蒼き雷刃のゼノグラシア ~灰かぶりの呪子と守る乙女ゲーシナリオ~   作:雨在新人

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受領、或いはオタ芸

「ったく、はい!これで俺の仕事は大半終わり!当日は好きにするからな!」

 ドン!と怒りを込めて卓上に叩き付けられるのはそこそこ分厚い手書きのメモ束。おれが頼んでいた脱出ゲームのシナリオだ

 

 が、かなり凄い量だ。正直な話、ペラ紙数枚かと思ってたが、そんな程度ではなかった

 

 「これ全部か?」

 「あったり前だろ、何?お前さ、同人誌とかでも出されてる20頁そこらの小冊子だけしか作られてないと思ってた訳?

 冗談じゃない、没とかキャラ考えてのメモ書きとラフとか、あの一冊だけ出すためにどんだけ表にならないものがあると……」 

 楽しげに愚痴を溢す彼に、思わず可笑しくて笑みが溢れる

 

 「うわキッモ」

 あ、おれにキレ気味の何時ものエッケハルトに戻ってしまったか

 

 「そこまで本気になってくれてたんだな」

 「アレットちゃんに喧嘩売ったんだろ?半端なモン出したら、逆に失礼だって!」

 顔を赤らめて怒ってくる彼に、おれら少しだけ眼をしばたかせた

 

 「寧ろアレットとやりあうから手抜きしたいとかならないのか?」

 「あのさ?創作者舐めてんの?二次創作でも何でもさ、周囲に比べてクオリティ……は個人の実力だから兎も角として、情熱で負けてるものをいけしゃあしゃあと恥ずかしげもなく出せんのはイナゴだけだろ!」

 叫ばれても、とおれは耳を抑えた。言いたいこと……分からなくもないが、おれは創作者じゃないから何とも返せない

 何なら同人誌もほぼ見たことないってか……

 

 「ああもう、アナちゃん絡みで金稼ぎのためだけに適当に整った感あるイラストで金稼いでた奴等思い出して今っ更イライラする……」

 ぶん!と拳を振るエッケハルト。どうやら、おれには理解しきれない想いの領域とかあるようだ。うん、立派だと想うぞ、エッケハルト

 ちらっと覗きに来たアナがびっくりして扉から離れてどっか行ったことさえ無ければ、だが

 まあ当人の同人誌書いてたとか、エッケハルトがこの世界をゲームとして知ってる事実とか理解しててもちょっと受け入れるのはアレだわな?自分のえっちなイラスト書いてそれで興奮してたと言われるようなもの。素直に喜べるのは、発言者にそうした感情持って欲しいという好意を持ってる子か、或いは性に対して自由な子くらい。アナはどっちでもないからな……

 

 「だから、こんなにしっかり色々と書き込んでくれたのか」

 「まぁな。手抜きとか出来ないし、俺はちゃんと造りとか知らないしで、何個かパターン考えておいた。序盤中盤結末、好きに組み合わせて使えよゼノ」

 言われて資料を見る。なるほど、ある種のゲームブックみたいに、何個かストーリーライン分岐出来るように仕上げられているんだな?

 が、せっかく用意してくれたんだからと全部使うと、参加者によってどんなナレーションするかとかかなり面倒になるし仕掛けも大掛かり。一番参加して面白そうなシナリオをメインに、多少の横路をアクセントとして入れるくらいにするか?

 

 「じゃ、当日はアナちゃんと過ごせる限り過ごさせろよ!」

 くわっ!と眼を見開くエッケハルト。おれはそれに苦笑を返しながら、二枚の手紙を差し出した

 

 「ちなみにだがなエッケハルト。当日アレットからお前を渡さなきゃ妨害するって脅迫と、ヴィルジニーが来るってアステールの報告とがあるんだ。おれには何も出来ないから、後は任せた」

 「ちっ、畜生ーっ!この鬼!悪魔!裏切り者!ゼノ野郎!」

 「おい一個誉めてんぞエッケハルト!?」

 まあ、おれもシュリだ竜胆だで忙しいし、少しはスケジュール考えてエッケハルトの夢も通せるようにしないとな?

 

 ただでさえ、暫しの間、竜胆を消すべくこの世界に乱入してくるらしいXとか、そういった脅威と戦う必要もあるのだし

 

 「……ん?」

 そう想いつつ資料を持てば、才女の頁が可笑しかった。これは……何だ?棒の設計図?

 「ゼノ、お前俺にあれこれ言うんだからこれくらいくれよ」

 言われ改めて見れば、光る棒だ

 「何に使うんだよこれ」

 「オタ芸だよオタ芸!今世の肉体凄いからさ!やらせろ!」

 言われ、おれは少しだけ目算して……ほい、と設計図と共に二枚の紙を出した

 

 「ん?」

 「アラン・フルニエ商会への紹介状。オタ芸は良く知らないけどアナ達天津甕星を応援したいのは分かったから、いっそ量産しろ」

 「お、おう……」

 「応援の宴か、俺様も混じって言いか?」

 が、ひょいとその紙を取り上げる者が居た

 

 「げっ!?派手野郎!?」

 「はーっはっはっ!ならばこのライトで全身輝くが良い、目立つさ」

 「超変態だわ!?」

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