蒼き雷刃のゼノグラシア ~灰かぶりの呪子と守る乙女ゲーシナリオ~ 作:雨在新人
「アナ!」
響く声に叫ぶ。遠巻きに、あまり巻き込まれないように……さらっと横にいざとなれば転移で逃げるわとばかりに杖を構えたエルフ少女を従えて姿を見せたのはやはり、その手に魔法書を携えオーロラの翼を拡げた銀髪の聖女であった
「わたしが、全部治します。夢は、他人にただ見せてもらうものじゃありませんから」
意思を込めた強い瞳でこちらを見るアナを見て、いや見るのおれか!?と少し焦る。敵の方見たほうが良くないか!?
が、仕方ない。直接戦闘能力についてアナに期待するのも可笑しいしな。彼女を襲わせないようにおれ達が動くべきだ。実際、この場ではトゥナロア姉妹の精神汚染をどんな回復魔法でも解除できる聖女の特徴は役に立つ!向こうからしたら忌々しいほどに!
「聖女を出せたならば、あとは」
そうだよなニーラ!此方に重要な力が有るなら、それは敵にとっては潰すべき良い標的だ
「はっ!希望って奴は食い甲斐があるからなぁっ!」
フードの少女に合わせて猛然と駆け出す巨躯。四腕故にか一対の腕すら地につけて災害が四足で疾走する
だが、それでも
「
更に援護するように少女の指示に合わせて翼を打ち震わせようとした鳳の翼を持つ青年ゾンビの機先を制すように、鬣の巨神から分離した鳥のような支援機がエナジーウィングを噴かせて突貫した
アイリス操作……じゃないな、頼勇の腕に石として魂だけ残ってる貞蔵さんによる操作で支援機を
勿論エンジン直結してないから出力は支援機単体のものに落ちるが、今はそれで良い!
「動乱のウェントス!」
疾走してくる相手は、翼を持つ巡礼者の巨神が放つ旋風が受け止めるのだから!
全く、良く分かってくれる!
「アウィル!」
『ルルルゥ!』
上を向いて遠吠えすれば、白狼が白き龍へと飛び掛かる。同時、赤の龍が喉元などに走る青いラインを輝かせながらブレスを放った
それを受け、緑光の拘束を打ち破った龍は動きを止め、鱗に覆われた飛びにくそうな重厚な翼を盾にして受けざるを得なくなる
うん、アウィルの毛が焦げてるし連携は微妙そうだが止められなくもない
「そろそろざこざこおにーさん返してよー!」
「ふふっ、2人を止めるのかしらねー?」
そして、動くのは精神汚染を得意とする二人
「そう、意気込むのは良いけれどあなた自身を蕩かせば」
「そういう時には私が居るけどね?怖いけど私だって主人公の立場だもん」
「い、一応は僕も……あんまり役に立たないかもだけど」
が、その言葉を遮るのは明るく張られた声……とオドオドした桜理のそれ
って、無茶してそうな空回りする響きが混じっているな?
現れる……いや少し前からちらりと赤龍を観ていた飼い主のリリーナが物陰から姿を見せる。更に背後には弓に矢をつがえて最悪撃てるようにしているシルヴェール兄さんと……あ、隣の部屋の窓から転入生扱いなエルフのリリーナも狙いをつけてるな、助かる
まあ、ノア姫が伝えてくれたんだろうがな
そして、離れた所には微妙な顔で持ち込んだろう一本の刀を見つめるリュウと、刀を手渡した……いや拭く布だけ渡したろう仮面のラーワル。いや何でだと思ったが、見栄として汚れはあってはならないか
……拭けていない?なら、あの刀は……
いや、良い。全く恵まれたものだな!
そう思いつつ、ニュクス等をなんか分身しているロダ兄等に任せておれ自身は難しい顔をしたニーラ・ウォルテールへと向き直る
あちらとしても何処まで攻めてくる気があるかは分からない。少なくとも今魔神王に与する中ではかなりの穏健派というかアルヴィナ寄りだからな
「……これ、は」
「見て分かるだろう、ウォルテール。舐めてかかられたものだな」
「……唯一本気を出せるアドラーの屍すらも、止められるか」
「舐めるな、四天王!」
ぶん!と振るわれるブレード。合体したダイライオウのパワーに押されてまた鳳姿へと転じた魔神は逃げ去るように雷鳴を纏って飛び上がった
それを追い、放たれる砲撃を更に避けるが、反撃に転ずる様子はない。おれ相手なら直接嵐を纏って只中を突っ切ってきそうなのにな!やはり、ジェネシックだ何だが無い中での最高火力、受けきれないか!
「ってことだ。本当に舐め過ぎだ」
「だとしても、アドラーを討ちアルヴィナ様を喪わせた貴様等に対して、何もなく引き下がる訳に」
……成程と理解する。要は何もなく帰れるかという話だ
ついでに、やはりというか何というかアルヴィナが此方に居るの理解してるなこれ?喪わせってわざわざ討ちと分けたのはアルヴィナが生きてると知ってる意思表示だろうな
……始水
『はいはい、わざわざ取っておいた変身を見せるって言う訳ですよね兄さん?』
話が早い!
『ですが、今回は私主導にさせて貰います、良いですね?只でさえ自分を焼いてるのに反論はありますか?』
無い!
にゃあ、と鳴く声がした
アイリス?と思えばやはりおれの膝には収まらない猫。アイリスのゴーレムだ
ならば……
「
『ハイブリッド』
!?いや、始水に合わせてちょっと英語っぽくするなら
『『「
ハモる3つの声。いやこれで合ってるのかよご先祖様!?ってか何なんだこれ!?何時ものじゃないが
『オーバー!クロスフュー』
「ワンダー!」
フューチャーと言いたそうな始水の声に被せる。いや、言いたいなら言って良いよとしたいが、個人的にフィーチャーリングってか未来に繋がりそうな言葉は取っておきたい。この先何処かで辿り着くべき、更なる力を合わせた形態にな!
『掛け合わせ 探し連なる7つの光
絆が紡ぐ、未来の約束!』
『ハイ!』
ご先祖が始水に続ける
『ハイ!』
『『ハイ!』』
合わせるアイリス、更に血筋の二人の声が合わさり
『『『ハイ!』』』
始水も合わせて三重奏、合計7つのハイ!が出揃った瞬間
『『『ハイブリッド!』』』
『アルコバ』
『レーェー』
『エーェー』
始水の声をアイリスが継ぎ、更に……いやアルヴィナ!?
『『『ェーノぉっ!シンギュライズ!』』』
あ、最後に女の子だけで唱和した
同時、纏うのはアイリスのゴーレムのパーツ。迸るのは虹の光
「スカーレットゼノン!アルコバーレノ……アルビオンッ!」
荒れ狂う怒りではなく生きたかった共生を紡ぐアイリスのゴーレムとの合体形態。速度と他人を守る事にだけ特化した、あの日の合体!
おれへの負担も正直低い!成程、始水はこれを……って何なんだよさっきの歌!?
『短くてすみません兄さん。調整に手間取った上に兄さんの未来はまだ使いたくないというのも最もだったので不完全です』
別フォーム詠唱変えるのかよ!?……ってかそこは気にするところなのか?おれが介入してて何だが
「……何、それは……」
「絆が紡ぐ
此処で皆を守り切るためのおれの切り札だ」
全員に対して障壁を一瞬貼り、おれは凄む
こういうこと出来るのこの形態だけだよな、アイリスありきだ
「……隠していた防衛策……ですか。ということは」
少しだけ、少女の赤い瞳が迷うように下を向く
「その切り札の存在だけでも、持ち帰るべきという話ですか」
「冥土の土産に、出来るならしてやりたいところだが」
「御免ですね。では……」
そして、少女が手を上げようとしたその瞬間
空気が、凍りついた
「何やってんだ、ニーラ
逃げんじゃねぇよ、死んでもここなら構わねぇだろ?戦えよ、アドラーとアルヴィナの敵討ちだろ?」
空間が七色に割れ、現れたのは……見覚えがある、男だった。いや大体の外見は痛いほど見た。RTAとかコイツ相手の事故覚悟で低レベル進行だからな!そう、その軽薄そうな顔と蒼い炎を纏う七色の剣な片翼には違和感ある男の名は!
「テネーブル・ブランシュ!」