蒼き雷刃のゼノグラシア ~灰かぶりの呪子と守る乙女ゲーシナリオ~   作:雨在新人

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提案、或いは踊る会議

「……それで、貴方の方針は?

 言っておくわよ。(わたくし)は納得した事にしか手を出しませんわ」

 冷たく、冷徹に、椅子にずっと腰掛けたまま豪奢な赤ドレスの少女は呟く。似合わないが、処刑の際に血で汚れることを危惧したのだろうドレスは、少しだけ汗の匂いがした

 

 「ドレスも変えたいし……」

 「すいません、ヴィルジニー様。しかしどうしても、後から動く程にユーゴは焦れておれへの当たりを強くします。長すぎれば『嘘付きが!』と攻めこんでくるまである

 時間は有限です、そしてそれは刻一刻と迫り始めている」

 「そう」

 「それに、おれは貴女からは嫌われてるようですから。一回で終わらせたかった、ご容赦を」

 「そうね」

 ぴしゃりと告げて、少女はカップを置く

 

 「あ、どうぞ」

 アナが空になっているのを確認して茶を注いだ

 「……相変わらず。それは他人にやらせるものよ、付き人を馬鹿にする事は品位を落とす

 まあ、今は仕方ないけれども」

 相も変わらず冷たい視線だ。そこまで嫌われるようなことをしたろうか?一応ヴィルジニーは助けにはなったと珍しく自負してはいたんだが

 

 「それはそれとして、対抗策なら簡単だ」

 「危険な賭けで?」

 「まあ、おれは当然賭ける。命くらい賭けなくて戦えるかよ」

 うわぁ、という眼。だけど、おれは知っている

 「『プロ(ヒーロー)は何時だって命懸け』。図書館に置いてた有名漫画の台詞だけど、お前も知ってるだろ隼人?

 本気でやらなきゃ人助けなんて無礼なだけだ」

 でも、と肩を竦める

 

 「お前が厭なのは知ってるし、ヴィルジニー様は巻き込まれた側だ」

 「ええ、(わたくし)達を頭のおかしい真性異言(ゼノグラシア)の内輪揉めに巻き込んだ責任、取って貰いますわよ?」

 「あ、わたしは一緒に頑張りますよ?」

 「アナ、聖女様が命を落としたら世界の終わりだから自愛してくれ。本当は誰だってそうだけど、命は大事にな

 君の肩には背負うものが多すぎるし、リリーナ嬢と五歩くらい譲ってノア姫くらいしかその責任を分けあってあげられない」

 ニコニコとした聖女様には釘を刺しておくが、きゅっと手を握られて黙り込む

 別に痛くはないが、心は少しだけ痛い

 

 「なら、貴方もそうですよ?」

 「おれの意思はまだ共に戦う皆が持ってる。竪神達が居てくれる

 でも、簡単に命は棄てないさ」

 世界のためにも、始水の為にも、勿論シュリやユーゴ自身の為にだって。伸ばす手は簡単に朽ちさせない

 

 「それはそれとしてだ」

 こほん、と咳払いしておれは続ける

 「ユーゴに勝つための種は当に蒔いた」

 「蒔いたって……ああ、あの変な問答?」

 「変な言うなエッケハルト。わざわざユーゴが煽りに乗ってきてくれたんだから活用しないとな」

 実際にはほぼおれの意思を汲んだアルデが問答してたがそれは良いや

 

 「えっと、あの問答って本当に酷かったですけど、本当にみんなわたしや皇子さま達に手を貸してくれるでしょうか?」

 こてん?と小首を傾げる聖女様におれは頷く

 

 「大丈夫だ。聖女様が居るしアウィルも居てくれて、何より妙に人気な救世主エッケハルトが居るんだ」

 「だーかーらー!その救世主って何なんだよ!?」

 「聖都でもやはりあの本は流行しましたわ。その最中、(わたくし)が常々語っていた者こそがゼノンのモチーフとなった英雄であるはず、という考察が立ったのです」

 ……アステェェル!?思いっきり目論見外れてないかお前の小説!?

 いや受けてるのを批判はしないし読んでても美化が凄くてこれおれモチーフなのか?って疑問は湧いてきたけどさ!

 

 「そして彼は、スカーレットの髪をたなびかせる炎の公子。彼こそがゼノンのモチーフだという風潮が確立し、ファンクラブが設立されるまで時間はかかりませんでした

 そしてその信仰は、現実にあの英雄のモチーフが居るならば七大天様はきっと聖女に啓示を与え彼を遣わせてくれるという、突然現れ抑圧を始めた銀腕の教王に対する希望として、誰ともなく語られ始めたのです。それこそが救世主エッケハルト」

 「うっわ」

 心底嫌そうに、炎髪の青年はぼやいた

 

 「ってか、あいつの武器どう考えても轟火の剣モチーフだろ!」

 その言葉には頷くしかない。というか、対峙したルートヴィヒ・アグノエル達は轟火の剣デュランダルを手にしたおれを見て魔神剣帝扱いしてきたからな。少なくとも、原作ゲームの続編だか派生作品だかで出てくるifのおれとしてのゼノンはそうなのだろう

 「炎の公子。世界を護る炎の剣。その二つを結び付けるのは当然でしょう?」

 「オイ」

 思わず半眼で、おれはオリハルコンブロンドの少女を残った片眼で睨み付けた

 

 「あの、ヴィルジニーちゃん。あの剣は皇子さま達皇族の誇りですから、関係ない血筋の人こそ相応しいって侮辱ですよ?」

 「……忌み子として、貴方に負い目を持つ者として、数度なら聞かなかった事にはするけれど、あまりに言いすぎれば咎めさせて貰う。おれとて皇族、あまり帝国そのものへの侮辱を無視は出来ないから」

 言いつつ、でもまあたまにはとおれほわざと視線を外した

 

 「ってか、重荷過ぎるんだけど!?何してくれてんのヴィルジニーちゃん!?」

 「大丈夫だエッケハルト」

 くわっ!と更に抗議を続ける友人の肩におれは手を置く

 「まああの剣とか要らないし持ちたくないから良いんだけど」

 「とっくの昔にお前は巻き込まれてる。その背を見ろ

 同じ七天御物と、更には竪神に託されたLI-OH絡みのシステムまでも背負ってるんだぞ?今更逃がすか」 

 「逃、が、せ、よ!」

 「いや、逃さん。お前だけは絶対に、そもそも逃げられると思うなよ?」

 「さっきと言ってることがちがぁぁう!助けてー!アナちゃんこいつを止めてくれー!」

 「皇子さまは優しすぎますから、本当は貴方がやった方が良いって思ってることまできっと一人で無茶してやってくれますよ?」

 「嫌だぁぁっ!?俺は君とイチャイチャしたいだけでそんな地獄味わいたくなーい!」 

 「というかヴィルジニーに失礼だろお前」

 ぺしり、とハリセンを叩きつけるおれ

 

 「忌み子の存在が失礼ね」

 が、それは彼の頭を叩く前に虚空で言葉の刃に迎撃されて静止した

 

 「ってか、話が逸れた

 端から命を賭けるのはおれと桜理……っと、オーウェンだけで十分だ」

 「わたしも出来る限り頑張りますよ?」

 「いや、あいつは、ユーゴは恐らくおれの推測が正しければ……おれやオーウェンの前世で因縁がある相手だ

 おれ達が、あいつを今度こそ間違ってるって教えてやりたいんだ」

 言いつつ内心で謝る

 そういや桜理に聞いてなかったからな。自分を虐めてた三人組のうちのリーダー格、竜胆佑胡がユーゴだとして、何をしたいだろう?

 それでも身勝手に話を進める

 

 「で、だ。あいつには味方が居て、お前も見たと思うけどユーリってメイドや騎士達が居る

 そいつらに関して、ユーゴは相応に執着心を持ってるんだ。だから、殺さないで、けれど捕らえてやればあいつの行動を一部止められる」

 「その為の根回ししろってか?」

 「ああ、頼む」

 「自分でやれよと言いたいけど?」

 「いや、これはおれが言ってもダメなんだ。勝つために、あいつを止めるために、未来のために

 恨めしい筈の、いっそ殺せるなら殺したいと思われてるかもしれない恐怖のユーゴ一味を……

 殺さずに、寧ろ出来る限り傷付けずに時が来た際に捕縛するのを手伝えって話なんだから。余程皆が『あの方が言うなら仕方ない』と思う相手が頼まなければ、従ってくれる筈がない。だから、頼む

 ヴィルジニー様、エッケハルト、アナ。この国で特に皆が希望を抱いている皆が手を貸してくれなければ、足並みを揃えられずユーゴを怒らせるだけに終わるんだ」

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