蒼き雷刃のゼノグラシア ~灰かぶりの呪子と守る乙女ゲーシナリオ~   作:雨在新人

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困窮、或いは満月の提案

「困った事になったな、皇子」

 と、アナ……には時間のかかるプラネタリウムに行ってしまったから会えなかったので、という所で頼勇を発見して合流。そうすれば、彼は肩を竦め、父たる白石の力でホログラムな何かを見ながら呟いた

 

 「ん?どうしたんだ竪神?」

 おれには分からないので首を傾げる。横で小さくおれに手を振ったエルフの女の子……リリーナ·ミュルクヴィズもこてんと小首を傾げていた

 「えっと、人間社会を知るのを手伝ってもらったから何か問題が」

 「いや、此方の出し物の問題だ。君には何ら非は無い

 ただ、皇子。想定外に近い事態だ」

 言われ、蒼き髪の青年を見る。真剣な顔だ、あまり冗談ではないだろう

 ってか、冗談を仕掛けるならロダ兄も来てる気がする

 

 「何があった」

 「聖女様方が来てくれたというのは聞いていると思う。そのお陰もあってそこそこの人が入ってくれていたんだが……」

 「人が多すぎた?」

 「そういう嬉しい想定外では無いな」

 言って、青年は講堂外壁に備え付けられた大時計を見る。もう今日の一般客の入りは終わり。最後に少しだけ余韻というか……所謂中夜祭をやって二日目の為に休む時間だ

 

 「……」

 あ、隠れたように小柄な影が見える。あの栗色の髪はアレットだな

 異様に落ち込んでいる……ってか怒りに肩が震えているのだろう、何があった

 「アレット絡みか」

 「ああ、謎解き脱出ゲーム、試みは面白いし特に銀の聖女様は良いですよこれと宣伝してくれてはいたんだが……。本質は謎を考える楽しみだ」

 嫌な予感がする

 「謎の全てを喧伝されては、どうにもな。来てはくれるとして、楽しみを本当に供給できるかと言われると困ったものだ」

 うーん、其処が元から問題ではあった。しっかりしたプロの作品ならば演出等でネタが割れていても楽しませられるだろう。そう、推理漫画のアニメ化のような奴だ。あれは原作で犯人も動機もトリックも何もかもバレているが、それでもファンからすれば見たいものになる

 が、今回のあれは学園祭の出し物。タネが割れていても楽しめる程に演出とか凝ってない。そんなコストは無い

 となると、話のタネが全てバレてるとなると、行く理由がなあ……となる訳だ

 

 「時間内クリアでのダンスとか。竪神やロダ兄……は駄目か」

 時間内にダンスって答えを導けた人にはそれっぽく追加ステージで頼勇やロダ兄演じる幽霊と踊るものを用意していたんだが。ちなみに男性クリア者向けの幽霊はというと、ロダ兄がアバター弄ってやってくれてる。モデル調整なんかは桜理だ。男っぽくあろうとしたから女の子に見られやすい動きは分かるって、少しだけ嫌そうな顔だが手伝ってくれた

 「もう誰でもクリアだぜワンちゃん?」

 ひょい、と現れるのはロダ兄。言われて頭を抱える。そうだよな、エッケハルトはクリア者少ないだろうと言っていたが、全部の答えを最初から皆が知ってればクリアは簡単だ。そうなるとダンスの相手役はてんてこ舞いだ

 

 「やられたな」

 「しかも、聖女様を引きずり込もうと噂まで流されてる」

 「え?」

 リリーナ嬢が目を瞬かせた

 

 「と、話しにくいだろ?俺様が持とうか?」

 「宜しく、ロダ兄」

 と、ヌイグルミを託すリリーナ嬢を見ておれは自分で己の腕をつねる

 「ゼノ君?」

 「悪い、気が利かなかった」

 「いやいや良いって、ゼノ君はさ、話をして色々と考える立場だもん。聞いてるだけの私と違って」

 「んで、俺様は縁あるから聞いてるだけの聴衆。ワンちゃん達の方針に従うぜ?ま、余程駄目なら止めるけどな」

 

 言われ、おれは目を閉じて考える。この場合は……

 「エッケハルトが別のパターンのシナリオ考えてた筈だし……

 いや、厳しいな」

 「徹夜で飾りを用意して変えていって、間に合うか?という状況だ」

 駄目だと首を横に振る

 

 「エッケハルト様を貶めて、こんな勝ち方……」

 ぐぬぬとハンカチを噛むアレット。おれは嫌いだがおれが嫌いなだけだからな、彼女。ここまでして勝負に勝つのは嬉しくないか

 

 が、その瞬間。おれの服の袖が引かれた

 

 「……問題ない」

 「アルヴィナ?」

 ひょっこり現れたのは、アナお手製のアクセサリ(魔神警報が鳴らなくなるスグレモノだ)を大事そうに首から下げ、何時ものブカブカ帽子がピン!と伸びた耳で更に頭から浮いている魔神娘

 満月色のメカクレした瞳は爛々と黒髪の下で輝いている。いやこれ危ないな?魔力が昂ってる

 

 「皇子。ボクもこっそり見に行った」 

 「こっそりなのか」

 「あーにゃん、あの毒物と行った。あの毒許さない

 ……でも、それはそれ。見る限り、あれはプロムナード」

 言われて頷く。ってかアルヴィナちゃんとプロムナードって……分かるか。仮にも魔神族のお姫様で貴族として潜入操作してたんだから

 

 「ならば、簡単。乗せる物語を変えて、人を呼ぶ」

 「とは言うが、人は悪しき縁を求めた言葉に惑っているぜ?」

 「そんなもの、切り開く」

 じっ、と少女の月瞳がおれを見詰めた

 

 「覚えてる?ボクが、皇子とちゃんと再会した時のこと」

 「竪神達とやりあって大変だったな」

 「……嬉しいけど、違う。ボクと皇子が敵として演じあった時の事」

 言われて思い出す。聖教国異端抹殺官(サバキスト)絡みであったな、あのパーティ

 

 「あの事実を、物語仕立てにする。謎解きではなく、追体験するような物語」

 「あの時の戦いを、幾つかの部屋で物語仕立ての展示にするのか?

 確かに、秘されてはいないが人々は直接見てはいない。物語には出来なくもないが」

 「生憎その事件自体は俺様はまーったく知らないが!必要なら手を貸すぜ?」

 ぽん、とおれの肩を叩くロダ兄。彼がこうやって投げてくるのは相応の信頼と理解の証だ。やれると思ったから手伝う、この辺りシンプルな彼が認めたなら

 いや、それ以前におれじゃすぐに思い付けなかった事を言いに来てくれたアルヴィナの為にも

 

 「……やろう」

 そう呟くおれの脳裏には、大事そうにおれをモチーフにしたアステール考案のヒーローの人形を握りしめる少年の顔が映っていた

 

 「竪神!おれだって出来る限り手伝う!間に合うか!」

 「小道具を作らなくて良いならば間に合わせるさ。だが、皇子には劇の前に負担を強いる」

 「ワンちゃん、ワンちゃん自身の言葉が一番響く!音声は任せな!言うべきことだけ考えてくれりゃ後は俺様が仕上げる!」

 「行けるな!ならば!やるか!」

 そんなおれを、おーと小さく手を突き上げてアルヴィナは応援し、少し着いていけなさそうにリリーナ嬢は肩を震わせていた

 あ、エルフの方のリリーナ(ノア姫の妹)は割とノッてくれてる……って分かりにくいわ!

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