蒼き雷刃のゼノグラシア ~灰かぶりの呪子と守る乙女ゲーシナリオ~ 作:雨在新人
「シュリ」
呼べば、何時ものおれのあげた外套、ではなくドレス姿の龍神は怒られている形の状況の割には楽しげに、その太い紫の尻尾を揺らした
「どうやって来たの?」
「ゼノ君、この子は?」
言われて、あれ?と思う。リリーナ嬢もシュリの事は見たこと無かったか?って話だが……
「えっと、貴族さんだよね?どうしてそんなに」
この違和感に覚えがある。そう、目の前の人間が別の人物のように扱われるその現象は……
「【
ぽつりと、その力の名を告げる。下門が使っていたクソコラ能力、確かにそれを使えば自分を招待客のように思わせることも出来なくはないだろう。それこそ、誰かが招待状持ってる時を撮影してコラージュすれば良い、送った者達から招待状を持つべき者として扱ってしまうから通して貰える
「奪ったのか?」
「休むらしいから、貰ってきたんじゃよ?」
……見上げる左右で色の違う瞳に、曇りは……いや、何時も絶望に半ば翳ってるから分からないなその辺り。ただ、今回のシュリはそこまで悪いことはしてない気がする
「……使えたのか、あの力」
「全ては儂の眼じゃから、の。三首六眼、誰かに与えている時には使えぬが、今はその気になれば何時でも使えてしまうよ」
「……君が元々持つには、違和感のある能力だけど」
今は話してくれそうなのであえて深く突っ込む。いや、他のアージュは更に他人との関係性に興味ないから要らないだろうし、シュリ自身欲しがらない力な気がするんだよな
「【
そう告げる少女の目線は何時もと違っておれへの上目遣いではなくなっていて。多分下門の死とか、思うところがあるのだろう。自分が巻き込んだわけだしな
こうして見ると稀に夢で見る龍神アーシュ=アルカヌムそっくりだ。ちょっと自虐と絶望入っているが……分かりやすく人懐っこく、善かれと思っても毒という性質で人を傷つけてしまいかねない危うさがある、超常で頂上の龍
「……お前さん?」
「えっとゼノ君、話が本当に見えないけど」
と、扉に空いた窓からちらちらと見える銀髪。心配してか、リリーナ嬢を休ませる部屋までアナが来てくれたのだろう
「リリーナ嬢」
「うん」
「アナが来てる。おれはやることがあるし、おれが止めるべき恐ろしい神様の対処をするから、休んできて」
「いや心配過ぎるけどその発言!?ってかぜんっぜん危険そうに見えな」
叫ぶ桃色少女の眼が、ぴたっとシュリの履くニーソックスっぽいもの辺りで止まった
「解れてるよ、大丈夫?」
「儂の汗、毒じゃからの。溶けてしもうたか」
翼も心なし下向きになりショボくれる龍少女。これ見ても毒耐性高いおれは気にしないが……
「え、毒?本当に?」
「さっきの人、皇帝から思いの丈ぶちまけろって言われたけど言葉が……と苦しんでいたから心のままにと少しだけアマルガムを香にしたんじゃが……
あそこまでとは、の。すまんかったよお前さん」
ついでに、シュリもおれの意図を組んだのかわざとらしく恐ろしそうな事を呟く
これが精一杯となると本当にアーシュというか、これが【
「……ご、ごめんねゼノ君!怖いから逃げさせて!」
「逃げてくれリリーナ嬢」
「でも!なんか知らないけどゼノ君への好感度めっちゃ高いからそこ安心して!アーニャちゃん並みでホントこわい!何で!?」
と、さらっと聞く人によっては爆弾な言葉を残して、少女はそそくさと出ていった
……好感度が見える眼で見ても、やっぱりシュリからの好感度高いのか……なかなか、恐ろしい話ではある
ってか、もしもラウドラ辺りも好感度自体は見たら高かったら実に怖いが……その辺り、三首の龍のそれぞれの首とはいえリンクしてなさそうなんだよな
まあ良いか。シュリから嫌われてたら色々な点で終わりだしな、おれ
「……そっか。あんまり怒るべきじゃない事が多かったな、短絡的過ぎたか」
「佳いよ、お前さん。儂に向けて駄目なら駄目と言おうとするのもお前さんだけじゃしの」
寂しげに、龍は微笑む
「言いたくないがあの【
「儂があれを願ってたと、思うかの?」
言われ思い出すのは聖都での虐殺。シュリは泣きそうな顔で、見たくもないものを逃げられないとばかりに見つめていたようにしか見えなかった
「……ごめん」
「善いよ、お前さん。儂自身今となっては後悔しておるがの」
「……取れないのか」
「儂は幼き頃の再現。本来、アージュ=ドゥーハ=アーカヌムには最早要らぬ姿じゃよ。与えられても取り戻す権限は持たぬ」
持ってたら多分だが、あのサルースから取り戻してるんだろうな。ってか、だったら与えた後裏切り防止の対策を弄くるとかも出来なかった可能性もあるのか?
シュリを全部信じきるのは危険だが、下門も実は裏切り対策で殺す……まではしたくなかった可能性くらいは信じよう。疑いながら信じろ、おれ
「なぁシュリ。ならば、おれの、【
と、おれはとぼけて聞く。シュリの眷であることは感じても、下門のあれみたいな特殊な力は感じない。いざというときの切り札になればと思うが……
あ、しゅんとした。尻尾も翼も縮こまるから良く分かる
「儂の眼の芽は、木に近いんじゃよお前さん。魂という土壌に埋め込み、魂を食ろうて成長し、何れ魂に生える異能の大木となる。儂に収穫の権利は無くとも、他の首は伐採が可能
じゃがの。残念ながら今のお前さんにある【
整理しよう。つまり、特別な能力は無い。シュリに思考読まれるのと眷属扱いされるだけか。まあ、思考読んでさりげなく助けてくれる事もあるのだから、シュリの眷属な事がメリットと言えそうだが。で、その状態では能力覚醒してないので剥奪も逆に出来ないと
「一生このままだな、それは」
「……どうだか、の」
寂しげに、龍神は
「そうだ、シュリ」
そんな少女に、おれはポケットからあるものを取り出した。それは二枚目の小切手……
「すまん、間違えた。こっちだ」
ではなく、二枚目の学園祭チケットだ
「……む?」
「来れるんだろ、シュリ。だから来い」
「じゃが、儂は」
「大丈夫。傷つける気があるなら兎も角、精一杯傷付けないように縮こまる龍神様の毒に滅茶苦茶にされるほど、この世界は、頼勇やアナ達は弱くない
見に来い、そして理解しろ。何時かおれは君に世界を守り救わせる。そうして共に償う前に、何時か守らせられるものが君の思うものよりキラキラしてるってことを、消したくないと思えるって事実を叩きつけてやるよ、シュリ」
敢えて挑戦的な物言いで、おれはチケットを差し出した
「言ったの?お前さん。嘘なら、儂は怒るんじゃよ?」