蒼き雷刃のゼノグラシア ~灰かぶりの呪子と守る乙女ゲーシナリオ~ 作:雨在新人
結晶槍を手に四枚の翼を形成はためかせる青年を追って空を駆け、銀腕のカミの動きを見る
未来から攻撃が翔んでくるとはいえ、頻度はそこまで高くはないし、攻撃を飛ばしてきたとしてその先もない。避ければ終いだ
となれば、本体を注視して攻撃を捌き、隙を突く。一人では捌く為に手一杯で手が足りずとも、シロノワールと二人ならば何とかならないこともない!
そう思った瞬間、雷鳴が迸る。ブリューナクの構えだろう
「っ!?お前、お前は!」
そんな少し焦った声と共に轟く雷槍が空を裂く
これは……おれ狙いじゃないのか!ならば!
「伝、哮、雪歌ァッ!」
空中で噴き出す翼の粒子を蹴って加速、強引に距離を詰める!
「おわっ!?」
が、刃が届く寸前で腕を振り切った巨神の姿がブラックホールに呑まれて消える。そして……
「ビット!ちっ!無理かよ!?」
10km程離れた遥か遠くでエラー吐いたビットをもう一度使おうとして固まっている姿が見えた
重畳、完全にエラー吐いてくれてなきゃ、本体と別に動いてくる大量のビット兵器に二人して擂り潰されて終わりだからな!
ってか遠い!聖都の街門の遥か外まで逃げてるんじゃねぇよ!?届かないだろ!
ってか、その逃げムーヴされたらタイムリミット持ちのおれに勝ち目無いんだがな!
そう、タイムリミットだ。おれ自身当然分かってはいるが、シロノワールが指摘してくれたようにこの尽雷の狼龍形態は長くは持たない。フル詠唱かつアステールの母の魂が自身を燃やして力を貸してくれていたりと散々補助があるが、それでも長い時間戦ってはいられない
「それでも、なぁっ!」
託された想いが詰まった愛刀の鞘を撫でて、おれは叫ぶ
負けるわけになどいくものか。討ち果たす。おれと同じく沢山の悲しみを背負うはずで、けれどもあまり背負わなくて良いように改悪(普通は改善としか言いようがないが、改悪で良いだろうこんなの。本来の使い手の悲しみも何もかもほとんど無視して戦える単なるぶっ壊れなんて……いや製作者的には寧ろ有り難いのか?使い手さえ真っ当ならばプラスは多いし……)された鋼の神を
「グングニールよ、その力を示せ」
「させねぇよぉっ!」
更に降り注ぐのは複数のビット兵器から放たれるビーム砲
いやビットは潰したはずだ!と叫びたくなるが、良く良く考えてみればそもそもさっき放たれた65535個くらいあるだろう超小型ビットの類いとそれ以前からユーゴが使ってた剣のようなビットって別の武器なんだよな
……お前どんだけビット兵器積んでんだよ!?
そんな悲鳴を心の中だけで抑え込んで飛んできたビームを切り払い、シロノワールの投槍をフォロー。その瞬間、夜明けを待つ暗い空に光が走った
「ガンライズ!」
光と共にブラックホールから出現するのは、7機あるらしいソードビットそれぞれに対応したろう全長3m程の機械人形。その背にビットが装着されれば、人形の頭の半分以上を占める巨大な単眼に光が灯り起動する
「ブリューナク!オーバーライド!」
そして、七機の小型機械人形が全員背中に背負っていた雷槍射出筒から巨大な雷槍を同時に撃ち出した
それすらもシロノワール狙いか!
「人気者だな、シロノワール」
「冗談は止めて欲しいものだな」
ブゥン、とその姿がブレたかと思えば影に潜みシロノワールの姿は遥か遠く、雷槍の軌道から大きく離れた場所に出現する
が、その瞬間には銀の拳が降り注ぐだろうと判断し、おれは翼を噴かせてそちらへと向かう!
「ちっ!邪魔すんな!さっさと片を付けないと……」
おれが斬ろうとしているのを理解してか、攻撃は来なかった。やはり二人で戦えば何とかならないこともない
そして、零れた言葉には違和感がある。まるでシロノワール相手に焦っているような……どうしてだ?
と、思ったところで不意に思い出すのはゲームでの話。そういえばだが、魔神王テネーブル第三形態って時間制限あったな
いや、正確に言えば龍気レベル8で発動する【反逆の先導】が全マップ対象の軽減不可無効化不可の即死火力っていう形で無理矢理ゲームオーバーにしてくるんだが、ターン毎にレベルが上がるから実質8ターンで決着付けなきゃ負けになるんだ
そうか、それか。アガートラームがどれだけ強かろうが強制即死かつどんな防御手段も効かないあの一撃で中身のユーゴ自身が死ぬ可能性を恐れているのか
「シロノワール、ひょっとしてだが、【
そう遠くから問いかけるおれに対して、妹のように白き狼耳の生えた青年は小さく笑った
「さぁ、どうだろうな?」
……あ、これ撃てないパターンだな。撃てるなら撃てると言うだろう、王として皆を不安がらせないためにか出来ないという言い回しがほぼ無いだけで、誤魔化すってことは出来ないのだろう
「撃てるかどうか、敵に教えてやる筋合いもあるまい?」
尚も呉越同舟というか、敵だとアピールしてくる彼に仮面の下でにっ、と笑っておれは右翼を噴かせて背を向ける。背中を預ける形だ
「ならば、相応にやるぞシロノワール」
「ふん、まあ良い。アルヴィナに涙などあまり似合わんからな。相応に協力してやろう。まずは、あの小型人形を落とす、異論は?」
「無い!桜理達を狙われたら困るからな、本体外に動かせるものは、徹底的に最優先!」
「了解だ」
と、不意に手にした愛刀の柄が震えていることに気が付く
そう、か。そうだ
「シロノワール」
「まだ何かあるのか?」
「一つ、おれに切り札がある。お前の中にフュージョンしたアウィルほ居るし、アウィルの力も使えるんだろう?」
「だろうな」
青き一角を良く見れば額に生やした青年は小さく頷く
「ならばきっと……」
あの時は出来なかった。けれども、天狼が手を貸してくれ、何よりもこの手に雷刃があるならば!きっと届く
天狼と共に天空山で修行させて貰った際に何となく試して使えなかった、あの奥義を!本来は哮雷の剣が放つ、銀を穿つ
「良いだろう、奴等を片付けた後合わせてやる」
「といっても、恐らく一撃では崩せない」
「ふん。私は太陽をこの手に納める
軽く槍を素振りする魔神王に向けて頷いて、おれは空を蹴った
「ああ、行くぞ!」