蒼き雷刃のゼノグラシア ~灰かぶりの呪子と守る乙女ゲーシナリオ~   作:雨在新人

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見送り、或いは迷う聖女

「……遊んでおいで、アウィル」

 遠巻きに見守っている少年少女に向けて、終わった?とばかりに頭を上げた狼を送り出す。不満げに体を振るわせる龍も、狼も怒り狂う彼に向けて手を出すことはなかった

 

 「ゼノ君」

 「すまない、リリーナ嬢までも巻き込ませる気は無かったんだが、そうそう上手くは行かなかったようだ」

 肩を竦めて、立ち去っていく青年を見送りながら呟く。くしゃくしゃに握られた招待状は、それでも小切手と違ってその場で破り捨てられることは無かった

 

 「皆、不快感を与えてすまなかった。せめて、この先少しの時間は楽しんで欲しい」

 言って、おれは横の少女の手を取った。まあ、あまり意味はないが、この場に残していくのも辛いだろうからな

 

 「ゼノ、くん?」

 「顔色が優れないぞリリーナ嬢。無理しない方が良い。倒れるのが一番の迷惑になってしまうからな」

 「……怖かった」

 「だろう?だから休むんだ。心配かけないために、ちゃんと言い返すために」

 って、微笑むおれだが心は晴れない

 正直なところ、さっきのあれは詭弁だからな。アナや頼勇という盾で怒りの矛先を受け止めて、彼らに怒ってるんだっけ?と怒りの行き場を隠して止めた。最低の逃げ方だ

 本来は、おれがアルヴィナと共に茶番をして、転生者たる夜行やテネーブルの思惑が絡んだことで起きた悲劇が原因なんだから、責められるべきは奴等とおれだ。多分だが、おれへの怒りのままだったらあそこで一旦下がって冷静になるとか出来なかったろう

 

 「……エッケハルト、後を頼む」

 少女の手を引き、後を憮然とした炎髪の辺境伯に託し、

 「……あの人、私を嫌いじゃなかった

 そりゃ好感は無かったけどさ、大嫌いって思っても無かったんだ」

 と、ぽつりと地面を向いた桃色少女が呟く

 

 「分かんない、私……正しいの?」

 「分からない」

 此処は正しいと言ってやるのが良いと思いつつ、それを口にする前にぽろっと言葉が溢れる

 「そっか。やっぱり」 

 「でも、分からないから必死になるんだ。自分が正しいって思ったらさ、止まれなくなるから疑い続けるんだ」

 愛刀の柄を撫でて、空を仰ぐ。夜空に近い其所に見える星は少なくて、それでも綺麗に見守ってくれていた

 ……そうだ。おれも

 背負ってきた死は多すぎるくらいだ。けれどもあそこで輝く星のように。見守ってくれている、背中を押してもくれている。罪として、枷として背負うだけじゃ駄目だって、今はそう思う

 

 「リリーナ嬢だってさ。だから『天津甕星』ってやるんだろ?」

 そんな思いも込めて、おれは軽く微笑んで……

 「うん

 やっぱり、火傷で顔、怖いね」

 「すまない、昔からだ」

 「知ってるよ」

 なんて、少しはマシなやり取りが出来たと一息を吐いたところで、おれは瞬時に空いた右手を柄から離した

 そして、少しだけ申し訳なさげ?に寄ってきた少女の肩を掴む

 

 「な、何じゃよ?」

 「怒るよ、シュリ」

 「も、もう怒ってるんじゃよ?」

 そう、あそこまで歯止め無く心を吐いた元凶、心毒を撒いた当龍、至極当然の面で入り込んでいたシュリンガーラである

 おれの心は読んでるだろうし、その上で逃げていないならば捕まって怒られる為だろうと、容赦はせずに強く掴み続けた

 

 「痛、痛くは無いが辛いんじゃよ……」

 「じゃあ、聞いてくれるよね?お陰でリリーナ嬢にまで飛び火して、苦しむ事になったんだから」

 「……御免なさいなんじゃよ……」

 素直にしゅんとする辺り、悪意で毒を撒いたのでは無いのだろうが、結果的にはただの毒だ

 

 「じゃあ、改めて行こうか」

 と、少し恨めしげなエッケハルトの視線を受けながら、改めておれは促した

 

 うん。他の参加者からもシュリとの会話は聞こえてないが他の女まで連れてと憎らしげな視線が刺さるが無視だ無視!

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