蒼き雷刃のゼノグラシア ~灰かぶりの呪子と守る乙女ゲーシナリオ~   作:雨在新人

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異伝 早坂桜理と、前世の因縁

「……にしても、どうして来たのさ」

 獅童君……皇子が銀の聖女様と共にメインになる大絵画以外のものを折角だしとちゃんと見てる時、残された僕は、意を決して所在なさげな金髪の少女に話しかけていた

 

 昔からそうだけど、背丈はほぼ変わらない。女の子になっちゃった今の僕は兎も角、ちゃんと男だった頃すら、同じく僅かに見上げてしまう身長差

 

 怖い。でも、と僕は己の前髪に何時からか混じるようになったサクラ色の髪一房を左手の小指にくるっと巻く

 同じ……僕の他の髪は真っ黒だけどそれとは違う白桃色だから結構違うけど何だか似た髪色をした人が、俺様と同じなのを誇れって背を叩いてくれた特別な色

 だから、前世の姿そのまんまな彼女……僕を虐めてきていた竜胆佑胡だって、目線を逸らさない

 

 「……あーしは、呼ばれたけど時間潰すために暇そうな場所行っただけだっての」

 こんなところ来たのそっちじゃん?と、金髪の少女はドレス……より制服に近い服の袖をぱたぱたと振った

 「……好きなの?」

 「あーしは漫画とか読むけど?だからこんな一枚絵よりそっちが良い。皆同じでしょ?来ない来ないって」

 その言葉には少しだけ同意したくて。けど聞こえてるからと憤る気持ちもある

 

 「……にしても、半端。キモくないわけ?」

 「君に言われるのは嫌かな」

 僕自身、ちょっと自分でもどうかなとは思ってる。サクラ・オーリリアとしての自分と早坂桜理としての自分。女の子である覚悟も、男の子として生き抜く決意も、今は足りてない

 獅童君が、僕を女の子にしてくれてたら。或いは、今の彼女のようにキモいと完全に拒絶してくれていたら。何か違ったのかな

 

 「黙んないでよ、あーしが悪いみたいじゃんか」

 「君が悪いよ、色々と」

 「昔さ、なんにも口ごたえしなかったのに」

 意外そうに目を見開く金髪。女みたいなオタクって僕を弄ってきた時ほどには怖くない。僕が変わった……というより、取り巻きが居ないからかな?

 でも、今のほうが自然。取り巻きから裏切られないようにか、他人に望まれるよう暴力的だった雰囲気が今は柔らかいから…

 って、無理。変わってても無理!

 

 ぶんぶんと頭を振る僕。やっぱり、マジマジと対峙すると、どうしても脳裏に浮かぶのはあの日々の言葉ばっかり。女々しいかもしれないけど、この相手と和やかに話なんてしたくない

 「……昔だって、言いたかった」

 だから、絞り出せたのはそれだけ

 

 「なら言ったら良かったじゃん、ばーか」

 「言えないよ!」

 「……それがばーか、分かれ?

 獅童の馬鹿は勝手に死んだけど、それまであーしに噛み付いてきてた。お嬢様に見捨てられて一人で死んで、間抜けで馬鹿で意味不明で、でも言い訳なんて無かった」

 こつんと気楽に右手の中指と人差し指に額を小突かれながら言われて、言葉に詰まる。息にも詰まってしまう

 

 確かにそうだから。庇おうとして苛めの矛先を集中させていた青年が根深いトラウマから錯乱して事故死して。それで怖くて何も言わなくて良いって逃げてたのは昔の僕だから

 守ってくれる皇子が、獅童君が居るから今は言えるだけって言われたら、何も変わってない気がしてしまう

 

 「……言い返しなよ、バーカ」

 ……その声は、何処か寂しげで。獅童三千矢が死んだって言われたあの日以降、僕への苛めを復活させた後の……何だかつまらなさそうな竜胆佑胡のものと同じ

 「……じゃあ言うけど、今世では男になれたのに、変わってなさすぎない?未練でもあったの?」

 言ってて、自分で嫌になる。未練があるから、女の子として産まれた今世を肯定しきれないから似たことやってるのにね、僕

 「……ってか、普通に受け入れる、フツー?」

 あ、変な返しされた

 

 でも、と僕は考える。確かにそうなんだよね。当たり前のように受け入れてるみたいになってるけど、眼前の少女はユーゴ・シュヴァリエって名前で公爵家の跡取り息子をしてたのに

 ……いや、思い出すのに時間かかったよ今?

 「何ていうか、僕等との関わり殆ど無いから、今世の姿に馴染みもないし、違和感とか無いかなって」

 例えばなんだけど、今から実は皇子の前世が獅童君じゃなくてゼノガチ勢の女の子でしたっていって前世姿になられたら、受け入れ難いと思う。でも、そこまで今の世界で生きてきた状態を知らないからどうでもいいっていうか

 

 「ぷっ、笑える」

 と、少しだけくすりと笑った少女は、貰ったタオルで口を拭うと真剣な顔つきになった

 「……何で、受け入れられてんのさあーし

 ってか、何で獅童には正体バレてた訳?ユーゴとしてのあーし、ちゃんと出来てたと思うけど?」

 いや、僕に言われても

 

 なんて思いつつ、考えてるフリ。答えを出そうとしてる感あったら、話しかけてこなさそうだし

 

 ……あ

 

 思い付いてしまった。いや、僕ってユーゴ時代知らないけどね?獅童君は言われなきゃ原作通り獅童君っぽい性格だなーとしかならないけど、ユーゴって教王で大貴族でって人だとしたら明らかおかしい点なら、すぐに出てきちゃったから

 無意識的に、獅童君もそれを感じてたのかな?だから、違和感からユーゴとは竜胆佑胡の性別逆転した転生者だと分かった。僕っていう、前世と逆の性別になる可能性を知ったから、その可能性を考慮に入れて……答えに辿り着けるようになった?

 

 「は、何?分かるわけ?オタクのアンタに?」

 言われて苦笑する僕。でも、僕は向き直る

 「オタクじゃないから分かるんだ

 いや、オタクでもきっと分かるよ」

 「勿体ぶんなし」

 「……一つ聞くよ。獅童君と対峙して、一番厄介だと思った味方って誰?」

 此処で、僕なんて答えは返ってこない。それは少しだけ残念で、でも、仕方ない

 

 「何落ち込みながら言ってんのバーカ

 そんなの……」

 あ、言い澱んだ。僕なら一択なんだけど……あれ?良く考えたら僕も一択じゃないや

 「一回処刑した時に誤魔化したアルデ」

 「……竜胆。アルデを殺したのはおれだが、殺させたのはお前だ」

 と、別の絵を見に行く最中に眼の前を通った火傷痕の青年が冷たく一言

 こういう時、釘を刺し続けるよね獅童君……。自分自身にも、刺すように

 

 「ったく、あーしだって分かってるって

 アルデじゃないなら、やっぱり竪神?いやでも聖女のチート無しに逆転も有り得なかったし、何でかロダキーニャ居るの訳解んないし、魔神王とか共闘してくるの理不尽極まるし、エルフも味方しに来るのゲームじゃ有り得ないチートで」

 もう良いよと、僕は遮る

 

 「うん、僕もさ、エッケハルトさんとかずるいなーって思うよ

 でもさ、そうやって挙がる候補……気が付かない?」

 「何が?」

 「女の子の名前より、同性……男の子の方が、すらすらと挙がるって」

 それが何だよって睨まれて、びくっと肩が跳ねた

 

 「け、けど!分からない?

 実はさ、獅童君みたいに同性の人との方が、気安く友達になりやすいんだ

 だから、心が男の子なら……ユーゴ派って僕が見た限り女の子しか居なかったけど、その状況って変なんだ」

 「同列の仲間なんて要らないってだけかもしんないじゃん」

 「……ううん、それは無いよ。獅童君が立てた作戦はアガートラームを使わせる所から始まってた。確かにほぼ何でも圧倒出来る力はあったけど、取り返しがつかない程に魂を燃やさせる可能性から出来る限り使いたがらない。その状態で……自分が最強だからって一人で良いとは言わないよね?

 あの感じが、違和感あったんじゃないかな?特に貴族って、繋がりが重要なのに」

 ぶすっとした顔で、黙る金髪のいじめっ娘

 

 僕は意を決して、言葉を紡ぐ

 「オタク趣味に触れたなら分かるでしょ?性欲っていうか可愛い女の子をたくさん見たいって気持ちは男ならきっと簡単に持てる。でもね、子供の頃に見て憧れるのは……心の奥底にきっとずっと残る姿はね、同性のヒーローの姿なんだから」

 今の獅童君がやっている、魔神剣帝みたいな、ね。と僕は拳に勇気を握って締めた

 

 「ウケるんだけど」

 その言葉は否定のようで、けれども手が出てくることはなく少女は胸元にまで上げた己の手を見下ろしていた。それはきっと、自問で

 

 「ゼノ君ゼノ君!大変大変!」

 その時、扉が開いて胸とツーサイドアップを弾ませて飛び込んできたのは、桃色の聖女様であった

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