蒼き雷刃のゼノグラシア ~灰かぶりの呪子と守る乙女ゲーシナリオ~   作:雨在新人

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夜の帳、或いは二つの月花

ふぅ、と息を吐きおれは青年に手を差し伸べる。色々と怪しい、いや異様に怪しい

 

 だがそれは、この仮面の男が自分から己は怪しいやつなのだと語ったが故である。自身の権能を見せつけ、三首六眼としての力に対処させた

 正直、互いに本気なら負けてたろう。もうちょっと上手い使い方ならおれでも思い付くんだから

 

 ……シュリと同じだな、怪しすぎて逆に敵に思えない。だから手を伸ばして……が、それは何者かに遮られた

 

 「剣舞動乱、剣兄、今度は!」

 それは、ラーワルを連れてきた男だった。ワクワクした顔でおれを見て、早く戦えとばかりに刀の鍔をカチャカチャ鳴らしている

 

 それにおれは……いや待てと言いかけて止める。好き嫌い激しいんだよな原作のコイツ。死んだと思っているラーワルを何とかしようとしていたりと気に入っている相手については本気出すし魂の妹だ何だ寄ってくるが、そうでないとかなり冷淡

 まあ、王族として知らぬ相手にも手を伸ばして自分が傷つく方が問題とかそういう思考なのだろうし正直おれ……というか帝国の皇族が可怪しいのだが……まあそれはそれ。おれは好きだからな、帝国の理念

 

 「了解だ、リュウ」

 そう告げてちょっぴり遠巻きにしている人々の間から入れ替えで飛ばされた鉄刀を拾おうとして……

 「無用」

 ジャキン、と音がする。流麗な刃が陽の光を湛え、カードが起動する

 

 「おやおやすまないね、それは許されないようだ」

 「ラーワル」

 「口伝決闘、師より伝わる月花の名を冠する刃、その力を見せて貰う!」

 そのまま、青年はおれへ向けて斬り掛かってくる

 

 いや、意図は分かった。だがそれどうなんだ!?

 「いかがなものかな、それは!」

 飛び下がり、様子を伺う。煌めくのは金属としてはかなり白い刀身、鉄というよりは淡雪のような光を湛えた雪原を思わせる弧月は、神器『刹月花』のそれ

 

 「申し訳ないがね、双角の師より様々に噂を教えられていたのだよゼノ皇子。どうか付き合ってやってくれないものかね

 与えられた刀の神器が、真に彼の語る最も新しい神器に勝ちうるのかどうか……此方としても興味は尽きないものなのだから」

 

 「あれ、どうだっけ?」

 「いや俺に聞くなよ!?」

 あ、遠くで転生者二人が首を傾げている、と確認する

 

 言いたいことは分かる。ちなみにだが、RTA勢からすれば……大体月花迅雷の方が上で良い

 

 「ったく!こんな事で振るって申し訳ないが!」

 更に飛び下がり、吹っかけられた決闘の範囲ギリギリに着地しながら愛刀を手元に招来、単純に軽く海色の刀身を晒す

 

 ドゴン、と解き放たれた稲光が青年の足元を穿った

 「脅威至極、稲妻を放つ!」

 「そうだ、リュウ。確かに神器同士だが、片方が雷撃で遠くから射抜ける以上直接斬り結ぶ分には勝負にならない」

 静かに、おれは告げる

 

 実際、ゲームでもそうだ。というか刹月花は刹那時を止めるという一見途轍もない能力に反し使い手の技量がものを言う技巧派の神器なのに対して、月花迅雷は誰が持とうが強い暴の化身だ。そして……

 

 すっ、と周囲が暗くなる

 「月下の決闘に、火花が散る……」

 ふんす、とアルヴィナの声がする。が、周囲は作られた夜闇に覆われており姿は見えなくなっていた

 「華麗美麗、魂妹よ、決戦の場に感謝する」

 「い、一応やってるの僕……アルヴィナさんこれで良いの?」

 「ボクの皇子が月花の刃を振るい勝つ場として、綺麗」

 なんてやり取り。おれと流派は同じだからか鞘に雪色の刃を納め、青年は満足気に手を叩いていた

 

 ……マディソンの方がまだ強いぞリュウ!?

 一気に不安になる。いや多分なんだが……ゲームでも入手時期今から数年後だし、その時まで誰も刹月花を持っていなかった事から多分リュウが手にしたのってごく最近なんだろうが……

 それにしても、これは無い、と竜胆相手に見覚えがある桜理が魔法で貼った夜の帳を一瞥する。いや、桜理が悪いのではなく、これを良しとする精神がだが

 

 「月花決闘、火花を散らすものと」

 刀を抜き放ち抜刀術ではなく素直に楽しげに斬り結びに来るリュウ、それに対しておれは……刀を抜くことは無く、むしろ腕を組んだ

 そして、そのまま刃を振り下ろす青年を見据えれば、隙のある足運びの瞬間、地を蹴り上げて足並みを乱す。そのままほんの短距離の縮地で距離感を変え、軽く右足払いで体勢を崩し、行けるなと確信して続けざまに左足を軸に体を一回転、隙を用意しながら右踵でバランスの取れないままの留学生の顎を蹴り抜いた

 

 硬い感触、バリアはちゃんと生きていて、けれども大きくその身体を吹き飛ばす!

 「ぐけっ!?」

 ワンバウンド、地面に転がりながら青年は一瞬刀を手放してしまい……がそこは流石に第一世代神器、直ぐに手元に戻ってきてそれを支えにブレーキを掛けてリュウは止まった

 

 この時点で、完全にマディソン以下だ。いや、今はしょうがないが……この事態分かりきってたろう

 

 「……皇子?」

 「皇子さま?」

 「ゼノ君、ちょっと酷くないかなその手加減!?」

 「せめて刀を使ってあげようよ」

 女性陣総ツッコミを受け流すおれ。いや遠巻きに見てるはずの監督のノア姫は気が付いたのか何も言ってないな?

 

 「帳を解除させてくれ、アルヴィナ」

 「何で?」

 「外からは見える帳越しに見ての通りだ。こんな情けない刹月花相手には、同じ月花の名を持つ刀を抜く事すら無礼に当たる」

 「それは非道な発言ではないのかね?」

 「非道ではないさ、久世殿。この決闘場では……最も苦手とする場作りをされては、相手とて刹月花の意味がないのだから」

 そう、そうなんだよな……。だから、この夜の帳を喜んだ時点で駄目なんだ、こんなんじゃさくっと死ぬぞリュウ!?

 

 「驚愕不学、剣兄よそれは一体」

 「ロダ兄!」

 「おっと、良いのかいワン……ちゃん!」

 が、聞きながらもちゃんと意図は汲んでくれたのだろう、帳が消えた瞬間に銃声が響

 

 「…………をするか!」

 ……ビンゴ、良し流石に理解してくれたかリュウ、と内心で頷いた

 刀を構え、銃弾を両断して肩を怒らせる青年に、おれは良しと告げる

 「無礼千万、これは」

 「……あの瞬間、何をした?

 対処するために刹月花で時を止めたのだろう?銃を撃ってきた彼を敵として、刹那の中に彼との決闘の刻を閃かせた」

 「……理解不能、何を言う」

 「その決闘の刹那の間、おれの時は止まり……リュウ、貴方が銃弾を対処しきって息を整えるまでの間が飛んだように見えた

 さっきも同じだ。帳がなく他人を見れれば、竪神辺りと決闘状態になり、おれからすれば蹴り飛ばした瞬間に体勢を立て直しきって今一度斬り掛かってくる寸前まで時が飛んだ状況に持ち込めたろう

 それが、刹月花だ。他人の干渉を受けない刻の狭間で斬り結んで勝てる相手とやるならそれで良し、そうでなければ臨機応変に自分を騙せる一瞬の間ずつでも、その場その場で誰かと自分以外の時を止めて動く事で敵からすれば時が飛んだように隙を産みながら戦う。さっきの帳はそれが出来なくなるもので、喜ぶようでは……」

 師匠のように、あえて厳しく言葉を紡ぐ

 

 「刹月花の持ち腐れだ。月花迅雷を抜く必要などない」

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