蒼き雷刃のゼノグラシア ~灰かぶりの呪子と守る乙女ゲーシナリオ~ 作:雨在新人
まあ、二人相手ならと思って射的や何やのお祭りの定番(学園祭でか?とはなるが、まあ王都の子供も来るしな)の出し物にでも向かおうかと思うおれは、ふと異色のコンビを見付けて声をかけた
銀の髪の二人。どちらも背が低く、けれどもその他の身体つきは対照的。うっすら青みがかった銀と、毒々しい紫の混じった銀と。今は出現していない閉じることはない聖女らしいオーロラの龍翼と、毒を撒くが故に常に硬く閉ざされた物理的な銀翼。あらゆる点で違う、本当に異色のコンビだった
いや何でだ!?アナとアルヴィナなら分かる。でも何で相方がシュリなんだよアナ!?
ってか、来てたのかシュリ、気が付かなかったぞ
まあ、悪意は無いし要らないっちゃ要らないんだけどな、居るかどうかの確認
『まあ、私は欲しいですがね』
なんて呟きは当然神様である。ってか、必要なのか始水
『当然、呪いと海に底は無く、故に総てを受け入れます』
幼馴染様が厨ニ発言しだした。可笑しい、厨ニチックな映画を見た当日くらいしかこんな言動しない筈
『まあ、どちらも底、実は存在しますが。それはそれとして、母なる海と呪いは近しい存在という事です』
つまり?
『私ならば、あの毒龍の思考盗聴、妨害できますよ?という話です』
いや要らないが?
『危機感がありませんね、兄さん』
シュリに隠すべき事以外は隠すべきじゃない。それだけ後ろめたさを感じさせる
『ならば構いません。まあ兄さんに任せてますからね、泥棒猫の処分は
けれど、他の泥棒猫ですら無い毒龍は私にとっても唯の敵。そこはお願いしますね兄さん』
ってか泥棒猫なのか
『泥棒猫です。唯一無二、私に同列の立場で立ち向かってくる、泥棒猫足り得る毒婦。あの折れた角に猫耳カバーでも被せればもう猫でしょう?』
少し考えてみるがまあ可愛い。いや猫耳付ければアナだろうが始水だろうが誰だって元が良いから基本可愛いが。但し最初から狼耳生えてるアルヴィナを除く。ケモミミ4つになるからな
閑話休題、あまり時間を取らせる気もなく、すぐに幼馴染神様の声は消えた
「あ、皇子さまおはようございます」
「お前さんか。息災の……寧ろ息災が過ぎたようじゃの」
ぱたぱたと手を振るアナ、少し手を曲げて袖をたわませ、きゅっと袖の端を握って軽く手を上げるシュリ。ああしないと手の先まで袖に覆われてるからな、おれの贈ったコート
ぱっと見少しだけ避けられてるように見えて、シュリは上機嫌だ
「私達はこれからゼノ君と遊ぶんだけど、大丈夫?」
「っていうか、あの子!」
「ストップだオーウェン。シュリ“は”敵じゃない」
そう強く、おれは少年を止める。が、まあ言いたいことは分かる。……いや分からないか、多分シュリ当人への敵意だしなこれ
理解は出来るが、おれは味方であると決めたのだ。この世界を、皆を、心の毒のままに腐り落とそうとしない限りにおいて、彼女の、昔のおれの酷い版のその手を離さないと
それは、おれが心の底できっと願ってた事だから
「でもさ、シュリ?
お姉さんや近所のお兄さん達は来ないのか?」
だが一応ぼかして聞いておく。が、龍少女は少し嬉しそうに顔を上げて首を横に振った
「儂しか興味を持たぬよ。子供達が行う児戯をもって作る児戯など……
不格好ではあろう?儂はそれでもという心意気が好ましく思うが、そんなもの異端じゃよ」
うん、良かった。そもそもグリームニルも【
この辺りの思考を読んでる筈なので、表情が曇らなかったから確実だ。シュリに素面で人を傷付けるための嘘吐くだけの顔芸技能はないからな
ちなみにおれは出来る。他人を傷付けるための技ばっかり育って自分で情けない話だ
「そうか。ならアナ」
と、おれは腰のポケットから手帳大の綴を取り出すと、ちょい豪快に10枚ほど千切って手渡す
「あ、皇子さま?」
「シュリの世話、頼めるか。こういうところ多分初めてだし、楽しませてやって欲しい。余ったらアルヴィナと遊ぶのに使ってくれ」
渡したものは簡単、チケットだ。そう、この学園祭、特に模擬店なんかで細々としたお金のやり取りは面倒だしトラブルの元。ってことで、全部チケット制なんだよな
ちなみに、入るのにも金がいるといったが、それはこのチケットを3枚以上買う事を要求するという形。10枚1ディンギルなので模擬店等利用代兼ねてるとはいえ日本円で約3000円。聖女様相手に云々で学園祭には興味もないのに払うには高いので、相応に人が絞れるって感じだな。そもそもアナに会いたいだけなら教会へ説法なり治療なりやりたい!って来てくれるんで待てばタダだ
「はい、任されました!シュリちゃん」
「その名では、呼ばんでくれんかの?ある種、儂の【
他の名であれば、別に構わぬが」
「じゃあ……あれ、難しいですね?」
と、首を傾げるアナと共に、上機嫌なままの毒龍神は足取りも相対的に軽く去っていった
「自分も子供じゃん」
「だよね」
「龍姫様も子供か?」
外見13~14だぞ、始水、とおれはシュリに敵意を向ける二人に突っ込んだ
「そ、そうじゃないけど」
おどおどと、少年が頭を下げる
「ひきょーだよゼノ君、あの龍の子は龍姫様じゃないじゃん!」
「あら、あまり苛めは感心しないわね」
と、実はアナとシュリが去る少し前からチラチラ視界の端に居たエルフが、そろそろ良い?とばかりに告げた。何時もの割とかっちりした服(なおミニスカート)ではなく、割と簡素な服だ。まるでエルフの伝統的な……
「エルフ服なのか、ノア姫?」
「悪いかしら?学園側にも言ってあるし、別に服装規定は無いはずだけれど」
いや、と肩を竦めて、おれは服装を見ながら尋ねた
「ひょっとして、エルフ側で何かか?と思っただけだよ、ノア姫。例えば家族を呼んだとか」
「あら、やっぱりアナタの父の友人、呼んで良かったの?」
っ!
思わず愛刀を召喚して構え
「家族は呼んだわよ。でも、家族でないモノは呼んでないわ。そう心配しないでも、アナタの信頼を裏切る気は毛頭ないわ。その分、ワタシの信頼にも応えて貰いたいものだけれど
妹よ、呼んだのは。咎の理由も分かったし、あの娘元々好奇心強めで人間好きだもの。何時までも貴女まで咎落ちしたら困るわと言うのも可哀想でしょう?」
くすりと笑う妖艶さすらある幼い顔に、ほっと息を吐いた