蒼き雷刃のゼノグラシア ~灰かぶりの呪子と守る乙女ゲーシナリオ~   作:雨在新人

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異伝 満ち溢れる極光

「っ、どうして」

 完成しかけた詠唱を思わず一旦止めて、わたしはそう呟く。目の前で重力に苦しむ騎士の皆さん(特に竜騎士さん達や、皇子さまがディオ団長さんと呼んで信頼していたあの人の部下の亜人さん達)が喉を掻き毟る姿を見せ付けられて、思わず目を逸らしたくなってしまう

 

 でも。良かったって感じます。今唱えている魔法は、悪性の毒の治癒魔法ですから。聖女様の力が使えたら必要ないですけど、ほとんどどんな毒でも治せちゃう、水/天属性の本当にすごい魔法なんです。これをあの騎士さん達に向けて使えば、すぐに治して……

 

 けれど。目の前で緑色のバリアが凍りつき、精霊結晶?って言うらしいものに近くなって、ぱりんって薄氷のように砕け散ります。その先には、やっぱり凄い重い空間に囚われている教王派の人々の姿

 

 ……喉がからからになって、動けなくなります。騎士さん達の毒は致命的。放っておいたら手遅れになりかねません。でも、今直ぐに心の毒?に狂わされた人々を癒さないと、あの人達は殺されてしまうでしょう

 そして……今のわたしには、二度この魔法を唱える魔力って残ってません。そしてこの魔法は、一度に複数種類の毒は治せません。同じ系列の毒なら、一気に沢山の人を治せるんですけど……

 

 きゅっと、袖を握ります。わたしは、片方しか救えないから

 

 「皇子さま」

 助けを求めるように、傷だらけで、本当は一番に治してあげたいけれど何にもしてあげられない人に視線を向けます。でも、それを見返す彼の血色の蒼い瞳が、静かにわたしを見返すんです

 

 「……望むままに」

 答えは、くれませんでした。皇子さまが言ってくれたら、ちょっと嫌ですけど、わたし達を、アステールちゃん達を、皆を苦しめた人々を優先して助ける覚悟が出来るのに

 言ってください、わたしに、貴方のやろうとした事を……っ

 

 そんな自分の思考を、何処か駄目だって思うわたしが居て

 はっ、と気が付きます

 

 どうして、竪神さんをずっと羨ましく思っていたのか。わたしに、皇子さまの為にならってずっと思っていた自分に、足りていなかったものは何だったのか。理解します。分かってしまいます

 

 そう、あの思考です。皇子さまの為。貴方が望むなら

 それが、何より今のわたしが思っちゃ駄目なこと。だってさっきのあれは……

 ただでさえ苦しんでいる皇子さまに、「わたしに自分の望む方向の行動を命じた」ってところまで背負わせてしまうんですから

 

 大好きだから、少しでも役に立ちたいから。一緒に背負ってあげたいから。そうしたら結局……わたしすら背負ってしまう人だから

 

 わたしが、やるべき事は!

 

 「ユーゴさん」

 乾いた喉で声を張り上げます

 「わたしは、貴方達を許したくないです

 だから!理不尽に殺されて、終わりなんて言わせませんっ!」

 覚悟を決めて、治癒魔法の矛先を民の皆さんに向けます

 

 「……アナ?」

 少しだけ、呆けた顔の皇子さまにこれがわたしの答えですって笑って、わたしは最後の一節を唱え、魔法を完成させました

 

 「お願い、皆さん!怒りは分かりますけど……っ!」

 ふわりとした青い光が、思い思いに武器を振り上げた人々に降りかかります。そして……

 

 「……死ねっ!」

 振り下ろされます

 駄目なんですかって、心が苦しくなって……

 「いや待ってくれよ!」

 でも、その石は横の、ついさっきまで同じく鉄の棒を振り上げていた筈の同じ普通の人に払われて地面に落ちました

 「確かに許せないけどさ、何か……こう、皆殺しって可笑しいだろ」

 赤黒い血のオーラは消えています。多くの人が、怒りそのものを無くしたわけではないが理性を取り戻し、幾らなんでも殺すのはって思い止まってくれています

 

 けれど、ユーゴさんの顔は沈んだまま晴れません

 「結局は、さ。勝者じゃなきゃ」

 乾いた笑いが響きます

 

 ……そうかもしれません。ああして追い詰められた教王派は、沢山の人が心から従ってた訳じゃって命乞いしてましたから

 命を懸けてでもって心の奥底からの想いは、少なかったんでしょう。わたし自身、わたしの想いって重いのかな?って思いますし、気にする程では無いって気がしますけど……彼には違うんでしょうか?

 

 と、安堵を感じながらわたしはもう一度魔法書を開きます。例え手遅れになるとしても、わたしだって、諦めたくなんて

 

 『……その必要はありませんよ。十分です』

 その瞬間、わたしの体がふわりとした青い光に包まれます。周囲の時は、まるで止まっているように凍てついて、目をしばたかせるわたしの目の前に、水柱の中から一人の女の子が姿を見せました

 それは、実体無い影のような、でも凄く良く知っている気もしてしまう気配の龍人の女の子。ミニスカートに上は皇子さまっぽい西方服

 

 「……龍姫、さま?」

 『私の名は金星始水ですよ』

 「えっと……あ!皇子さまが夢で時折呟いているお名前の……」

 と言いつつわたしは首を傾げます。感じるその力は、わたしの手にずっとあったものにしか思えないですから

 「でも、龍姫さまですよね?」

 『……流石に分かりますか。まあ、分からなければ失格ですが

 兄さ……もとい、かの呪い子の事を好くのは前提。だからといって、手を貸す訳にはいきません。特に貴女では、共倒れする時はすぐに二人して落ちますからね』

 優しく、その二房の三つ編みの女の子は髪を揺らし、翼を軽く拡げます

 

 『ですが、己の足で立ち、その上で共に歩むならば構いません。彼の為ではなく、彼を想う自分自身の想いのために。その意志を忘れなければ、私達の造り上げた貴女達の世界を愛し救う祈りが、星になるならば』

 そうして、少女はその振り袖の手を軽く上げて微笑みました

 

 『アナスタシア・アルカンシエル。星のような煌めく願いと共に、想うままに生きなさい

 根源の願いを違えぬ限り、見守りましょう……極光の聖女よ』

 

 ……はっ、と気が付きます。元に世界は戻っていて……

 でも、一つだけ違うものがありました。ずっとわたしを助けてくれていた腕輪と同質で、でももっと身近に感じる力が、わたしの胸の中、心臓と共に鼓動しています

 

 「……はい!わたしは、諦めませんっ!」

 決意を込めて、さっきは意味がなかった消毒魔法を、わたしは唱えました

意識調査 まさかとは思いますが、ユーゴ君ヒロイン説信じてる読者の方、居ます?(想定していたヒロインはシュリちゃんまでです)

  • 竜胆佑胡ちゃんは正規ヒロインだよ
  • 下門みたいな章ゲストヒロイン枠だよ
  • んな訳ねぇだろ反省しろユーゴ
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