蒼き雷刃のゼノグラシア ~灰かぶりの呪子と守る乙女ゲーシナリオ~   作:雨在新人

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吐息、或いは星座

「おっほしさまー」

 流石にアステールとて大声を出すほど空気読めないわけではない。おれにくらいしか聞こえない大きさで、ポツリと呟く

 

 一応貴族も(大概は下級貴族だが)通う学園、講堂の椅子も案外良いものだ。平らとまではいかないが、案外背もたれを倒せるリクライニングシートになっている

 なので頭だけ倒さなくて良いように席を倒し、満天の星空が映し出された天井に張り巡らされた布を見上げる。完全に空に見え、知らなければこれが白い布に魔法で投影されているだけだなんて思わないくらいの迫力だ

 

 が、正直要らなくないか?とおれは思わず環境音に内心で突っ込んだ。微かに虫のさざめきと草木が風に揺れる葉音が聞こえてくるんだが……風まで吹かせてるし。プラネタリウムに臨場感、要るか?

 

 「風情だねぇ……」

 要るのかもしれない。案外好評だった

 が、そこの風担当だけは駄目だと上体を起こして隻眼で睨み付けた

 

 「ひっ」

 無言の圧力。血色の眼光は死兆を告げる星の如く、青年の心に影を落とす

 逃げ出すようにして、青年は風を止めて姿を消した

 

 「忌み子」

 「風で来てくれた女子のスカートを捲るのは、星を見せる者としてどうなんだ?」

 叩かれる肩、苦言を呈してくる部長に一言返せば、すまんとすぐに責任者は離れた

 うん。アステールのスカートが僅かに浮いてたし、臨場感の為の送風魔法を唱える立場を悪用してパンツ見てたのは間違いない、アホかあいつ

 

 解説が始まった頃、遠くでみぎゃぁぁぁっ!という悲鳴が微かに耳に届いた

 多分空の星より地面のスカートの中か?と締め上げられたな?

 

 閑話休題。見上げた空は本当に満天の星空だ。天文部が見てきた夜空を、記憶そのままに魔法で映しているのだが……実に見事に星だらけ

 「ステラ、こんなのはじめてー」

 何かを噛み締めるように、横で少女が溢す

 

 「……おれも、ここまでのは見たことないな」

 「おーじさまもー?二回も生きてるのにねー」

 「人々が明かりを点すから、星は全然見えない」

 そう。星が消えてなくなった筈はないのだから、常に輝いている筈だ。王都でも、草原の中心でも、天空山であったとしても

 けれども見えないのは、周囲が明る過ぎるから。おれが見上げる空は、大体の場合疎らにしか星がない。ニホンでも、此処でも。特に煌めく星だけが、周囲の光があって尚、視界から消えず空に見える

 

 「でもー、ずっとあるんだよねー?

 そうだよね、おーじさま?見えてなくても、罪もお星さまも消えないよねー」

 正論止めてくれないか?

 が、本当に……正にその通りとしか言いようがない。天の光は大体星。それは見守る死者にも例えられる。とすれば、此方から見えずとも常にそうなのだ

 だから、下手なことなんて出来やしない。そうだろう?とおれは置いてきた愛刀から分離したガントレットパーツを撫でた

 

 って、流石に失礼だな、と意識を戻す

 ……落ち着かない。さわさわと脚に毛先が触れる揺れる尻尾が、繋ごうとする手が……夜空の投影よりも横の狐少女が気になってしまう

 

 「これらの星を繋ぐと、伝説の姿を象った天狼座が」

 と、解説を聞けばちゃんと星空の中でも特に煌めく幾つかの星を線が結び、天狼っぽいイラストが背後に映った

 うん、現実の星座もそうだが結構無理矢理だなー、と。オリオン座なんかも何も知らずに見れば台形を重ねたようなものでしかないし、あそこから人を連想するのは無理があるかもしれない

 

 が、だ。七大天の似姿である幻獣が星座として語られるようになったいきさつを語りはじめる声に、大人しくおれは耳を傾けた

 

 「こうして出会った狼は、きっと空の神々の所へと帰ったのだと、そうして2200年前に見出だされたのがこの天狼座です」

 聖女や帝国より古いな、その逸話。だがまあ理解は出来る。ノア姫も教えてくれるが、伝説の聖女も星座について語った逸話が残ってる程だ。つまり建国の頃には一般に星座という概念が浸透してたって訳だからな

 

 「おーじさま。おーじさまはステラにとっておほしさまだけど……」

 意識を解説に集中しなおす寸前、耳元に吐息が触れた

 「星座にまでは、ならないでね?」

 「ならないよ。見守ってやることしか、出来なくなるから」

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