蒼き雷刃のゼノグラシア ~灰かぶりの呪子と守る乙女ゲーシナリオ~ 作:雨在新人
大顎の中で、おれはアイリスが展開してくれているモニターを通して周囲を見回す。ティラノの喉に愛刀を突き立てて無理矢理制御。荒れ狂う冷気と熱波を束ねて纏いながら、融合した百獣の機神は吠え猛る
その眼前に見えるのは、まるで仏かのように巨腕を組んでいる銀腕の暴走機神。座禅のような姿形で空に浮かぶソレは、本体は微動だにせず冷気による氷のみを飛ばして攻撃を仕掛けてくる
だが!
「……効くかよ」
周囲に溢れる炎がそれを融解する。この姿のLI-OHを……いや、ジェネシック・タイラントを前にその冷気はほぼ意味がない。触れる前に吹き荒れる熱波によって消滅する
とはいえ、そう長く持つ合体形態ではないがな!本来から比べて、ジェネシック・ルイナーが欠けているせいで機動力と火力はあるが出力バランスが保てていないのだ。ってか、熱波が出続けてるの、エンジンの同期が出来ずに半ばオーバーヒートしてるからだしな!
が、そんなもの関係ない!
ぶん!とおれの思いに合わせて刃のような爪が振られて……眼前の機神の姿が微動だにしないままブラックホールに呑まれてやはり何処かに消える
「っ!逃げるか」
「ってか武器とか無いのかよゼノ!」
「アイリスが転送してくれるのを待つしかない!」
「あぁもう使えねぇな!」
と、叫ぶと共におれを食うように閉ざした機恐竜の顎が開き、咆哮する。その音響と外の冷気と熱気に二分された世界に少し咳き込めば、巨神の手にはアイムールを模したろう巨大な片手斧が出現していた
「助かるものだな、皇子」
「ああ、大助かりだ!」
砲撃……もとい豊撃の斧アイムール。けれども、案外短いがその分太い柄は、確かに砲らしき意匠も持つ。そう、柄から砲撃出来るビックリギミック武器なのだあいつ
だからこそ、おれは頼勇とは目配せどころか一瞬の言葉だけで思考を交わすと、右手に現れた斧を刃を持って間違った構えかたをする
が、その先端に魔力は、熱気は溜まっていく
「お前の絶望は、払ってやる。払われなきゃいけないものだから!」
「ああ、己すら疑問を抱く滅びという名の救済に、従ってやる道理はない!
放て!」
が、おれに続く彼からも名前は出てこない
「エッケハルト、お前の武器だろこの技の名は」
「いきなり振るんじゃねぇよ厨二病末期患者ども!?」
「ならば!バスターズドゥーム!」
全身を覆う冷気を蹴散らすように叫んだ瞬間、片手斧の柄から極太のドラゴンブレスのような発生源に渦巻く光を生じるビーム砲が放たれ、空を座禅したまま飛ぶ覇灰に乗っ取られたアガートラームを襲う
それすらも転移で逃げる銀腕のカミ。が、その瞬間に天に現れたその機体の右腕から光が消えたのを見逃す気はない。ボロボロのまま縮退炉を使いすぎたんだろう、一時的なオーバーヒートを起こしたってところか!
「放て!パラディオン・バスター!」
そのままおれは多分出来るだろうと高く掲げさせたアイムールの柄を軸に刃をぐるぐると回転。後を頼勇に任せれば、巨大化したその斧は、天空から大切断!一回転させるように振り下ろす!
「『抗 う な
救 い を』」
が、組んでいた筈の左手を翳され、ソレに触れた瞬間、斧は跡形もなく灰となって消滅し、機神の手は空を……切ると思ったか!
「アイリス!」
『お兄ちゃん、これが、限界……』
虚空に伸ばされた巨爪腕の元に忽然と現れるのは巨大な鋼剣。何度も使ったことがあるダイライオウ向けの武装!
「行けるな、竪神!」
「ああ、譲渡完了!少しの間だが、好きに動け!」
が、それを阻むように虚空から5体のナニかが現れる。鎖と翼、そして変な場所に浮き出た美少女顔。恐らくはXと呼ばれる精霊の下位種、AGXが本来倒そうとしていた敵だろう
「おいゼノ!」
「臆するなエッケハルト!ルー姐もシロノワールも居る!それで十分だ!」
おれ達へ見向きもせず地上へ向かう二頭をガン無視するよう諭し、残りも無視。トリトニスで脅威を誇ったビームが三条迸ってくるが……無駄だ!幾らなんでも、あの日苦戦したビームに負けるほど、託された想いは弱くはない!
「任せろ!龍!覇!迅雷っ!断!」
そしてティラノの顎の中で喉奥に突き立てた刃を通して、迸る黄金の雷を放ち、不格好な上半身だけ装甲した機神は刃を腰に溜めて空を走る
が、それすらも……
「『救 い を。止まるが良い』」
右手を翳された刹那に灰となって消滅する
とはいえだ!
「負けるものか」
「ああ、負けてやる道理はないな、辺境伯、そして皇子!」
「己すら疑問を持つ救済を掲げてる紛い物に!負けてなんて!やれるかよ!」
かっ!と巨大な顎が開く。吹き荒れる猛吹雪と熱波の中、おれに向けて手を伸ばしたまま凍りついた銀腕の巨神の使い手が見える
「吠えろ!ジェネシック・ティアラーッ!」
「いや俺の体ぁっ!?どうなってんの!」
叫ぶエッケハルトを無視して、頼勇の手により振るわれた巨大な爪が両腕を既に翳して力を振るい、無防備となった胴へと向けて振るわれる
「止 ま れ」
その瞬間、銀腕の巨神の瞳が強く輝いたと思えば、機体全体が凍りつく。無視していた覇灰の
それでも、動きを止められたとしても!消滅には至らない!ならば、勝てるに決まっている!
カッ!とその顎がさらに開かれた瞬間、おれの全身を光が押し出す
「ライオウ・バスター・アァァクッ!」
「っ!これが、おれたちの、答えだぁぁっ!」
それに押し出され、銀の凶星となって。纏う吹雪のフィールドを貫いたおれの刃は、確かに凍てついたコクピットの中央に鎮座する青年の胸を貫いていた
同時、吹雪が氷柱となりおれの腹を貫く。が、もう遅い
「……何 故 だ」
「……自分が一番良く知っているだろう、残骸」
吹雪が晴れる。何もない空に浮かぶ虚ろな銀腕の神が、暁の光に斜め下から僅かに照らされる
ふっ、と。暴走の果てに少しだけ見えたその存在は、笑ったように思えた
それと同時、銀腕の巨神はおれごと転移の重力球に包まれる
っ!まだやるのか!
そう思ったのも少し、巨躯は地上へと転移するとまるで満足したように唐突にその目の光が消える。そして……
ぐらり、と傾く機体。エネルギー供給が遂に完全に途絶えた、三つのエンジン全てがまともに機能しなくなったその巨体が遂に傾ぐ
氷が消え去り、繋がれていた銀の腕が地に落ちる。そして……銀腕のカミは、漸く膝から大地に崩れ落ち、少し傷は入っているものの精悍な頭部が天を仰いだ
ラインは消え、鼓動は止まる
「覚えておけ、皆が繋いだこの力が……っ、
眠っていろ。苦しくても、おれ達は世界にも己にも、まだ消えたいほどに絶望しちゃいない」
銀腕の巨神から力が消え去り、鋼のカミは完全に沈黙した
同時、視界が揺れ、漸く明るくなってきた世界が真夜中を超えて暗くなる。いや、限界ギリギリから本来エネルギー射出する技でおれを打ち出すのは無理があっ、た、か……