蒼き雷刃のゼノグラシア ~灰かぶりの呪子と守る乙女ゲーシナリオ~   作:雨在新人

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インターミッション ヒロイン座談会
異伝・アルヴィナ・ブランシュと発情エルフ


「……邪魔しないで」

 ぽつり、と本音をボクは漏らす

 

 此処は帝国(一応ローランド轟剣帝国、だと思う。皆帝国としか言わないけど)王都。帝国なのに王都なのは、帝祖皇帝がボクが産まれるちょっと前の魔神と聖女の戦い云々の後に、周辺国すら纏めて戦い抜いたお前がもう長になれとかつてあった王国の国王から国を譲られたから……らしい。

 その王城……から地下通路で繋がった郊外の牢。地下に建造して、完成後に王城からのトンネルを除いて地上と繋がる全てを魔法で埋めて在処すら分かりにくくしてしまったから、光も届かない地下深く。其処にボクは閉じ込められている

 

 でも、別にそれは良い。ボク自身納得している。皇子側に付くと決めた時に、はいそうですかとなる訳がないって思って、それでも決めた道だから

 殺されないなら良い。いっそ首輪で絞められても良い。その時は皇子に付けて欲しいけど、許す

 

 でも、問題なのは……

 「馬鹿は寝て言ってくれるかしら?」

 目の前で憮然とするいけすかないエルフ娘。歳上ぶってるけど100歳前後らしい。ボク……一応生まれは780年くらい前だからお姉さん、偉ぶるのは止めて欲しい

 

 光の届かない地下牢に閉じ込められているのはボク一人じゃなく、皇子も一緒。皇子の父はどうせ引き離しても共謀するからいっそ監視しやすく同一牢にしておくって言ってたけど絶対方便

 だから、夜目がきいて真っ暗闇でも問題ないボクが今も意識が戻らない皇子に包帯とか巻き治し……って思ったのに

 

 「馬鹿じゃない。ボク、ちゃんとやる」

 「……そこは疑っていないわよ、魔神さん。ワタシが言っているのは、どうしてアナタ、ワタシの持ち物を勝手に使わせて貰えると思っているのかよ」

 呆れた顔で、自前の灯りに照らされたエルフは告げる。その生意気な長耳と、ボクが知ってる頃はショートカットだった筈のポニーテールが揺れた

 

 「そもそも、彼が今巻いている包帯も、持ってきた替えも、ワタシ達エルフのもの。一応秘伝に属するわよ?」

 「……知ってる」

 「恩人であり、今もワタシ達エルフを含む皆の未来のために全力を尽くしている灰かぶり(サンドリヨン)との『大事が起こった時に手を貸す』約束を護り、高貴なるエルフが己の秘伝を使ってあげている、これはそういうことよ

 なら、勝手にアナタが自分にそれをやらせろというのは可笑しな話でしょう?」

 ……言ってることは間違ってない。実際、分からなくもない

 

 幾多の薬草や何やらを煎じ染み込ませた包帯。七属性全ての所有者が揃って初めて作れる七天の息吹ってイカれ魔法(お兄ちゃんもふざけた奇跡と愚痴っていた覚えがある)が影属性持ちが産まれないエルフには他種族と協力無くしては作れないから、代わりに発達してきた魔法ですら治せない大怪我を癒す秘宝。勝手にボクが使うのはと言うのは……理屈としては分かる

 

 「皇子はボクの。ボクは皇子の

 ボクが付けた傷みたいなものだから、自分でやりたいだけ。だから頼んでるし、誰が巻いても効能は同じ」

 ボク自身の腕は七天の息吹で治してしまった。その金額はボクが皇子の為に働いて返す

 

 「だから、貸して」

 「……嫌よ。そもそも、ワタシあの銀の聖女と違って何も思い出していないものの、一応アナタが恩人の一人というのは理解しているわ

 でも、それは別件。敵であった筈のアナタを認め受け入れるという一点で使いきる恩よ。それ以上は無いわ」

 ……恩恩煩い、と一人口の中で毒づく

 

 どうせ、皇子相手は恩を返してるだけと結構甲斐甲斐しく、そして恩着せがましく動く癖に、と揺れるポニーテールに噛み付きたくなる

 

 「あら、魔神も動物みたいね、揺れるものが気になるなんて」

 ……煽り、低俗

 「低俗な発情エルフが気になっただけ」

 分かってても、ボクはつい吠える

 

 「……何が言いたいのかしら?」

 「ボクが知ってる限り、髪は伸ばしてなかった」

 「エルフの髪は魔除けになるらしくてね。ある程度の長さまではすぐ伸びるのよ」

 「それをショートにしてたのを、わざわざ止めたの?」

 暗くボクは笑う

 

 「発情エルフ」

 「発情魔狼が吠えて、何がしたいのかしら?

 単に、恋に目覚める少女の歳にはまだ早いし、特に異性にアピールする気も無かったから動きやすさを重視していただけよ。でも、人間相手とはいえ、人前に出るなら女性らしさが有った方が良い、そう考え直したの」

 「語るに落ちた」

 がるる、とボクは吠える

 

 「何様のつもり?」

 「ワタシが聞きたいわね」

 「ボクは皇子が共に歩める道を信じた穏健派の魔神。屍の皇女アルヴィナ・ブランシュ」

 威圧するようにエルフを睨む。何時もは髪に隠れがちな方の目を爛々と輝かせて、強く主張する

 

 「ワタシはノア・ミュルクヴィズ。高貴なる女神に加護されたエルフの纏め役

 今は恩と縁の為、灰かぶりを初めとした一部人間の為の教師もやってるわ」

 威圧に全く揺らがないと、ちょっと困る

 

 紅玉の瞳は揺れず、ボクを見返してきて……

 

 「えあの?アルヴィナちゃんにノアさん?

 何を睨みあってるんですか?」

 ……と、不意に更に背後からそんな声がした

 「『無駄な言い争いなんじゃよー』」

 ……そういえば、ずっと皇子の横で寝そべっていた狼の存在を忘れていた

 

 「アーニャ、低俗エルフが皇子の為の包帯をくれない」

 「アルヴィナちゃん、そもそも人に貸してくださいって頼むときは喧嘩腰じゃ駄目だと思いますよ……?」

 「このエルフ、ボクは大嫌い」

 「ワタシも正直好きになれないわね」

 「『誰でも良いからまずぬしの包帯を替えてやるんじゃよー?』」

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