蒼き雷刃のゼノグラシア ~灰かぶりの呪子と守る乙女ゲーシナリオ~ 作:雨在新人
「どこまで、出来るかなっと!」
鞘を捨て、青年が斬りかかってくる
それをおれは左手に逆手持ち……というか、鞘としては逆手にまるで刀を普通に握るように手にした鞘でもって撃ち払った
「はっ!忘れたか!てめぇの刀は雷の」
「そっちこそ、オリハルコンの性質は魔力遮断!金属の鞘だからって電導性はほぼ0だ!」
ばちりというスパークが伝って来ることはない。それを分かっているから鞘を稲妻を待とう刀身と合わせ、そのまま押し込む!
「ちっ!上手く撃てねぇ!?」
明後日の方向へと迸り、漆黒の夜空を照らす雷撃。使いなれていないおれの愛刀から、オリハルコン押し当てられたままおれへと赤雷は飛ばせないようだ
やはり、弱い。遊ばれている。おれの愛刀よりはまだ別の武器を使った方が強いだろうに!
「っ!はぁっ!」
だから、貰い受ける!
おれはガントレット状にしたパーツから一瞬だけ結晶の刃を伸ばし……
「はいバリアっと」
「甘い!」
張り巡らされる結晶壁を同質の力で中和して粉砕。そのままユーゴの指を貫こうと刃は走る!
「げっ!?」
それに対して、青年は手にしていた刀を捨てる事で対処した。完全に武器を捨てて飛び下がり、虚空から同時におれに向けて一条の蒼光が降り注ぐ
「月花迅雷よ!」
手首をねじ曲げて鞘で無理矢理手放された刀身の峰を弾いて手元に引き寄せ、握り込んだ愛刀の刃でそれを迎え撃つ
こんなことしなくても召喚すれば楽だが、そうしたら斬り結んだ意味がない!
「っ!ぐっ!?」
重い!何度か頼勇のエクスカリバーと斬り結んだ事はあるが、それとも遜色無い威圧感。ならばこれが!
「ガラティーンっ!」
「そう、その通り!」
カッ!と輝く黒鉄の腕時計。それを大きく天に向けて掲げ、その手で空を指差しながら青年は叫ぶ
「これこそがガラティーン!そしてこれが!」
ぱちん、と指が鳴らされた
その瞬間、おれの全身に光の鎖が絡み付く!
「よくやったユーリ!」
「はい、ゆ、ユーリがやりました!」
そう、メイド少女の放った拘束魔法である
「油断したな、阿呆」
何処かつまらなさげに、掲げた手を下ろし、単体で鍔迫り合いしていた剣を手元に呼び戻しながら金髪の青年は告げる
「くっだらねぇ」
「ああ、そうだよなオーウェン?」
が、おれは冷静にそう言葉を紡ぐ。そうだとも、どうせ誰か呼んでおれの欠点である魔法に弱い点を突いてくるなんて百も承知。単に避ける必要性すら感じてなかったというか、わざと食らって誰を側に置いてるのかを見たかったのが本音だ
そこで殺しに来ていたら相応に避けたが、拘束しに来るなら食らってやろうじゃないか
だって此方だって一人じゃないのだから
「う、うん!『グラビティ・ケージ』」
おれを縛る鎖が、光を捕える重力波の檻によって体から引き剥がされて地面に落ちる。そう、桜理の魔法である
だから護れるようディオ団長連れて桜理救出から動いたってのもある。魔法には魔法、おれには出来ずとも桜理になら出来る!
「っ、ちっ!?そんな手が」
「お前も同じだろ!」
言いながら、一気に踏み込みをかけるおれ。それを迎え撃つは、ガラティーンと呼ばれた巨大剣
系列であるエクスカリバーは刃全体がほぼ完全に結晶で出来ていた。が、こいつは巨大な金属の刀身に結晶が付着しているって感じだ。恐らくは旧式で、安定して精霊結晶を刀身として制御しきれなかった頃の武器なのだろう
が、重さは似たようなもの。愛刀の頑丈さにものを言わせて一撃だけ打ち合い、おれは大きく距離を取る
「はっ!さぁどうするんだ?っていうか……」
その嘲りの瞬間、おれの横を掠める何者か
そう、あの日アルデを襲った小さな結晶刃のビット兵器だ
ユーゴの意思により飛来したそれが、背後の黒髪の少女へと襲いかかる
だが
『ルルゥ!』
更に上空から降ってきた巨大な白影に叩き伏せられ、鋼の鳥は地に落ちた
「良くやったアウィル!」
『クルゥ!』
嬉しそうに吼える天狼、そして……しなる靭尾に誘われ、黒髪の少女はそのゴツゴツした甲殻に覆われた背中へと導かれる
「ゆ、ユーゴさまどうしましょう!?」
「下がってろそこのメイド。さぁユーゴ、互いに札は切ったがあまり意味はない。こっから無駄な殴り合いは止めて、おれ達だけで決着を付けようぜ?」
煽るように刀の切っ先を喉元に向けて、おれは呟く
正直な話、ここでユーリの方が出てくるのは少しだけ予想外だったが、まあ分からない展開ではない。あっちの騎士かと思ってたが……
この煽りにも意味はある。ユーゴは恐らくだがあまり味方を引き連れていない。そろそろおれが来ると思っていたからこそ、人を減らした節がある
それを確かめる為に、かくし球があるなら出させようって話だ
「ユーリ、離れてろ。あいつは危険だからな」
そしてユーゴはそれに乗ってくる。わざわざおれの手に掛かってくれる
良いぜ遊んでやるよ
「オーウェン、アウィル。互いにあまり不干渉を貫いてくれよ」
「う、うん。頑張って獅童君」
「ユーゴさまは勝ちますから!」
そうして、互いに味方が斬り結べる範囲から離れたその瞬間、おれは一気に彼へと刃を閃かせて突貫していた
「伝、哮」
「はっ!一つ覚えかよ!」
その瞬間、腕時計のベゼルに触れたユーゴの眼前に分厚い結晶壁が出現しておれの行く手を阻み激突を誘発する
少なくとも、彼はそう信じていたろう
だが……残念だったな!
おれは地を強く蹴って、壁ごとユーゴの頭上を飛び越えると構えた刀から放たれる雷を足場に蹴って無理矢理飛び込むベクトルを真下へと変え、靴がいつものではない為小さく焦げる煙と割れた石畳の破片を散らしながら着々、そのまま彼の背後、ほんの少しの距離で飛び降りつつ納刀した愛刀を深く構える!
紡ぐは魂の残響華
「迅!雷!」
「ぐぎっ!?」
驚愕に見開かれた眼、そこから更に恐怖で開いていく口元。首を捻って振り返った青年は、抜刀術の構えの前に間に合わないことを察知したのか地面に突き刺したガラティーンを抜いて立ち向かうのではなく重力球を発生させ……
ああ、お前は間違ってないよユーゴ。確かにおれの迅雷抜翔断はその手で逃げる方が正しい。飛び込んでくる一発目を斥力フィールドだかで止めて、抜刀斬り上げ部分を転移でスカす、本当に正しい対処だ。
だからこそ、お前は甘い。知らないだろうし見分けも付かないだろう。ゲームではおれの抜刀構えモーションって一種類しかないからな!何を撃つにしても同じ構えからだ
だが、迅雷抜翔断はもっと踏み込みを強く、深く構えてから放つ奥義!そう、こいつは……
「だが、これで!」
「吟うは未来の刃、何者も阻めぬ魂の雪華」
重力球に呑まれようが、バリアを貼ろうが。実体の無い魂刃の奥義の前に意味はない!
「……ち、違っ!?この奥義は」
「《雪那月華閃》!」
振るわれる刃が、総てを透過してブラックホールに呑まれていた青年を逆袈裟掛けに斬り裂いた