蒼き雷刃のゼノグラシア ~灰かぶりの呪子と守る乙女ゲーシナリオ~   作:雨在新人

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得点、或いは不正の影

「さてと、台本渡されちゃったから、今回の対抗戦の上位の人を発表していくよー!」

 拳を突き上げ、桃色髪の少女が声を張り上げて叫ぶ。マイクなんて無いし魔法で声を大きくもしていないがかなりの声量だ

 

 「ぱちぱち、ですよ?」

 横で軽く手を鳴らして盛り上げるアナより明らかに声が通っている。まあ、アナだって教会のお偉いさんだし説法とかもするから声は通る方なんだが……やはり静かな場所で厳かに語るのが主体の教会出と音響と声援が煩い前提で声を出すアイドルとじゃ響かせ方が違う

 

 「どうだった?」

 語りかけてくる友人に肩を竦める。もう少し上位を狙ったほうが良かった気もするんだが……

 「竪神こそ」

 「私は上位は狙いこそしたものの、負けも経験したからな。得点としてはそこが響いたと思う」

 その言葉におれは目を見開いた

 「いや負けるってあるのか」

 「皇子が対処してみせた以上と久世・ラーワルに私も戦いを挑んではみたものの、私では対処しきれずに負けた

 厄介だな、あのモノを入れ替える力は」

 ……ああー、と頷く。おれ自身良く対処できたなコレって言いたくなるし、言われてみれば直接正面からやったら頼勇でも無理か

 

 「入れ替え先を此方で誤魔化せれば……それこそレリックハートと入れ替えさせて棒立ちを狙えたんじゃないか?」

 「可能性はあるが危険過ぎる、試すことすら最後の手段だろう」

 ぐうの音は出ない

 

 「そういえばロダ兄は?」

 「おっと、俺様かい?ま、挑ませてもらって楽勝で勝ったぜ?俺様自身には効いても、俺様には効かないってこった

 これも縁、中々楽しかったが……」

 ははっと白桃色の青年は迷いを飛ばすように笑った

 「ワンちゃんの手助けに精を出していたからあんまり戦ってないぜ?俺様と敢えて積極的に縁を繋ぐべきでもないだろう相手も多いしな」

 うん、それもそうだとおれは頷いた。ロダ兄って酷い言い回したが雑魚狩りはそんな好まないよな。そして、今回の対抗戦って本末転倒だが上位狙うだけならば雑魚狩りするのが効率が良い

 

 「えーと、7位がー

 あ、結構高い、ゼノ君で20ポイント!え、何でこんなに高いんだろ?」

 あ、発表している当人が首を傾げている

 「死闘激闘、剣兄と全ポイントを懸けた結果だな」

 フラフラのリュウが休憩出来る場所に向かいながら呟くのを耳にして理解した。多分ラーワルとやり合っている間に勝った分のポイント含めて、9ポイントくらいリュウが全部賭けたから2回しか戦ってない割にポイント自体は高いのか

 

 「なる程ワンちゃん、結構考えてたもんだな。普通は何度も挑むために数賭けないもんだ」

 「いや、おれというか西方主従が沢山ポイントくれただけだな」

 なんて語りながら続きを待つ

 

 「ちなみにだがワンちゃん、俺様17ポイントな」

 「私も17だ」

 「……あれでおれが一番高いのか」

 「大分長く修業って打ち合ってたけど、だからって一瞬で片を付け続けなきゃこの上にはいけないだろうぜ?」

 と、語っていれば、おれを超えた上位ポイント勢が語られていく

 

 「2位はエッケハルト君!28ポイントで堂々の2位だよやったね、辺境伯の意地を見せたってやつかな?」

 と、点数幅はかなり狭い。騎士団に即座にスカウトしたいってくらいに尖ったセンスの生徒は居ないな、エッケハルトが入ってくれるならとは少し思うが……

 後は光るのが1人居るが、彼は止めておくと決めた。ゲームならサブキャラでプレイアブルなんだが、この世界では出会った瞬間から婚約者とイチャついてたからな、己の家を守ってろ

 

 「そこはアナちゃんに言わせてくれよ!」

 「はいはい、アーニャちゃんだともっと煩いからごめんね?」

 あ、あしらわれてる。前より深く踏み込んで関わってみれば結構強いよなリリーナ

 

 とか感想を内心で思いながら最後の発表を待つ

 いや、アナにカッコつけようと割と積極的にやってたエッケハルトを超えるポイントって誰だ?才能なだけならやれそうな桜理は不参加、ゼルフィード無しでもスペックそこそこ高いガイストも不参加、その他で行けそうかと思ってた相手は同率4位22ポイントに居たから違う

 

 となると、他に候補とか居たか?となるんだが……

 「えっと、1位は……」

 貰った順位表を見ていたアナが固まった

 「アーニャちゃん?じゃ私が……あれ何これ本当?」

 「69ポイントで、1位は……ヘリオドール・クラスタ子爵さん?ですよ?」

 困惑気味に読み上げられる名前

 

 ……誰だ?

 いや、そういえば居たなクラスタ子爵……ん?クラスタって男爵家じゃなかったっけ?全貴族の家系とか覚えきってないから確証はないが、子爵では無かった気がする

 

 と思っていれば、少女2人が並ぶ壇上に颯爽と躍り出る影があっ……

 「うにゃう!曲者」

 スタンバイしていたろう場所からひらりと飛び降りた上から降り注ぐのは影と骨の一撃。肩を撃たれた青年はそのままステージに叩きつけられ崩れ落ちた

 うん、痛そうだが……

 「あーにゃんへの狼藉は、ボクが」

 「え、私守ってくれないのアルヴィナちゃん!?」

 「……少しなら、守る」

 そう、アルヴィナである。何だかんだ気に入ったのかあの日のアイドル服に、服とは合わない何時ものおれの帽子を被り壇上に魔神の少女が現れていた

 

 「……この曲者、誰?」

 「貴女方に祝福されるべき、この圧倒的一位!ヘリオドール……」

 ……ああ、馬鹿の方だったかと腰に構えた愛刀を背に背負い直す。69と聞いて一瞬焦ったが、こういうパターンだったか、なら危険はないな

 

 「アルヴィナ、任せて良いか」

 呟けば、聞こえるはず無い距離でも少女はおれを見てコクリと頷きを返した。うん、アルヴィナがおれに仕込んだ盗聴は今日も絶好調である

 

 「つまり?」

 「えーっと、1位のヘリオドールさん、なんですか?舞台に上がってきたらめっですよ?」

 「何で上がって来ちゃったのかな?」

 と、思ったが気が変わった

 

 「竪神、どちらが行く?」

 「私が残った方が、声をかけたら皆が止まってくれるだろうな」

 「ああ、分かった頼む」

 「行ってきなワンちゃん」

 送り出され、おれは地を蹴った

 

 「がるる」

 「後は皆が頑張った後。ならば、このヘリオドールこそが!何よりも燦然と輝く圧倒的勝者そのものが!称えの歌と愛を得るに」

 アルヴィナの小さな唸りを気にせず青年は一歩足を進め……

 

 「これ以上はない」

 「ゼノ君!」

 「皇子さま!」

 やはり、肩を怒らせ迫る男は苦手か

 流石に、声音に怯えが混じっては見過ごせない。アルヴィナに任せたらもう武力行使しかない

 青年の視線を切るように、おれは少女達と相手の間にまで一気に距離を詰めて割って入った

 

 「おっ、忌み子で武器頼みで7位の雑魚……」

 「爵位詐称、そして八百長。流石に『戦って負けろ』と金で買ったろ、そのポイント」

 呆れ顔で告げるおれ。いや、真面目にやってた勢が20ポイント台で1人ほぼ70は加減しろ馬鹿案件だろうこれ怪しすぎる。歴代最高点が確か63だぞ、しかもこれ父さんが皇族の全力で纏めて来い!と薙ぎ払っての数字だ

 「上位狙う気もない奴からポイント買って1位になって、なんの意味がある?」

 「恵まれた奴には分かるまい!1位になれば聖女様から」

 「『天津甕星』だ。メンバーを省くな」

 隻眼で睨めば、青年は半歩……いや一歩下がる。気圧されたのだろう

 そう、これであのポイントを取れるはずがない。弱いだろうお前?

 

 「はい、アルヴィナちゃんだってわたしたちの仲間ですし」

 「それにさ、頑張った皆に向けての歌ってこれからやるけど、勝った人……特に頑張らずに勝ちだけ得た人個人に向けてとか、最初から無いよ?」

 「……は?」

 「そもそも、不正と分かるライン過ぎて史上最高点等の箔も付かないぞ今回」

 「ゼノ君が修業として留学生ボコボコにしていたって点くらいじゃないかな、後世に残される記録」

 散々に言われ、青年は完全に下を向いた

 

 やらなきゃ良いのにな、流石に分かるだろうこれ

 ……この金髪のヘリオドールが、本当にヘリオドールならば、だが

 

 血色の隻眼で見据える。コイツは誰だ?本物の馬鹿か?それとも円卓の阿呆か?或いは中身入れ替わったラーワルが彼の評判落としに来た?さもなくばアマルガムで心を毒され欲望が暴れ出している?

 

 理由の選択肢が多すぎる

 だが、答えなど出ず、青年は怯え一つなく頼勇に連れて行かれるまで長い金髪を垂らして項垂れ続けていた

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