蒼き雷刃のゼノグラシア ~灰かぶりの呪子と守る乙女ゲーシナリオ~ 作:雨在新人
「うっみだぁーっ!」
その肉体を晒しながら、人工的に魔法で維持された砂浜……から少し離れた小型魔導船の舳先で両手を拡げ、ツーサイドアップの桃色髪の少女が楽しげに叫んだ
「いや湖だぞリリーナ嬢」
「えー、お約束だし、湖には見えないくらい広いから良いのゼノ君!」
ぷんすか、とするも怒っては居なさげな桃色の聖女様。そのすらりとした体を覆うのは、薄黄色いフリルで彩られた花柄のオフショルダービキニ。乙女ゲー主人公らしく女の子として蠱惑的な魅力を(おれにはちょっと分からないが)ふんだんに湛えているだろう曲線美を描く双丘をしっかりと包むくらいには布面積が広く、お腹や胸の谷間は見えているからちょっと目線を逸らしたくなるが直視出来ない程じゃない。何と言うか、蠱惑的なんだけど清楚さが失われていない印象、流石の乙女ゲーヒロインって感じ
恥ずかしくて連打で飛ばしまくってたし、水着での一枚絵とかきゃっきゃするおまけシナリオが追加されるDLCはおれが貰った
アナが慰霊碑に現れて少ししたら聖女様だ!と人が集まってきてしまったので其所から離脱。今日明日はまず遊べというスケジュール(それで良いのか修学旅行)なのでほぼ自由行動のため、結局リリーナ嬢等が到着する頃には言いくるめられて共に湖で遊ぶ予定にされていた。
行き先は湖上の浮島の一つ。港からほど近いその無人島でキャンプしようぜという事で……完全に追い込まれて巻き込まれた。最近アナが怖い
理由が分かるからなお怖い。でも、何が怖いのかは自分でも理解できなかった
その想いに応えるわけにはいかなくて。こんな塵屑、愛想尽かせと言っていて。それでも本当に何時か愛想を尽かされる未来でも浅ましく恐れてるんだろうか
「……聖女様、落ちないようにだけ頼む」
と言いながら船を操舵するのは頼勇。何時もよりは少しラフだが、防水とはいえ金属の左腕では泳ぎは苦手だと長ズボンにライフジャケットで肌はほぼ見えない。DLCでも頼勇が参戦する時期以前のイベント追加だから見れない貴重な絵面だ。って水着じゃないけど
というか、当然のように操舵する辺り本当に何でも出来るな頼勇、流石スパダリ
その横で泳ぎにくいポニーテールをほどかず優雅に船上で本を読むのはノア姫。教員のワタシが一緒になって騒いでいたら困るでしょう?と湖で泳ぐつもりは無いらしいが、浮く気はないわとしっかりと水着は周囲に合わせて着てくれている。
が、正直見られて困る体してないしあまり水着の必要性は感じないわと身に付けているのはチューブトップ型でリボンのように広がったバンドゥビキニというらしいセパレートタイプ。割と目のやり場に困る布面積だ
「えへへ、水着なんて恥ずかしいですけど、こういうのも良いですよね皇子さま
わたしたちが頑張ったから、皆楽しめると思うとちょっとだけ嬉しくなっちゃいます」
慰霊碑に手を合わせて意識を切り替えたのか嬉しそうに告げるのは銀の聖女アナ
その体を覆うのはタンクトップ・ビキニというらしいキャミソール型のトップスを持つ露出の少ない水着。下もパレオ付き。本人の気恥ずかしさをよく表しているし、可愛いとは思うんだが……
「……牛」
ぽつりと呟くのはエッケハルトに付いてくるアレット。モノキニというらしい前から見るとワンピース水着にも見えるが背中は空いたビキニですらりとしてそこまで起伏の無い体を覆っている
うん、そうなんだよな。恨めしそうにアレットが言うように……この中で断トツで豊かな双丘に想定よりも大きく押し上げられ、キャミソール型のトップスによって隠れる想定のお臍が見えてる辺り、何と言うかサイズが合ってない。割とゆったりした造形の筈なのに……
そのお腹をじっと見てるがなエッケハルト、お前何と言うか犯罪者に見えるぞそれ
そして最後の女性陣のアルヴィナはというと……
「新しい帽子」
おれの買った麦わら帽子(いや麦わらとは違う材質なんだが、形状が完全にそれ)を目深に被り割と良く着ているワンピースの上に上着まで着込んだフル武装。絶対に湖には入らないという硬い決意を表明していた
うん、確かに胸元に結晶生えてるからそれを顕にして人じゃないアピールしてしまう水着なんて他人が見てれば着れないか。とはいえ、少し寂しいな。後で何とか出来ないか考えよう
あ、アウィルを忘れていたが、当然のように犬かきで泳いでいる。ラインハルトのように聖女に合わせて人の形をとか言い出さないんで、特何も着ていなくて当然
ちなみにここまでの女性水着の種類は全部エッケハルトからの受け売りだ。何で女物の水着に詳しいのか……多分アナちゃんに着て欲しい水着妄想でもしてたんだろう、うん忘れよう
で、男性陣に目を向ければ、何故泳ぐ必要がある?とばかりに何時もの軍服のままのシロノワール。相変わらず空気が欠片も読めない
「太陽は水を蒸発させる、そもそも水中はニュクス等に任せれば良い」
……って、おれの視線にそんな言い訳が飛んできた辺り、単純にカナヅチなんだな多分
いや、それを知ったところで最終決戦って開けた高地だから水攻めってほぼ不可能だし原作的には意味がないんだが、少しギャップがある
そして、当然のビキニパンツ……ではなくブーメランパンツのエッケハルト。そこそこ筋肉質な体を惜しげもなく晒している。細マッチョではあるが……
残念ながら、それにきゃーきゃー言ってくれるのはアレットだけだったようだ。リリーナ嬢はキモッ!と無視を始めたし、アナはというと恥ずかしいのでとアルヴィナと共に操舵してる頼勇の居る小さな船室へ行ってしまったしな
「ゆ、勇気あるよね、彼」
と、言いながらも何だか引いてるのは黒髪の少年オーウェンだ。ゆったりとした造形のトランクス型の水着に、これまたゆったりとしたパーカーみたいなもの。魔物素材のお陰で普通の服っぽいライフジャケットもあるからそれだ
顔がやけに中性的で悪く言えば可愛いから上に何もないとどこか犯罪臭がしてしまうんだが、ちゃんと上に羽織られてるからセーフ
「男なんだろ、さらけ出そうぜ」
と、エッケハルトがそのオーウェンの肩をぽんと叩く
「アナ一筋やってろお前は」
女の子みたいな外見だからトップレス見たいだけなんだろ、アナ以外の女の子の水着もちらちら見てるの見えてるぞ
「僕泳げないし、胸にちょっと怪我してるから良い」
ちらりと少年がパーカーをはだければ、見えるのはぐるぐるとしっかり胸元に巻き付けられた包帯の姿
「何だ、なら仕方ないなー」
ちょっぴり残念がるアホを、アロハシャツっぽい上を胸元全開に羽織り、下はショートパンツタイプ、水に浮くボールと浮き輪とを持っていつかのサングラスを掛けたフル装備ロダ兄が笑い飛ばした
……ってカナヅチ多くないかこの班
「で、どうして皇子さまは普段の服で、水着を着ていないんですか?」
「水中戦を行わなきゃいけなくなった時の為、水吸った服で泳ぐ練習を」
と、おれが想定を口にするや
「いや、修学旅行でそんなん止めてよ気が散るよ!」
「……馬鹿話は寝る前の騒ぎだけにしなさい」
「ボク、水苦手だから助けられない」
「エッケハルト様、こいつ可笑しい!」
「皇子……危険だから止めよ?」
と、口々に女性陣から非難の声が飛び出す。いや、一人
「皇子さま」
たまに聞く冷えた声。アナの瞳が笑っておらず、水着でもその腕に煌めく腕輪が淡い光を放っている
「そんな危険なことやめて水着を着てください、気が気でなくて何にも手が付かなくなっちゃいます
安全に遊んでくれなきゃ怒りますよ?」
「……すまなかった」