蒼き雷刃のゼノグラシア ~灰かぶりの呪子と守る乙女ゲーシナリオ~ 作:雨在新人
「修学旅行か……」
原作では新年の後の箸休めみたいなシナリオだったな。新年って聖女と誰が一緒にパレードするかー等色々フラグがあって好感度調整や何やらが面倒(これは男主人公でも同じ)で結構疲れるんだけど、修学旅行は基本全員登場でキャラ分岐が少ないから割と気楽にプレイ出来るんだよな
「ボクも行く」
と、おれの服の袖を握ってくるアルヴィナ
「いや、それは分かってるさアルヴィナ」
連れていくのは確定だ。置いていくはずがない
「おう、俺様だけじゃなく、そこの犬っころも行く前提で色々と頑張ってたぜ聖女様方がな」
「有難い話だな。で……」
息を吐いておれは相手の言葉を待つ
「修学旅行関連で何が問題なんだ?」
「ああ、それか。簡単だぜワンちゃん一号
「ああ、基本5人でグループ組んで龍海の畔のあれこれを回るんだよな」
ちなみに当然息抜きに水着で海だー!とかの話もある。女性向けでもそういう話あるんだなってちょっと思った覚えがあるな
いやギャルゲ版だとヒロイン達の水着姿なんて欲しがられるに決まってるけど、女向けで男の水着とか見たいのか疑問だったが需要あったらしい
が、おっ?と白桃の青年から意外そうな声と顔を返されておれはちょっと目をしばたかせた
「間違ってるぜワンちゃん!」
「いや何処が」
「いやさ行き先よ」
……は?と首を傾げる。龍海広がる海辺の街が修学旅行先だ。そうじゃないとせっかくの学園もの時代なのに水着イベントとか無くなってしまうだろ。唯でさえ二部は真面目に戦闘しなければいけないし、学園も内陸部に存在するんだから旅行で海行かないと
「聖女様方があってこそ今もこの街があるって、トリトニスの街そのものが修学旅行先をうちにしてくれって言ったそうな
これも縁の為せる技」
「そう来たか」
例年は海なのにエッケハルトとか男子勢がアナ達女の子の水着がーっ!と喚いて……喚いて……
ぽん、と手を打つ。いやあの街国境だから原作ではわざわざ海じゃなく他国と緊張走らせかねないあっちへ行く理由が無かったってだけで、それこそあそこ湖だけど十分泳げるし別に水着イベント的には問題ないのか
「だが、まだ恐らく結構な範囲が瓦礫だろ?」
主な被害はヘル、X、そしておれ達によるもの。下手したらおれと頼勇とエッケハルト(ジェネシック・ティアラー)が壊した家が魔神によるものより多いかもしれない。反省点だ
そして流石に二ヶ月半前後で完全に復興が終わるほど、魔法文明とはいえ便利ではない筈
「だからこそよ。あれだけの瓦礫が生じる大激戦、それを行って我らが街を護ってくれた聖女様方は復興の際にも是非!是非!絆と勇気をくだされ!
ってこった」
ケラケラと愉快そうに笑うロダ兄
言わんとする事は分かる。分かるんだが……
「正直、護るために必死に頑張ったの聖女よりアルヴィナや騎士団の面々なんだけどな……」
ぽつりと呟いてしまう
そうだ。さらっとアルヴィナが死霊として確保したと言ってたおれとアナの盾になった彼等の方がよほど頑張ったのに、聖女様!しか言われないって何だか悲しい
本当に勇気あったのは、名も知らぬ者達。それでも称賛は尊い者のみという悲哀を感じて……
「はっ、何を落ち込んでいるワンちゃん一号。だから、俺様達直接縁があった者が覚えて感謝するんだろう?」
はっ、と目をあげる。白桃のアバターは、眩しい笑顔を浮かべていた
「それが縁、死によって切れること無い未来への導線よ」
「……そうだな、落ち込んでても仕方ない」
ふぅ、と一息吐いて心を切り替える
「……で、行き先がトリトニスなのは分かったが、そこが問題なのか?」
「いんや、ワンちゃんが言ってた五人ってのが問題よ
当然聖女二人を同じにする訳にはいかない」
そりゃそうだなと頷く。オリエンテーリングと同じだ
「で、よ。俺様でも当然分かる話になるが、あっちの銀髪聖女様はワンちゃん一号の事が大好きなんで、必然的にあっちと組むんだろ?と思ったわけなんだが」
あ、続き読めたわ
「その当人から皇子さまはもう一人の方の聖女側に行くべきですと推されて、それはどうよって俺様大混乱
なんで、ワンちゃん一号当人に話を聞こうって事」
「……ボクは?」
不安げなアルヴィナが、上目でロダ兄を見詰めていた。絶対別々にされたくないとばかりにきゅっと握られるおれの袖が皺になる
「そこはワンちゃん一号と同行確定。引き離したら暴走を止められないとさ」
うん、それはそうだな。アルヴィナ自身、ぶっちゃけおれに味方するとは公言してるが人間のために戦うとは……実は一言も言ってない。おれとアナの味方でしか無いんだよなまだ……先は長い
良しとばかりに頷くアルヴィナ
「……んで、何でそうなるんだ?」
「一応、天光の聖女リリーナ様とは解消する事を前提に婚約者って事になってる」
「なんだその縁、愉快か」
「ボクは認めてない」
いや、アルヴィナに認められる認められないは関係ないのでは?
「……ごめん。ボクにも押し付けられた婚約者居たから文句言えない」
カラドリウスが哭くぞその台詞!あいつ最期までアルヴィナ想って死んでったのに押し付けられたで流してやらないでくれ
「だから、アナは遠慮してくれたというか、おれが社会的に死なないようにしてくれたというか……」
「成程成程、ならば」
「え、ボクあーにゃんと一緒が良い」
と、即刻決まりかけた話を中断させたのはアルヴィナだった
アナ側に入ると言い出した当人はというと、本気でそれが当然という顔
「アルヴィナ」
「ボク、あの聖女嫌い。あーにゃんと一緒かアレと一緒で後者を選ぶ意味がない」
アナ、好かれてるなぁとは思うが、それを良しと即座におれは言えずに口の中で言葉を転がす
「皇子、それで良い?」
強い意志を持った瞳がおれを見上げる。通らない筈がないと思ってそうで、何とも返しにくい
だが、なぁ……
何度か告白されてるだけに、おれって割とアナの事苦手なのだ。こんなおれを何かと救おうとしてくるし
決して嫌いじゃない。ただ苦手。おれにそう想いが向いていないリリーナ嬢の方が気楽に接することが出来る
「……いや、それは」
「俺様は任せてるぜワンちゃん一号」
うん、こういう時ロダ兄は欠片も役に立たない。自分達で決める縁ってなるとおれと頼勇の時みたいに完全に見に回ってしまうからな
「アルヴィナちゃん」
が、助け船は背後、意外なところからやって来た
そう、話題の渦中の人、腕輪を淡く光らせた銀髪聖女アナスタシア当人である
「……あーにゃん」