蒼き雷刃のゼノグラシア ~灰かぶりの呪子と守る乙女ゲーシナリオ~ 作:雨在新人
その姿はボロボロで。服も煤と埃と焦げ跡と破れだらけ。白地に赤を基調としていた筈なのに、赤黒い染みで見る影もない
だというのに。勝手に死んでいって、皆が離れる原因になったのに。あーしの孤独を作ったくせにっ!
死に体の肉体に鞭打って、汚い銀髪の青年の振るう刀が、己のズボンを突き破るほどに肥大化した見たくもないアレを雄々しく掲げるド変態の腕に刃筋を立てている
通らない。あーしもそうだけど、割と自分でもワケわかんないっていうか、何で?ってなるくらいに護ってくれる転生特典の腕時計による精霊障壁に阻まれて、硬質な音を立てるだけだ
無駄なのにって思う。それでも、焼け焦げた無い左目すら見開くような必死の形相で、彼はあーしの為に刃を振るう
「何でさ……」
あーし、敵だよ?我、何度も突っかかった。最初に目の前に現れた時は何だこいつってなったし、原作で知ってたとはいえやっぱり獅童に似てるって思ったら苛立って来たし、当人だって知ったらもうふざけてるのとしか思えなかった
「見捨てたら楽じゃん!勝手に死んだあの日のように!
助ける義理なんて、意味なんて……」
「……ある!
おれが、おれを止めないように!」
ああ、変わってない。虐められっ子を庇って自分まで虐められに来て、それを笑ってた気持ち悪いあの時と、何も!
「アンタが自己満足で命を擲って、誰が得すんの!」
「投げ売りはしてないさ。賭けてはいても、捨てるかよ。この手はまだ、誰にもまともに届いちゃいないから」
「ええ、そして誰にも届きはしないのですよ、【
振り下ろされる、鋼の鉄拳。崩れ落ちたアガートラームと違って動く唯一の機神がこの場を支配する絶対神の如く吠える
「……私も居るが?」
「そうだな、竪神」
そう告げる青年に首根っこを掴まれ、鉄拳から少し離れた場所で蒼刃を構え直す灰銀の青年と、その横で元々我が使っていたエクスカリバーをリペアして構える左腕が機械な青年
「正直な話、皇子の悪癖にも困ったものだが」
「目の前のユーゴを、昔のおれに期待して絶望した相手にすら手が届かなきゃ、困るだろ?」
困ったように微笑する機械騎士に、灰銀の皇子はにぃと笑う
「おれ達は皆で世界を救い、シュリを救って償うんだから」
「全く、共にと言ったのは此方だが、手間がかかるものだ!」
「嫌か?」
「無論、構わないとも!」
……どうしてだよ。何でそうなる
太股に押し付けられるおぞましい熱を感じつつ、理解できないものを見る
勝てないって分かってて、何でそうも死にかけで啖呵を切れる?しかもなんで、他人がそれに付き合う?
「強者じゃないあーしに、誰も着いてこないのに」
「馬鹿ユーゴが。おれが立ってられるのは、死してなおおれに君を救ってくれと叫んだ人の願い故だ」
右手のガントレットを輝かせ、灰銀の皇子は叫ぶ
「ユー、リ」
「欲しいものは、目をしっかり向ければ元からあった。イキり倒して、権力に人を集めて……」
ほんの少し、警戒を解かない程度に視線をずらして周囲を見回すゼノ。その目が、痛々しいものとして、我に従ってた教王派だった残骸を見つめる
「そんな表面で愛されてもさ。本当に欲しかったものから目を曇らせるだけだったってのに」
「……なにが、分かる……っての」
それは、自分でも分かるほどに負け惜しみで
「竪神、行けるか」
「行けないと本音を吐ける余裕はない、というところだろう。やるぞ」
そんなあーしを置いて、二人は一歩、胸ぐらを掴まれたあーしへと踏み込む
「……何処から、間違えてた」
「最初からですよ、散華の教王」
「最初からだ、ユーゴ」
ぽつりと溢した疑問に、二人の声が被る
「だからこそ、貴女は散華の結末を迎える。ええ、女になって死ねて良かったでは無いですか。結局、欲望まみれの男が怖いと尻込みしたまま事故死してしまい、悦びすら知らずに潰えていた命です」
過去を読んだように、仮面の男は文字通り笑顔を貼り付けて嗤う
「……でも、だ。間違っていても、そこから変わろうとした」
静かに、蒼き雷刃を携えた青年は歩み続ける
「おれだってさ、間違いなんて幾らでも犯してきた。いや、今だって本当にこれで良いのかって迷い続けてる」
「私だって、己の人生に間違いがないなんて、口が裂けても言えるものか
その間違いを越えていけるならば、私から言うことはない。後は明日がそれが正しかったか示すだろう」
赤に戻った血色の隻瞳が、静かな双瞳が見詰めてくる
「だから、
「……いい加減五月蝿いのですよ、だらだらと終わらせるべき物語を引き伸ばす行為は嫌われますよ?」
「引き伸ばしたのはそちらだろう?」
「三流の終わりなど、未完成と同じこと。同列は止めていただきたい」
二振の蒼刃に光が灯る。暁の空に舞い散る花弁のような桜光が、あーしが機械任せのぶっぱでしか使えなかった変なシステムによる冷気が反転したかのような熱光が、暗くなる視界を眩しく灼く
でも
「……『アーク・グラビトン・グランギニョル』」
今一度展開される重力圏。無効化してくれる聖女も、食って掛かってくるくらいに変わったあの早坂も、此処には居ない
この場の支配者は依然、胸ぐらを掴み……さりげに胸を弄ぶこのド変態畜生。正確には、そいつの持つチート
勝てないと分かる
ユーリ、ごめん。最後まで信じてくれたのに。何も出来てない。仇すら討ててない
何処で間違えた?何処かで、変えられる手はあった?
「……違うぞ、ユーゴ。お前は間違っていた。でもな、開いた目を閉ざさせようとされた。後悔すべきは、止めるべきだったのはおれ達だ」
重苦しい世界に膝を付き、それでも灰銀の皇子は愛刀と共に吠える
「もう良い、殺せよ!」
それで終わるならって叫ぶ
「そんなの、一番の卑怯ものの独り勝ちだ
漸く分かった。ユーリが死してなおおれに手を貸した。そもそも下門の想いがこの背を押してくれている。それと同じだ
想いを遺して死んだとしても、その魂を媒介にアガートラームは消えない。だからお前、竜胆を絶望させたがったんだろう?強い心残りを作らせるために」
にぃ、と。至近距離の男は……表情は見えないけど、笑った気がした
「……だとした、ら?」
「『エクス・
「『電磁!刀!奉っ!』
ちょっとスケールの大きいだけのガキ同士の喧嘩を、悪い大人が食い物にしようと来るんじゃ、ないっ!」
あれだけの事を、因縁を、ガキ同士の喧嘩ってばっさりすっきり切り捨てて。あーしをもう十分とばかりに殺しに来る拳を、刀身そのものが溶けてエネルギーの嵐となった一撃が、それを貫いて走る打ち出された刀が、ほんの少し食い止める
……悔しい。もう、死ぬならそれで良いけれど。ああ、力が、この手に残っていたら……
『あるよー?』
その声は、聞こえる筈がなかった
ステラ?と、声にならない声をあげる
『あー、ユーゴさまにしか聞こえないよー?ステラはステラ。おーじさまには分からない事から、すこーしだけ柩の中に残った魂の欠片』
な、なんでそんな……
『だってー。ユーゴさまってステラとおんなじ
せめてうわべだけで良いから、愛されたかった。寂しがりやの独りぼっち。特に求めてなくても愛されちゃうおーじさまには、とーてー分かんない。だから眩しすぎて、大好きだけど……
ステラは、ユーゴさまを独りにしたくなかったんだー』
……良く聞けば、声は腕時計から漏れている
『柩は空っぽじゃないよー?
大事なものを沢山喪って。悲しみで柩が一杯になって。自分から、一緒に持って行けない何かを葬って。それでも、先に進むなら』
あまりにも、時計が熱い
『銀腕はまだ……おーじさま達の勝ちを認めて沈黙を選んだだけで、終わっちゃいないよ?』
虚ろな目で、転生時に与えられた最強の力を見る
でも、あれだけ勇気を振り絞れるようになったあの早坂が、使わないって叫ぶほどに、本当は使っちゃ駄目なもので。あれは、イキりやすいように与えられた撒き餌
『うんうん、だから……再起するなら、反逆の時だよ、ユーゴさま。ユーゴさまは、何者として、何がしたい?
孤独の中で、死にたいのかなー?』
ちが、う
からからの喉で、息を吐く
我は、僕は……あーしは、竜胆佑胡。ユーゴ・シュヴァリエの人生を乗っ取って、ユーリ達を護れなくて。とうとうあの獅童に間違ってたと突き付けられて
「それでもっ!」
『
『
『
突如響く音声。それは聞きなれたアガートラームの起動音に酷似した声音で、けれども聞き覚えなんて無い。というか、何時になく、感情が籠った感じ
『vendetta drive overlay!』
「っ!これは!?
何ですか、この下らぬ余興は。興醒めです。有り得ない。ゲーム上、ポゼッションに辿り着いたのすら精霊王のみ
理論上、もしかしたらアガートラームでも可能だったかもしれない程度の、
その声が途切れる。胸ぐらを掴む腕が、転移の重力球に半ばから食われて消失しては、勝利を確信して増長していたあの変態には続きなんて口に出来ない
『全てを纏いて進むは……墓標の先の
与えよう、その名は……
AGX-ANC14B
なお、英雄譚はガイアールと普通読みません。勝利という意味ですが、まあ精霊真王氏が割と格好付けなのでお許しください。
ということで、Airget-lamh Regret ReBIRTH Rebellion、略してAirget-lamh/Try-R覚醒です。味方より先にお前が覚醒すんのか!?感はありますが、もうユーゴ君は敵じゃない面倒な奴なので……
意識調査 まさかとは思いますが、ユーゴ君ヒロイン説信じてる読者の方、居ます?(想定していたヒロインはシュリちゃんまでです)
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竜胆佑胡ちゃんは正規ヒロインだよ
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下門みたいな章ゲストヒロイン枠だよ
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んな訳ねぇだろ反省しろユーゴ