蒼き雷刃のゼノグラシア ~灰かぶりの呪子と守る乙女ゲーシナリオ~   作:雨在新人

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アルヴィナ・ブランシュと遅すぎた援軍

「……皇子」 

 やっとまた逢えた友達と一緒に重くて軽い体を受け止めて、ボクはぽつりと呟く  

 

 「……わたしには、何にもしてあげられないんですよね。皇子さまにも、アルヴィナちゃんにも」

 「……?」

 ボクはその言葉に首を傾げた 

 

 「皇子には効かない。でもボクには効く」

 「あれ?そうなんですか?」 

 こくんと頷くと、ボクは……

 

 困った、使える死霊は使いきった。またどこかのさ迷う魂にボクに手を貸してと契約しなおさないと

 

 と思ってたら、ロレっちが気に入ってた変な煩いのがほいとマントを敷いてくれたので皇子はとりあえずそこに横たえる

 

 「でも、魔神さんですよ?」

 「人間だって元魔神。魔法が効かない道理がない」

 「あれ皇子さまは?」

 「あれは裏切り者って直に呪われてるから別」

 その言葉に更に曇って少女は目を完全に伏せた

 

 「なら、アルヴィナちゃんだって」

 「例外」

 自分の状態を確認しながら、ボクは残る右手を軽く握って額を拭う

 「……魔神王は、虹界の力である王剣(ファムファタール)を……蒼炎の紋章を抱く代行者

 それが、意図しないものに乗っ取られている。そんな状況で……ボクの事を裏切り者と呪わない」

 だからか、今になっても別にボクはそんな変わらない。魔神としての力を捨てたという人類祖みたいな事はしなくて良いし、虹界由来の魔法も……

 

 「ちょっと弱くなったくらい」

 むぅ、と唸る。これだと100%皇子とお兄ちゃんの役に立ちたかったのに、93%くらいしか役立てない

 「つまり、アルヴィナちゃんは治してあげられるんですか!?」

 喜び勇んで銀の少女はいそいそとかなり豪奢な魔法書を取り出して……

 

 「あ、わたし一人じゃこの魔法使えないです……

 腕輪はなくなっちゃいましたし、リリーナちゃんもノアさんも居ませんし……」

 どうしましょう、と痛々しげな顔でボクの左腕を見てくるけど、別に良いと思う。皇子とお揃い

 ボクの左目も持っていってくれたら更に御揃いだったのに。でも、皇子は嫌がるから駄目かも

 

 「前、ボクと一緒に使った」

 ボクもその魔法書を覗き込む。一応そこそこ魔神の魔法とこの世界のものには(この世界が虹界から切り取って産まれたから)互換性があるし、行けるかも

 

 「……人手不足」

 チラッと周囲を見てみるけれど

 

 「私は父の魂と接合した結果、普通の魔法の適性が無くなっている。頼られても何とも出来ないな」 

 「はっは!俺様に助けを求めるな犬っころ!俺様回復魔法はてんで駄目だ!だからこそお供に求める縁もある!」

 「いや俺は炎属性しか無いし……」

 地面に唾吐くエッケハルト。やる気無さげだけど、ボク彼のことは結構嫌いだから明らかに本気を出そうとしてなくても許す。七色の才覚?で治療が得意な魂の形(回復職)に変われば?と言って頼る気もない

 そして、お兄ちゃんは魔神だと隠したいのかすっと消えていて頼れない

 

 そんな風に迷っていると……

 「何だ、馬鹿息子と御揃いの隻腕でも始めたか魔神娘」

 不意に、ばさりとボクの頭に帽子が降ってくる

 振り返れば、其処には鋼髪焔眼の大男が立っていた

 

 皇帝シグルド。皇子のお父さんで、本来の轟火の剣の所有者。帝国最強

 「……こ、皇帝陛下!?」

 「(オレ)のやるべき仕事もまた終わった 

 何かと馬鹿息子が借りていく剣が戻ってきた以上今更行けど遅いだろうが、一応事後処理程度なら請け負うぞ?」

 鋭い瞳に焔を灯し、彼は静かに周囲を見回しながら告げた

 

 「何時もの大火傷に裂傷打撲片腕喪失その他諸々、焔を纏って火傷しながら同時に凍傷とは器用かこいつと思うが、最早この程度見慣れた」

 手早く皇子を分析するお父さん。ボクはあ、これぬいぐるみごと置いてった帽子の一個と嬉しく思いながらそれを見守る

 

 「ちなみにだがな魔神娘。本体なら自分で取りに来いよ?大きくて転移に巻き込むのが面倒だ」

 「分かった」

 「えあの皇帝陛下、わたしは」

 

 「ってか、武力だけの皇帝が来ても」

 「阿呆か、言われんでもそんなことこの(オレ)が一番良く知っているわ」

 馬鹿ハルトに被せるように告げる皇帝。その背後から、ひょいとあんまり好きになれない二人が顔を出した

 

 金の髪のエルフと、桃色聖女

 「リリーナちゃんとノアさん?」

 「(オレ)の転移は轟火の剣ありきでの単独転移。だがかつての縁からエルフの里には飛べてな。どうせ馬鹿息子の事だからエルフをまだ安全な里に飛ばしているに違いないと思ったら、案の定だった」

 「で、ノア先生の咄嗟の魔法じゃなく、ちゃーんとした転移先を指定して飛べる魔法書で飛んできたんだ」

 そういうこと、と言いたげにエルフは無言で手の中に抱えた包帯等を小さく掲げて指し示した

 

 多分、皇子の為に用意した薬の染み込んだ包帯。治してあげるため

 それは良いのにもやもやする。ボクじゃなくて、あのエルフがって事に

 

 だってボク、奴のことは……お兄ちゃん関連で落ち込んでて皇子に逢いたい時に魅了で皇子に迷惑掛けてた事と、ボクの祖父の死体を勝手に使う彼に呪われてボク達に助けられたのに何だか不遜な態度してた事しか知らないから

 桃色?論外

 

 「あ、これで何とかなりますね……」

 ほっと息を吐く銀髪聖女

 

 それを見て鋼髪の皇帝は頷き

 「そう言いたいが、まずはケジメを付けんとな」

 「ケジメ、ですか?」

 「竪神準男爵。騎士団員に対する皇命だ

 アルヴィナ・ブランシュ及び馬鹿息子を外患誘致及び反逆準備罪で拘束せよ、良いな?」

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