蒼き雷刃のゼノグラシア ~灰かぶりの呪子と守る乙女ゲーシナリオ~ 作:雨在新人
「あ、おはよう御座いますですよ、皇子さま?」
そして、翌朝。カチャリという音に起きてみると、焼き物のカップを持った銀髪の少女が其処に居た
「もう、昨日何か感じていたのは分かりますけど、またですか?」
言われ、何も言い返せないで目線を逸らす。そうすれば、おれとほぼ同じように壁に背を預けて仮眠を取る頼勇の姿が目に映った
此処はアナには教えていないLI-OHの格納庫。2人しかいない。いや正確にはおれの肩にはアイリスのゴーレムが乗ってるが、今はこのゴーレムとリンクしていないから2人だ
椅子は……あるにはあるんだが、資料置いてしまったし一つだったからな、二人共使う気無かったと言うか……
「無茶は駄目ですよ?って言ったはずですよ?」
……ぐうの音も出ない、責めるような海色から目線を逸らしたいが逸らせない
「どうして、あんなに言っても無茶するんですか?」
「昨日の対抗戦を見て分かったことがある。基本的にLI-OHは竪神達ありきでしか起動できない。おれにも、ガイストにも使えない
無理に動かせるとしたら外部から合体する事だけれども、それが出来るのはアイリスとエッケハルトだけだ。だが……」
首を振るおれ
「ラーワルの《
おれは床に屈んで二本の針がある地球式時計のようなパーツを手に取った
「パーツを別物と入れ替えて分解を試されるかもしれない」
中心の棒を細いものに変える。当然ながら、これでは穴がスカスカでパーツはしっかりと嵌まらない
「支援機を何かと入れ替えて合体を阻止してくるかもしれない」
手元で再現しにくいか?と思いつつ、まあ良いかとパーツを組み直そうとしかけて1本をポケットに入れた
「何より、竪神と精神を入れ替えれば今のシステムのダイライオウならば完全に乗っ取れてしまう」
主に頼勇の一人操縦だからな。ジェネシックは一人では動かないから最悪
「手の内を見せたからやってこない可能性は高いとしても、今までのおれ達が如何に正面からしか来ない敵に救われていたのかを痛感したよ」
「だから、ですか?」
それを説明しても、少女の顔に笑顔はない
「だから、自分達を危険にするんですか?一人……じゃないですけど、苦しむんですか?」
その言葉に微笑みかける
「君達の為に自分が死んで、それで解決出来るなら」
「死んじゃ駄目ですよ?」
「そうだな。死んだらこれ以上君達の為に何も出来ない」
……前世から始水が何かしてるし、死後も意識を遺して何れ何か出来るかも知れないが……少なくとも、今のアナ達に向けては出来ることなんてほぼ無いだろう。最期に下門みたいに後を託すくらいか
……?と自分で違和感を感じ、苦笑する
「それに、誰を救おうが、あの時おれの代わりに死んでいった人達への償いなんて、終わる筈無いのにな」
忘れていた。忘れちゃいけないもの……だった筈なのに。目の前の少女達の為の未来と引き換えなら、十分だって気分になっていた
「本当に怒りますよ皇子さま?」
「大丈夫だよアナ。死んだら、シュリ達に手を伸ばせない」
何らかの期待をおれにしているのは分かっている。それを果たさなきゃ……きっと、彼女は二度と自分を沈めた絶望の毒沼から顔を上げないだろう
「……はい、そうですよ皇子さま。それに、イケナイあの娘以外にも、貴方が居なくなったら駄目な子は沢山いますから」
何処か寂しげに、けれども漸く微笑んで、少女はおれにカップを渡してくれた
……中身はスープだ。ハーブが微かに香る辺り、シンプルな味が得意なアナっぽくない
「これは?」
「心配したノアさんからですよ?」
分かる。この味付けというかシンプルな割に気取ったというか細かいところを凝った感じはノア姫だ
「じゃ、行きましょうか皇子さま?」
そのまま手を引かれるおれ
「アナ?」
「強制です、今日はお休みです」
抵抗……したら駄目だろうな。そのままおれは引っ張られていった