蒼き雷刃のゼノグラシア ~灰かぶりの呪子と守る乙女ゲーシナリオ~   作:雨在新人

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異伝、銀髪聖女と巷の娯楽

「えっへへー」

 と、お風呂(わたしのお部屋、ちゃんと大きめのそれが付いているんですよね。何時もは一人で使うから寂しいくらいの大きさですし、リリーナちゃん達を誘うのもと思ってましたけど、さすがに四人で入るとちょっとだけ狭くて足は伸ばせませんでした)から上がると柔らかい湯着に袖を通します。下着は……無くてもあんまり辛くないように湯着が出来てるから今回は良いですかね?別に外に出る気も、他の方を出迎える事もありませんから

 明日の朝制服……じゃなくて神官服に着替える際に身に付けましょう

 

 「ほかほか」

 と、帽子を直しながらわたしの湯着(何というか、胸元がぶかぶかです)を羽織ったアルヴィナちゃん

 「……うーん、帽子ってそれシャンプーハットじゃないから邪魔だったんじゃ」

 「これは皇子から修学旅行の時に貰った奴。防水加工で泳いでも平気」

 「邪魔……」

 「あはは、アイリスちゃんもわたしの頭の上に乗ったりしてましたけど、毛の掃除って案外大変なんですよ?」

 「……にゃぁ」

 と、猫姿のアイリスちゃんはしょんぼりとしたように床を見ました

 

 「スライムゴーレム、明日持ってくる。スライムはゴミ取りが得意」

 それは分かります。ぶよぶよした体で小さなゴミを全部体内に入れちゃうんですよね?それに柔らかいから管とかも隅から隅まですぐに掃除出来て重宝される生活用の水属性魔法です

 「あ、あんまり責める気はないんですよ?わたしが皆で一緒にって言ったからですから」

 慌てて手を振ります。アイリスちゃんは壁を作りがちで、それを分かってて、多分猫姿だと思ってそれでもアルヴィナちゃんと仲良くする切っ掛けになればって

 

 「あーにゃんは、悪くない」

 と、わたしの膝に乗って頭を預けてくるアルヴィナちゃん。わたしは櫛を出すと、水濡れした黒い髪をとかし始めました

 「悪は、そっち……」

 「悪いネコは、休業中」 

 「悪い……魔神」

 「それは失業済み。今のボクは、皇子と未来を夢見る裏切りの魔神」

 「……信じられま、せん」

 アイリスちゃん(猫形態)が、二本足で立ち上がります

 

 「その目は、お兄ちゃんを、傷付ける」

 「お前ほど、皇子を信じていない訳じゃない」

 と、猫の動きがフリーズします

 

 「……?」

 尻尾が垂れ、首をかしげるアイリスちゃん

 「あの眼が、ボクを見ずに誰かの未来を見続ける明鏡止水が、ボクが見惚れ欲しくなったもの

 奪うな、止めるな。心の果てまで、手を伸ばさせろ」

 「……そうしたら、お兄ちゃんは、死ぬ

 脚を砕いて、手を縛って。止めるべき」

 ……うん、お互い皇子さまを大事なのは分かりますよ?だから、です

 

 と思いますけど、わたしは今回は何も言わずにアルヴィナちゃんの髪を整えてあげながら見守ります

 「……あれ?良いの?」

 「はい。お互いに、言い合う時だと思いますから。さっきみたいにお互いに酷い時はちょっと止めますけど、皇子さまを思う気持ちは同じですから。いっそ譲れない事を叩きつけあった方が良いんです」

 と、わたしは笑います。だってそう、羨ましく思うあの竪神さんと皇子さまだって、アルヴィナちゃんの事で同じくやってましたから。譲れない、譲りたくない、その思いを心の底からぶつけることで、きっと分かり合える事だってあるんです

 

 「うにゃぁぁっ!」

 「しゃーっ!」

 ちょっと不安ですけどね?

 「それより、わたしはリリーナちゃんが気になりますよ?」

 「え何?いきなり私の話?っていうか、そんなに気になる?」

 「はい。さっきリリーナちゃん自身が言ってましたけど、この世界の辿る未来は結構乙女ゲームとして知られてるんですよね?」

 と、桃色の少女はひょこっと顔を出した小さな生き物の喉を撫でながら頷きました。宝石獣の子です。最近はお気に入りなのかジーヴァ君と名を付けられたリリーナちゃんを護るドラゴンさんの頭の上や翼の間に何時も居ますけど、ちょっと来てくれたみたいです

 

 「あ、要りますか?」

 と、クッキーの上からナッツを取り外して指の上に載せれば、ちょこちょこと短い四肢で走ってくるのが可愛いです

 でも、わたしはそこまで懐かないようで、ナッツを取ったらそそくさと大きな尻尾を振りつつリリーナちゃんの近くに戻ってから、リスさんみたいな歯でそれを齧ります

 

 「……あ」

 「……よしよし、どうしたの?」

 と、そんなわたしには気がつかず、リリーナちゃんは自分に付いてきてくれた宝石獣さんに話しかけました

 

 「……あれ、どうだったんですか?」

 「お腹空いたってだけみたい。うん、明日の朝の分忘れてたし、成長期だから欲しいみたいで……」

 「深刻じゃなくて良かったです」

 そんなわたしの膝上では、アルヴィナちゃんが業を煮やしてかドレスの肩から下げていた小さくて新しいポーチから、何かをごそごそと取り出していました

 

 「……それで、さっきの話なんですけど。乙女ゲームとしては、今リリーナちゃんはどうなんです?

 皇子さまとは特にシナリオがないっていうのも、オーウェン君がゲームでは出てこないっていうのも何となく分かりますけど……

 それに、ゲームだと今からわたしたちがやろうとしているアイドル?活動って成功して皇子さまや、他の皆さんの心を打つ事が出来たんですか?あ、実は駄目だったとしても諦めませんよ?

 アルヴィナちゃんも居ますし、原作が駄目ならそれを超えて成功させてみせますから」

 そんなわたしに、難しい話なんだよねとリリーナちゃんは曖昧に笑いました

 

 「……ボクに勝てたら、少しは誉める」

 カードデッキを取り出して机の上に起きつつつつ、アルヴィナちゃんは真剣な面持ちで告げます

 「吠え面、かくと良い……」

 それに合わせ、アイリスちゃんも喉元から(何処にどうやって仕舞ってたんでしょう?)カードデッキを取り出すと、人の姿になってそれをかまえました

 

 「えっとそれ何ですか?」

 「牢獄は暇だから、皇子や混ざりものが持ってきてくれる」

 「マジック・ルーラーズ。最近流行りのカードゲーム、です……」

 「あ、そうなんですね?」

 「あーにゃんは好きそうじゃないから、あーにゃんとはチェス?とかそういうのにしてる」

 確かにわたしがアルヴィナちゃんと会うと良くやります。でも、そんなカードもあったんですね?

 

 「コイツで、お前を倒して分からせる」

 と、黒髪の魔神はデッキ?の一覧上のカードを徐に捲ると、其処に描かれた轟く帝国の剣を持った燃える皇子さま……っぽい人のイラストのカードを見せつけます

 あ、多分魔神剣帝さんですね。わたしはそこまで詳しくないっていうか、普通の皇子さまの方がって思ってあんまり追いませんけど、彼モチーフのあの物語の人は皇子さまと違って普通に人気ですから。差は少ないし忌み子と皇子さまは嫌われるのが悲しいですけど……

 

 「所詮、安物」

 と、アイリスちゃんも同じカードを見せました

 あ、でもこっちは名前の部分にキラッキラの青い加工がしてあって、魔法のお陰かイラストの焔が大きく揺らめいて見えます。それに、デュランダルを変えるポーズも別ですね?

 

 「お兄ちゃんへの想いと、レア度が……違い、ます」

 「ボクのこれは、当てたカードに皇子が応援を書いてくれた、最高レア。市販品ごときが」

 ……これ、普通に仲良しなのでは?

 

 「負けたら、お兄ちゃんを狙う悪」

 「負けたら、皇子を分からない駄目妹」

 「「決闘(デュエル)!決闘開始時、初期手札に含まれるこのカードを封印状態でバトルゾーンに置き、相手は山札の一枚目をドローして、手札を一枚山札の下に置く!『眠れる焔のゼノン』!」」

 もうこれ仲良しですよね絶対!?

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