた

 

 「……皇子。私はとりあえず信じるさ」

 「案外あっさりだな」 

 「言ったろう?私は何だかんだ、皇子の頑なさ、自己中さは分かっているつもりだ。その皇子が最初から言っていたんだから」

 ちょっと呆ける

 

 「いや、分かってたのか竪神」

 「皇子。皇子が私という戦力を高く評価しているのは知っている。未知数の相手に対して私が後で合流する事を渋らなかった時点で、明らかに『円卓の(セイヴァー・オブ・)救世主(ラウンズ)』のようなイレギュラーが来なければ絶対の勝算を見ている訳だ

 皇子が魔神側に裏切る算段な事はまず有り得ない。ならば答えは、向こうが裏切るという約束を交わしている

 そもそも、宣戦布告からして態度が可笑しかった。それもあの時点で忽然とではなく外から現れたのは、話を付けたあとそれっぽく演出したかっただけというのが自然だ」

 そうして一気に話した彼はおれに手を差し伸べながら、鋭くアルヴィナを睨む

 

 「だが、一度そうしたものに騙されていた以上、確証が持てなかった。どうしても全て罠という可能性を捨てきれなかった」

 困ったように青年は笑う

 

 「話を聞けば、私自身彼女に奪われもしたが救われてもいたろうに」

 うんまぁ、ATLUS相手にアルヴィナが戦ってくれなきゃ全力使いきってぶっ倒れたあの時の頼勇もおれも死んでたのは確かだから、間違ってないな

 

 「……ただもう、疑わない。彼女の皇子への恋心が揺れない限り」

 半眼でおれは友人を眺めた

 

 「なぁ竪神。遠回しにアルヴィナと結婚しろとか言ってるのかそれ?」

 「皇子、皇子が色恋に縁を作らないようにしている事は知っている。だからそんな話はない

 私個人としては、アイリス殿下は止めて欲しく、あの銀髪の方の聖女を応援したい派だな。だから嘘で籠落しようとした辺境伯を止めた」

 うーん、自分の色恋をこのイケメンに語られるのは不思議な感じだ 

 

 誰とも付き合う訳にはいかない以上、関係ない話のはずなんだが

 

 そんなおれの前で、アルヴィナはずっとアナに抱き締められたまま頭を撫でられ……案外心地よさそうにしていた

 

 「……もう、大丈夫か」

 「そうだな」 

 「これにて一件落着。世界は続けどこの話はめでたしめでたし!」

 と、最初からこれしか道がないと思ってたろうロダ兄が蚊帳の外から割り込んで締める

 

 瞬間、緊張の糸が切れる。もうフードは隠れていた場所に見えない

 戦いが終わって、アナとアルヴィナが仲直りできたなら……もう

 

 ぐらりと揺れる視界。極限を越えた体が一気に重くなり…… 

 

 「皇子さま!」

 「おやすみ、皇子。また……多分明日」

 柔らかなものに左右から抱き止められる感覚を最後に、ぷつりとおれの意識は途切れた

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