蒼き雷刃のゼノグラシア ~灰かぶりの呪子と守る乙女ゲーシナリオ~   作:雨在新人

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第二部四章インターミッション 聖女達と波乱の学園祭
学園への帰還、或いは手土産


「ふぅ、お疲れ様、アウィル」

 長らく地上を駆けてくれた狼の背の甲殻を撫で、持ってきていた干し林檎をその口元に向けて投げながら、おれはそう呟いた

 

 眼前に見えるのは学園の門。日が落ちて既に閉められているものの、高さは10mちょっと。アウィルもおれも飛び越えられる高さである。逆に言えば、だからこそ帰ってくる際に開けてくれとか言う必要もないんだよな。防犯の魔法はあるけど、それだけ一旦offにして貰えば門自体は開けなくて良い

 

 なんて考えながら大きな白狼から降りて見上げれば、壁の上に一人の人影が見えた

 「あ、お帰りなさいです皇子さま!」

 温い夜風で冷えないのか少し紅潮した頬、ぶんぶんと振られる左手と、それに合わせて揺れるサイドテール。我らが?聖女アナである

 「アナ。魔法は?」

 「あ、わたしが登りたいってことで一旦切ってあるですよ?」

 「了解」

 良く見れば、ちゃんと見張り兼護衛の教師も居るし、心配ないな

 

 「驚愕の」

 あ、ガイストまで居る。ってそれは可笑しいことじゃないわな、ちょっと忘れがちだがおれ達機虹騎士団の団長ってガイストだし、護衛にくらい来る

 大体の場合はその役目は頼勇なんだが、その当人は今……竜胆が見せた力、葬甲霊依(ポゼッション)について研究していてあまり学園に顔を出さない。アイリスも同じだが、その辺りはもう皆認めてくれている。ってことで、今はガイストが頑張ってる訳だ

 

 いや、ゼルフィード・ノヴァって強化もあるし、ガイストも覚醒的な事があったら情報出せそうだが、今はな……ってこともある

 

 「お疲れ様、ガイスト団長」

 「英雄相手に、それは……」

 「団長なのは本当だろ?」

 笑いながら、おれは小走りから足を踏み切り、一気に城壁のような学園の門の上にまで飛び上がった。同じく踏み切ってアウィルが横に飛んでくるんだが、慣れてないと巨大狼が10m級のジャンプかましてきてビビる。ってか、ガイストが思わず一歩後ずさってるし……

 

 「えへへ、お帰りなさいです、皇子さま」

 はにかみながら、少女はさっき振らなかった右手に持っていたタオルを渡してくれる。良く冷えたそれをおれはアウィルの耳の間、頭に乗せてやって自分は手持ちのハンカチで額を拭った

 

 「あ、……ごめんなさいアウィルちゃん、アウィルちゃんも走ってきてくれたのに、用意足りてなかったですね?」

 それを見て申し訳なさげに少女は頭を下げた

 『ルゥ?』

 が、アウィル当狼は気にしてなさげ。慌てたアナから頭や背の甲殻を拭かれ、心地よさげに一声吠えて足を折ると丸くなる

 

 「早急の所以は」

 「ああ、一旦行く必要はあったけどさ。やっぱり、聖教国は居心地悪くてさ、石投げられたんで一晩泊まらず帰ってきたよ」

 と、帰りは明日では?というように心配してくるガイストにひらひらと手を振る

 

 「え?石投げられちゃったんですか皇子さま!?」

 「そりゃそうだよ。ある程度は認めてくれたとして、皆を救う行動もやってたとして

 それ以前に、おれは竜胆に……彼らを苦しめた教王ユーゴに手を伸ばした敵でもある。割り切れない人は割りきれないさ。投石ですんで優しいくらいだ」

 肩を竦める。間違ったとは思っていない。が、やるせない気持ちを抱かせるのは間違えない。ディオ団長すら、アルデの仇をって少しだけ曇った顔だったものな

 

 けれど、皆一応英雄だとおれに気を遣っていた。心の底から歓迎していたのなんてアステールだけだ。だから、これ以上気を遣わせないように用事をでっち上げてとっとと帰ってきた

 

 「……そう、ですよね」

 みるみる萎れるサイドテール。紅潮していた頬の赤みも取れてしまう

 「皇子さまはずっと頑張ってきてましたけど、誰か個人のためって点は薄いですから。嫌な人は嫌ですよね」

 「英雄の矛盾……」

 アナからタオルを借りてアウィルの前肢を拭いてやりながらガイストも呟く 

 

 そんな重苦しい空気を変えようと、おれはひょいと肩掛けバッグから一冊の本を取り出した

 「はいアナ、お土産」

 

 「あれ?なんですかこれ?アステールさまの新刊……ならまずアイリスちゃんですよね?」

 「これか?最近魔神剣帝シリーズと並んで熟れまくっているらしい本。特にお嬢様方に大人気の恋愛もの」

 「あ、そうなんですね、有り難う御座います皇子さま」

 と言いながら、少女は微笑んで本を受け取ってくれた

 

 「でも、珍しいですよね、皇子さまがそんなもの買うなんて」

 「中身は割とドロドロした三角関係ものらしい。エッケハルトがアナちゃんモチーフの子に好かれる小説出回りすぎと愚痴ってたから買ってきた」

 「……あ、これわたしを元ネタにしてるんですね……

 皇子さまをっていうのは読みましたけど、自分が下敷きになった子が他人の手で描かれるって新鮮です」

 ……良く良く考えたら、ヒーローものの主役に描かれているおれは兎も角、恋愛もののヒロインの一人にされてるのを実際に読むのってどうなんだろう?

 

 「悪い、選ぶ本間違えたかも」

 「いえ、これはこれで気になりますから」

 健気に微笑まれて、おれは申し訳なさから適当に口を回す

 

 「……その分、おれに出来ることならするから」

 「じゃあ、今度のお休みの日に、劇に連れていってください」

 「あ、そんなんで良いなら何時でも」

 

 なんてやり取りの後、そういえばとおれは切り出す

 「おれが聖教国にまた行ってる間に、今度来る新入生を迎えるための学園祭の準備、少しは進んだか?」 

 ちなみに、去年はあの襲撃事件のせいで中止になってるから、アナ達が関わるのはそもそも初めてとなる。新入生の為の祭をってのは少し気が引けたが、あの事件の直後では押し切られた

 

 「あ、その事なんですけど……」

 言いにくそうに少女は苦笑した

 「グループを決めて、色々と出し物用意するじゃないですか?

 今の一年の皆さん、聖女さまと一緒にって言って、一年がわたしのグループとリリーナちゃんのグループとでたった二つしか出来なくて困ってます……」

 

 その言葉におれも釣られて苦笑する。困ってるな、アナ

 いやまあ、気持ちは分かるのだ。が、それで100人程のグループ作っても、出し物が少なくてがらんとした印象になるだけだろ

 「アナ、そういう時は簡単だ

 『皆さんの出し物を見て楽しみたいです』と言えば、張り切って別グループ作ってくれる。まあ、当日回らなきゃ文句が出るから当日が大変だが」

 と、腕を取られた

 

 「はい。大変そうですし、当日は一緒に回ってくださいね、皇子さま?」

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