蒼き雷刃のゼノグラシア ~灰かぶりの呪子と守る乙女ゲーシナリオ~ 作:雨在新人
「えっへへー!皇子さま、御早うございます?」
滝に(ちなみにこれはノア姫と頼勇が用意してくれた魔道具の滝だ。現実の滝じゃないので屋内にあるし、高さ3mくらいから水が落ちてくるのにその勢いと圧力は多分地球最大の滝より強い)打たれつつ鉄刀で滝を縦に割る修業をしていたおれは、響く声に両断して水が途切れた最中に振り返った
「あれ?大丈夫ですか皇子さま?」
心配そうに見られ、大丈夫だよとおれは手を振った
が、まあ滝なんて縦に両断したとこで本気でずっと斬れてる訳もなく。まあ魔道具ごと両断すれば壊れるんで完全に停止するがそれをしては本末転倒。降ってくる嵐のような水を軽く地を蹴ってアナの横まで来て回避
「有り難うノア姫。もう今日は終わり。あと30回を2セットって思ってたけど、アナが来たし」
ぶん、と刀を振って水を払い、鞘に刀身を収める
「えっと、修業ですか?」
「鈍ってたら困るからさ。水のように普通は斬れないものを斬る感覚を鈍らせないように。雪那系統の技が撃てなくなってたら、師匠に失笑されるよ」
まあ、愛刀たる湖・月花迅雷はデフォルトで魂にまで刃が届きそうなのだが、それはそれだ。死人の魂と想いの焼き付いたあの刀があればって、それ完全に武器頼みのポンコツだろう。無くとも自力で使えるに越したことはない
最近手紙をくれたが、師匠自身雪那・残照という教えてなかった技とかおれに教えようと、ついでに原作ゲームでも転入してくる西の王族(つまり師匠のちょっと遠い血縁の
「あ、そうなんですねお疲れ様です
皇子さま、これどうぞ」
と、少女は持ち歩いている小さな魔法書を唱えて冷たい水を出し、自前のハンカチと共に差し出した
「有り難うアナ、借りるよ……と言いたいけど、ハンカチは良いよ。流石に前から決めてた修業だからタオルはあるし、汗で汚したくない」
「これ、ノア先生から聞いて用意した皇子さまの為のものですからどうぞ?」
ぐいっと差し出され、なら仕方ないかとおれは受けとると額の汗を拭った
うーん、飼われてる気がする。というか、ノア姫いつの間にそんなこと教えてたんだ、おれは聞いてないんだが?
女性陣ネットワークが勝手に出来てる気がしてならない。まあ、仲良い事は良いことなのでおれからとやかく言うとか有り得ないんだが、少しだけ疎外感を感じる
いやこれ、おれと頼勇達の間柄についてアナ達も思ってそうだな?お互い様か
冷たく冷やされた布が少しだけ疲れ汗ばんだ頬に染みる
「有り難うな、今日明日は大変なのに」
そう、返しながらおれは微笑んだ
そう、今日から二日間は学園祭、通称紅蓮祭だ。アナの出番は最後の最後、大トリであるおれが主演を投げつけられた劇団の簡易舞台の前。つまりスケジュール的には二日目の終わりの少し前以外は自由。なのだが、おれも御存じの通りアナは聖女さまと組む!組を遊びに行きますからって大体振り分けたから殆どの展示に遊びに行かなきゃいけないんだよな
ノア姫がスケジュール表を組んでおれにも共有してくれたが、本当に大変そうだった。まあ、おれもその6割くらいは護衛として同行しろって言われてるんだが
まあ、行きたい奴に行ける時間とかあるにはあるけどな?
「今日から明日は宜しくな?」
「えへへ、アルヴィナちゃんに悪いです
あ、皇子さま。わたしじゃなくてアルヴィナちゃんと行く時もちゃんとしててあげてくださいね?
昨日、眠れないってくらいにワクワクしてましたから」
言われて頷く
が……
「いやそれはアルヴィナ当人が言うために来れば良くないか?」
それを思っておれは首を捻った
「あ、アルヴィナちゃんならすぱるた?って言ってるリリーナちゃんにダンスを教え込まれてましたよ?
何でも、『アイドル舐めないでよね!やるからには完璧で究極!』って……」
あははと愛想笑いするアナに、愛想で頷く。いや、おれとしても流石にアイドルに命懸けてるってのはリリーナ嬢の事としてまだまだ理解が薄いからな。曖昧な対応になってしまう
いやまあ、そこまで本気で取り組んでくれるって有り難いけどな!?後で桜理にも感想聞こう
「皇子さま。皇子さまは一緒に朝御飯食べますか?」
「いや後免、今日は朝抜くよ。というか、アナも朝御飯は御免なさいって食べない方が良い
どうせさ、模擬でお店をやるってグループをいくつも回るんだから、下手に食べてから行くとお腹が辛いよ?」
「太っちゃいそうですよね」
と、自分を見下ろす少女だが、正直胸以外細すぎるんで心配なのはそっちより食べられない方だ
なんて思いながら、おれは最後に少しずつ稽古していた出演の台詞とかを思い出していた
明日までに仕上げないとな