蒼き雷刃のゼノグラシア ~灰かぶりの呪子と守る乙女ゲーシナリオ~ 作:雨在新人
「う、うーん」
わたしは皇子さまが起きていたらって思って持ってきた食べやすそうな穀物団子を手に、小さく首を傾げました。
来てみたらこれです。アルヴィナちゃんとノアさんが睨みあっていますし、皇子さまはやっぱり苦しそうに眠っていますし……
「アウィルちゃんの言うようにまず皇子さまです
間を取ってわたしがやりましょうか?」
なんて、ちょっぴり本気で冗談めかして言います
「駄目」
「何処が間なのかしら?横から来た泥棒じゃない」
けど、やっぱり即座に潰されちゃいます。いえ、分かってて言ったから良いんですけど……
「えへへ……それより何より皇子さまの怪我を治してあげる事が優先ですから
わたしだって、自分で治してあげられるならやりたいですけど」
って、わたしは王都に帰って龍姫様に祈ったら戻ってきた腕輪に眼を落とします。一度離れた事で溜まっていた力が0からになっちゃって乱用が効かなくなっちゃいましたけど、帰ってきてくれたのは嬉しいです
元々、聖女様の力を自分勝手に使いすぎるのは良くないですし、戒めです
でも、やっぱり皇子さまには効かないですし……。エッケハルトさんやリリーナちゃんは、龍姫様の聖女の力は効く筈なんだけどって言ってて、それが悔しくて仕方ないです
本当なら、治してあげられる力を持ってる筈なのに、わたしじゃ駄目だなんて
ちらりとノアさんを見てしまいます。わたしより元々が凄い人……というかエルフさんですし、ノアさんが持っていたら、きっと皇子さまを治してあげられて……
「はぁ、それもそうね。この発情狼と無駄な争いなんてしていては教師兼保護者として失格ね」
「皇子第一」
って、何だかわたしの言葉に納得してくれたように二人が頷きます
「じゃあ、とっととワタシが」
「未来の相棒のボクが」
……って変わってないです!?
「兄が妹を護るなら、妹は兄を支える……もの」
って、数日寝込んだらしいもののけろっと復活したアイリスちゃんまで猫ゴーレムで参加してきました。猫さんの手でどうやって……と思うんですけど、ゴーレムだから腕くらい生やせますし行けるんでしょうか?
「ふしゃーっ!」
「うにゃぁぁぁぁっ!」
あ、アルヴィナちゃんが猫さんを見て唸りました。確かに、昔からアイリスちゃんとアルヴィナちゃんって龍馬の仲っていうか、相性悪かったですし……
アイリスちゃんって、ノアさんとは保護者?と妹って住み分けしてるからか平気なんですけど、同じくどこか妹っぽいアルヴィナちゃんには自分の立場を脅かされてる気がするんでしょうか?
「って皇子さまからまた離れてます!」
「……鋼の、誓い。我が風をもって」
と、わたしと一緒に護衛として着いてきたガイスト君がおずおずと言い出しますけど……
御免なさい、わたしには何言ってるか全く分からないです!皇子さま、翻訳してください!
「黙りなさい泥棒猫」
「男が口出さないで」
「妹の役目を、部下が……取らない」
あ、あの言葉っていっそ男であるガイスト君がやろうかって意味だったんですね
でも、三人から袋叩きにあってしゅんと沈んでガイスト君は牢の入り口に引っ込んでしまいました。えっと、この中だと公爵さんで騎士団長さんだから偉い筈……
と思ったら違いました。今は半ば同盟関係にあるけれど帝国とは独立したエルフさんの纏め役のノアさん、魔神族のお姫様なアルヴィナちゃん、帝国の皇女様なアイリスちゃん、一応聖女?なわたし
何だか可笑しいですけど、立場としてはガイスト君が一番下なんですね今……
皇子さまの為に集まってくれたみんなが凄い人で嬉しいです。嬉しいんですが……
「いや、だからもう皆で手分けしてちょっとずつで良いじゃんいがみ合ってないでさ!
ゼノ君が可哀想だよ」
あ、リリーナちゃん!本物の聖女様までも、金銀の杖を手に牢にふらっと現れました。
「そうです、独占なんてしなくてもっていうか一人じゃ皇子さまは止まってくれないです!みんなでやりましょう!」
ぎゅっと握りこぶしを作ってわたしは主張します
「……そうね。アナタそういう人だったわ
しょうがないから、銀の聖女様に免じて今回だけよ?皆で手分けしてあげる」
「えへへ、ごめんなさいノアさん。ちょっとワガママで」
「良いわよ。アナタが自分より
くすりと優雅にノアさんは微笑んで、包帯をくるっと周囲を見回してから、はい、と4つに切りました
「……一応、ありがとう」
少しだけ不満げにアルヴィナちゃんはその包帯のうち、一番短いのを受け取ります。アイリスちゃんも同じくらいの長さで、わたしはそれより結構長いですけどノアさんの分程じゃないです
あはは、ノアさんって結構皇子さまの事になると独占欲みたいなの出しますよね……って思いながら受け取って
「いや私のは!?」
「無いわよ。立場を弁えてくれる?」
リリーナちゃんには渡しませんでしたね、ノアさん……
「いや私って一応ゼノ君の婚約者で聖女だよ?偉いよ?
何なら私って女神様に選ばれたんだし、同じく女神の加護を受けたエルフ族の上位かもなんだけど」
「ええ、だからこそ不要でしょう。アナタ、自分が聖女だと言うならエルフの包帯に頼らずその自慢の伝説の神器で何とかしたら?」
どこか挑発的なノアさんに、桃色髪の聖女様は一瞬むっとしたように眉を上げて……
「そういや杖があれば一応補助魔法とかゼノ君に効いたし、回復魔法も弾かれたけど他の人みたいに反転してダメージになるなんて現象じゃなかったし、わざわざ恩売られる必要ないか」
あっさり納得して頷いたのでした